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「慶應四年日録/徳元」を読む 67

散歩道のコリウス
シソの仲間という

今日は静岡は猛暑日(35℃以上)だとか。猛暑日としては静岡ではもっとも遅い記録だという。

夕方、古書店のTさんから、古文書解読の問い合せがあり、戦国時代の武将の文書2通。長いものではないので、夕食後、電話で口頭で解読結果を返事した。役に立ったとすれば、満足である。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

(廿二日分の続き)
さて曽祖父より、祖父、家政を譲り候節、正金六百両、請け取り候由。
右を以って、前々仕来たり候、山方炭仕入、材木類、また当在産物の内、
小河内村、毒荏
(どくえ)の木、多分これ有り候間、右村内の何れも当家へ
※ 毒荏(どくえ)➜ アブラギリの別名。この油は油紙にも使われ、かつては油紙で合羽、番傘、提灯などを作った。
参り、右毒荏
(どくえ)の実、見当(けんとう)にて、前年暮より春、夏、秋とも、
※ 見当(けんとう)➜ めあて。価値などを見計らうこと。
金子貸し渡し候処、祖父中年の頃、毒荏の木、虫付き、実取りこれ無きは
勿論、尽々(じんじん)立ち枯れと相成り、翌年の見当(けんとう)もこれ無き
※ 尽々(じんじん)➜ ことごとく。すっかり。
仕合わせと相成り候由。右金子貸し付け、毒荏
(どくえ)の実にて
※ 仕合わせ(しあわせ)➜ めぐり合わせ。運命。
請け取り候は、その時節、当家重立(おもだ)ち候家業にも相成り候由の処、
※ 重立つ(おもだつ)➜ 中心となる。
右様の次第にて、頓(ひた)と取り方相成らず、大いに家業相衰(おとろ)え候由。
※ 頓と(ひたと)➜ 突然その状態になるさまを表わす語。にわかに。はっと。
また、父、察當
(さつとう)義は、祖父よりも相受け候て、紙商売致し候処、
※ 察當(さつとう)➜ 江戸時代、違法行為をとがめること。
前々当町内、紙屋繁八方にて致し候、漉(す)き屋多分これ有り候処、
※ 漉き屋(すきや)➜ 紙漉きを行う家。
同家不如意(ふにょい)に付、右山方漉き屋中河内の分、残らず引き取り候て、
※ 不如意(ふにょい)➜ 経済的に苦しいこと。また、そのさま。
皆な仕入方致し候処、前々と違い人情軽薄の時節と相成り、当家仕入の
出来紙荷、外方(ほかかた)へ現金にて売り渡し候様の義多く、
就中
(なかんずく)、親父義は祖父と違い、茶の湯なども致し、殊に数日
相続き候て酒宴など致し候義、毎々これ有る様の風にて、右仕入方の処、
勘定合わせも碌々(ろくろく)致さずに仕舞(しまい)候様の相角(かど、廉)にて、
※ 廉(かど)➜ 数えたてるべき箇条。条理。理由。
(わず)か拾ヶ年程の紙仕合わせ致し候て、殊の外、貸し込み出来、当家は
※ 仕合わせ(しあわせ)➜ 物事のやり方、または、いきさつ。事の次第。始末。
大借
(おおか)りと相成り、質屋稼ぎも出来兼ね候様、相成り候処、山方漉き屋
貸金の義の取り方相成らず。
(廿二日分つづく) 

読書:「忍び崩れ 江戸の御庭番 3」 藤井邦夫 著
読書:「机の上の動物園」 椎名誠 著
あの椎名誠も、78歳の爺さんになったかと思う。
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「慶應四年日録/徳元」を読む 66

