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「水濃徃方」の解読 72


(散歩道のストケシア)

午前中、一講座、午後一講座、古文書講座を講義した。合わせて四時間、いつもの事だが、しゃべり疲れた。

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「水濃徃方」の解読を続ける。 

(かさね)て仰せありけるは、富は人力に任せぬ事とはいえども、その方、始め、聊(いささ)かの身上より、今に都会に名を知らるゝ程の功業(こうぎょう)、これ、その才智、衆にすぐれ、行状正しきなるべし。唐の張公藝が百忍明の鄭氏が婦言(ふげん)を用いざりし、皆なこれ末世の鑑(かがみ)なり。政道の一助(いちじょ)、家に伝うる家法あらば申し上ぐべしと有りければ、こは、恐れ多き御諚意(じょうい)、もとより愚蒙の私義、家法と申す程の事はこれなく候えども、不思義に異人に巡り合い、形(かた)の如く教えを受け候。
※ 功業(こうぎょう)➜ 功績の著しい事業。また、功績。
※ 唐の張公藝が百忍(とうのちょうこうげいがひゃくにん)➜ 唐高宗は、張公藝という長寿の老人がその子孫と九代にわたって仲良く同居していることを聞き、「なぜ、一族がこのように睦まじく九代も同居できるのか」と聞いた。張公藝は紙に「忍」の字を百書き、「父子の間に忍が無ければ、慈悲と孝行の心が失われる。兄弟の間に忍が無ければ、よその人に欺かれる。兄弟の妻の間に忍が無ければ、兄弟たちがばらばらになる。姑と嫁の間に忍が無ければ、親孝行をする心が失われる。」と説明した。つまり、お互いに責めるのではなく、忍ぶことで家族が仲良くなり、幸せに暮らせると言った。
※ 婦言(ふげん)➜ 女のことば。女のいうこと。
※ 明の鄭氏が婦言を用ひざりし ➜ 明の時代に、江南で義門鄭氏と言われた名望家であったが、臨終の床にあって、「斉家の道」を聞く子孫に、一言「婦言を聴くなかれ」と遺言した。
※ 諚意(じょうい)➜ 貴人または上官の命令の趣旨。 仰せの趣。
※ 愚蒙(ぐもう)➜ おろかで道理がわからないこと。
(「水濃徃方」つづく)
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