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「水濃徃方」の解読 67


(散歩道のユッカの花)

午後、女房と散歩に出る。散歩道の田んぼには早苗が植えられ、気持ちのよい日々となっている。ただ、田んぼにジャンボタニシが多く見られるのが心配である。すでに早苗が喰われて、被害が出始めている。米ぬかに寄って来る習性を利用した罠を、何年か前、「鉄腕ダッシュ」で見たが、驚くほど沢山のジャンボタニシが捕獲できていた。簡単な罠だから、仕掛ければ駆除できると思うが、苗が大きくなるまで、散歩の度に気になることである。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

ある時、お出入の殿様、当年五十の御賀とて、日頃御目(おめ)下さるゝ町人共、残らず御料理を下されける。長右衛門は別けて御由緒あれば、一同に召し寄せられぬ。御家老堅田岩見殿、出席あって、銘々祝儀を請けられし上、申されけるは、今日、寿莚(じゅえん)を開かれ、諸方より詩歌の御寿これ有るにつき、町人共にもその道を相嗜む者あらば、詩歌、連俳の撰(えら)みなく、御ことぶき申す様にとの仰せ。
※ 御賀(おんが)➜ 御長寿の祝い。
※ 壽莚(じゅえん)➜ 長寿の祝の酒宴。

面々へも、先達て申入れたり。定めて相心得らるべしとあれば、何れも頭を畳につけ、恐悦の余り、不調法を顧みず持参仕りしと、会釈(えしゃく)して、詠み歌、俳諧の発句など、或いは、州浜に立てる鶴に含ませ、杖に付け、盃に添えて、各(おのおの)風流をぞ尽しける。
※ 州浜(すはま)➜ 祝儀の飾物の一種。州の海辺のさまを表していて州浜台。島台とも。島をかたどった台の上に、松竹梅、鶴亀、尉と姥などを配し、おのころ島や蓬莱山に見立てたもの。

長右衛門は始めより、片すみに俯(うつむ)いて、扇子(おうぎ)の骨の離れたるを、紙縒(こより)にて縛(しば)りえて居たりけるが、にじり出て、私も何がなと存ぜしが、発句の、歌のと申すは、手前では出来ませぬ故、さる仙人の認(したた)めたる三幅対、外は存ぜず。まづ御寿命にあやからせられ候様にと、箱に入れたる紙表具の掛け物を差し上げる。
※ 三福対(さんぷくつい)➜ 三幅で一対となっている掛け物。もと、仏画で、中央に本尊、左右に夾侍(きょうじ)菩薩を掛けたものによる。 
(「水濃徃方」つづく)

読書:「居酒屋恋しぐれ はぐれ長屋の用心棒 41」 鳥羽亮 著
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