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「水濃徃方」の解読 59


(散歩道のグラジオラス、こんな色の花は初めてだ。)

午後、女房と散歩に出る。昔、子会社の専務だったKさんに大代川の土手で出会った。向うの夫婦で散歩、マスクで向うから声を掛けられるまで、分からなかった。ワクチンは打ったと聞く。自分よりも一月先輩だから、打てたようだ。よく聞けば、来年の3月末現在で75歳なら良かったようで、自分も権利があったようだ。

夜、自主防災の打ち合わせに出席する。

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「水濃徃方」の解読を続ける。今日で、「華表嶺勘輔之篇」を終わる。

はて、さしても無い事に、下手(へた)の長講釈、両人ともに退屈であろう。さて、次郎坊、この勘介は深く隠して、守宮(いもり)、とかげと類(るい)を同じうして居れど、きゃつ(彼奴)、池中の物にあらず。先祖は甲州で采配でも取った者で、山本宮内などゝも同名。わしとは代々通家(つうか)で御座る。先祖の名をその侭、勘介と名のり、苗字は隠して、東海に薬をひさぐ隠君子(いんくんし)。次郎坊も唯の者では無い程に、心を置かずと出会いやれ。
※ さしても無い ➜ それほどのことでもない。大したことでもない。
※ きゃつ(彼奴)➜ 三人称の人代名詞。主として男子をののしったり親しみをこめたりしていう語。あいつ。やつ。
※ 通家(つうか)➜ 昔から親しく交わってきた家。つうけ。
※ 先祖の名 ➜ 戦国時代の武田信玄の軍師といわれた山本勘助。
※ 隠君子(いんくんし)➜ 俗世に交わらず山野などに隠れ住んでいる有徳の人。

さて、次郎には別に伝わる薬方(やくほう)あり。先ず第一の法を、聖伝成徳潤
身丸とて、雲林龔氏(うんりんきょうし)名方(めいほう)。これは百姓・町人の服する薬にあらず。御歴々様方へ差し上げる御薬。その外に、廉恥返魂丹、中等以下の士、下吏賤有司の服薬。また、勧農固本丹と云うは、農人(のうにん)の急病を救う御薬。節儉順気散と申すは、一切の女中方(じょちゅうがた)、血の道で取りのぼせたり、薬になる。女大学の、大和小学の、と云うものは嫌いで、芝えびの、市松たけの、と云う性も知れぬ物を喰い過ぎて、何もし
ら癡(ち)、長癡(ながち)と云う病になったに、大奇妙、その外、謙譲保童圓は、桑山巌家老の相伝。委しき事は、鸚鵡俳優と云う書あり。
※ 薬方(やくほう)➜ 薬の処方。調剤の方法。
※ 名方(めいほう)➜ 薬の調合がすぐれていること。有名な処方。また、その薬。
※ 下吏(かり)➜ 下級の官吏。したやくにん。
※ 賤有司(れい)➜ 身分の低い役人、官吏。
※ 女中方(じょちゅうがた)➜ 御婦人たち。女性の方々。
※ 女大学(おんなだいがく)➜ 江戸時代中期以降広く普及した女子教訓書。
※ 大和小学(やまとしょうがく)➜ 中国朱子学が示す学問入門課程の『小学』、各章の問題が、日本の故事ではどういうことにあたるのかを提示せんとした和文の書。

名山におさめて、その人をまつ。望みならば両人へ伝授しましょう。その時、羽団扇も一ッ所にやろう。もしこの社へおこさずば、近所の火の見やぐらまでは、ちょつ/\と便があれば届けておこう。隙(ひま)を取らせた代わりに駕籠賃取らすに、お宿まで送りましょうと、左右の脇に挟むと見えしが、土器(かわらけ)の飛ぶが如く、飄々然として、何時の間にやら、己が宿々へ帰りぬ。
 水儂行邊巻之四終
※ おこす(遣す)➜ よこす。届けてくる。
※ 飄々然(ひょうひょうぜん)➜いかにも飄々としたさま。ゆうゆうとしてつかまえどころのないさま。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「剣鬼と盗賊 剣客同心親子舟 7」 鳥羽亮 著
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