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「三河物語 第三 下」の解読 1



(散歩道のユーコミス・アウトゥムナリス )

一見パイナップルのように見える花である。変わった花で、初めて見た。

昨日で、「水濃徃方」を読み終えた。思いの外、日数を要し、2ヶ月半も掛ってしまった。今日からは、OE氏から依頼されている「三河物語」の第三下を読むことにする。この底本は明治になって活字化された本である。家康の遠州での活躍が主となるが、どこで終りにするか、まだ決めていない。

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「三河物語 第三 下」の解読を始める。

  三河物語 第三下
然る所に、元亀三年壬申の年、信玄より申し越されけるは、天龍の河を限(きり)で切り取らせ給え。河東は某(それがし)が切り取り申すべしと、相定め申す処に、大井河限(ぎ)りと仰せ候儀は、一円に心得申さず。然れば、手出しを仕るべく候とて、申(さる)の年、信玄は遠江へ御出馬有りて、木原、西島に陣取り給えば、浜松よりもかけ出して、見付の原へ出て、木原、西島を見る所に、敵方これを見て、押っ取り/\、乗り駈けければ、各々申しけるは、見付の町に火をかけて退くものならば、敵方、案内を知るべからずとて、火をかけて退(の)きけるに、案の外(あんのほか)に、案内をよく知りて、上の台へ駈けあげて乗り付ける程に、頓(やが)て一言の坂の下り立てにて、乗り付けるに、梅津は、しきり乗り付けられてならざれば、岩石をこそ乗り下しける。
※ 押っ取り/\(おっとり/\)➜ 押っ取り刀。急な出来事で、刀を腰に差す暇もなく、手に持ったままであること。急いで駆けつけることの形容に用いる。
※ 案の外(あんのほか)➜ 思いも及ばないこと。予想外。

その時、大久保勘七郎はとって帰して、鉄砲を打ちけるに、一、二間にて打ち外す。その時、上様の御状(諚)には、勘七郎は何として打ち外して有るが、と仰せられける時、その儀にて御座候。都筑(つづき)藤一郎が弓をもちて罷り有るによって、それを力(ちから)と仕り候て、放し申しつる。纔(わずか)一、二間ならでは御座有るまじき。定めて(くすり)はかゝり申すべく、兎角(とかく)と申す内に、我等が臆病ゆえに、打ち外し申したると申し上げければ、藤一申すは、勘七郎が立ち止(とど)まりて、打ち申すゆえに、我等は了簡(りょうけん)なくして罷(まか)りありつると申しければ、
※ 御諚(ごじょう)➜ 貴人の命令。仰せ。おことば。
※ 薬(くすり)➜ 火薬。
※ 了簡(りょうけん)➜ よく考えること。よく考えて判断すること。思慮。分別。

兄の大久保次右衛門が申すは、藤一、左様に御取り合わせ申さるぞ。御身を力とせずんば、せがれが何とて立ち止(とど)まらんや。方々の故に有りつるぞと申せば、御方の弓弓懸(ゆがけ)を外し給うを見て、我も馬弓懸を外したると申せば、藤一申すは、次右、左様に話し、坂の降り口にて、御馬の馬弓懸を外したるに心付き、我も弓懸を外したと申せば、
※ 取り合わせ(とりあわせ)➜ 調子を合わせる。うまくとりつくろう。
※ 弓懸(ゆがけ)➜ 弓を引くための道具。鹿革製の手袋状のもので、右手にはめ、弦から右手親指を保護するために使う。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「おれたちの仇討 はぐれ長屋の用心棒 42」 鳥羽亮 著
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