散歩道の綿畑
根元の方から順に綿が出来ている

「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。 

  廿二日  雨
風気(風邪)の処、追々快方(かいほう)に付、去六月中よりも取掛り居り候、
地形直し、土蔵建て、諸入用、およそ請勘定致し候処、右手始め前、
徳元母諸共(もろとも)、種々相談致し候義は、我家の義、曽祖父勘四郎義は、
中年にて色情にて、娼婦、我が妻として、親類ども故障の義これ有り。
富士郡へ暫く借宅致し居り候由の処、その後、一同帰参致し候えども、
中年、家政(かせい)相弛(ゆる)み候義の由、祖父よりの申し伝えに候。
また祖父の義は、曽祖父、右様、娼婦、我が妻と致し候義に付、
子供これ無し。これにより、町内嘉七老母、秋葉新田千葉彦左衛門方よりも
男子貰い請け、養育致し候を、町役人どもよりも、素(もと)より、本家、
別家の義に付、本家相談人これ無く候ては相成らず候間、右差し遣わし
申すべき旨にて、祖父当家へ参り候由。もっとも、曽祖父、嘉七方老母は、
同胞(どうほう)の由に付、右様相成り候。
※ 同胞(どうほう)➜ 同じ腹から生まれた者。兄弟姉妹。
(廿二日分つづく)

読書:「引導 鬼役 二十五」 坂岡真 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 65

大代川土手のキクイモの花
暑くて止めていた夕方の散歩を始めた
ヒガンバナも盛りを過ぎて
大代川で目立つ花はキクイモの花

「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿一日  曇り、晴れ
風気(風邪)にて引き籠り罷り在り候。然る処、儀兵衛殿来り、親類、渡辺国蔵
の義に付、談示これ有り候処、両々種々の意味合いもこれ有り候処、今般、
※ 両々種々(りょうりょうしゅじゅ)➜ あれこれ、いろいろ。
酒造株書替の義に付、御役所へ罷り出で候に付、右は人別(にんべつ)外の者
※ 人別(にんべつ)➜ 人別帳。江戸時代、人別改の帳簿。
の廉(かど)を以って、右所払い(ところばらい)致したき旨、出願致したき由。
※ 所払い(ところばらい)➜ 江戸時代の追放刑の一種。居住の町村から追放し、立入りを禁止する軽罰。
然る処、この間中、病人気類(きるい)役ども、少なく無きの処、
※ 気類(きるい)➜ 似かよった仲間。また、気のあう友。
殊に、大御通行も差し控え罷り在り候を、頓着致さず、自ら宿を明け候わば、
※ 頓着(とんちゃく)➜ 深く心に掛けること。関心をもつこと。
御当人は勿論、差し添えなどまでも、罷り出でず候ては相成らず。これにより
延日致し、同役皆な勤めの節に致し候ても、遅からざる義にこれ有るべき旨、
愚意(ぐい)申し談じ置き候。先日、林助、裁判所行の処、御廃止に相成り候由
※ 愚意(ぐい)➜ おろかな考え。 多く、自分の考えをへりくだっていう語。
に付、帰宿の由。右出願旁(かたがた)に付、印形相渡し遣わし候所、今日
相廻り申し候。
横砂権左衛門殿家内参り、もっとも洞兵方へ病気見舞の由。
(つづく)

読書:「鷹の爪 おっとり聖四郎事件控 5」 井川香四郎 著
読書:「妻恋日記 取次屋栄三」 岡本さとる 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 64

隣りの土手の白のヒガンバナ
赤いヒガンバナに混じって
白のヒガンバナをこの頃はあちこちに見る

金曜日は駿河古文書会で静岡へ行く。
昨日、今日とようやく冷房から解放される。これで秋になるのであろうか。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。 

  十七日  曇り
三州裁判所へ、御調べとして、宿々罷り出候て然るべき旨に付、相談の上、
林助出役の積り。今日、右旅用として、金拾両相渡さる。

  十八日  晴れ
風気
(ふうき)に付、引き籠り、薬用。
※ 風気(ふうき)➜ 風邪。

  十九日  晴れ
明廿日、薩州様御人数御通行の由。右は馬数多分にて、宿に引き足り申さず、
もっとも、惣数百七拾八疋(ひき)と申す御先触れに御座候。

  廿日  晴れ
御日割に薩州様御人数も相成り、御通行の由。不快
(ふかい)に付、
※ 不快(ふかい)➜ 病気などのために気分がよくないさま。また、病気。
出勤致さず。

(つづく)

読書:「開港 交代寄合伊那衆異聞 20」 佐伯泰英 著
読書:「源氏天一坊 江戸の御庭番 2」 藤井邦夫 著
読書:「天狗威し 三人佐平次捕物帳」 小杉健治 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 63

散歩道のハナトラノオ

午後、掛川中央図書館へ行き、文学講座に出席した。今日のテーマは「藤枝静男」。読んだことのある人は、ほとんどいなかった。自分も手を挙げなかったが、実は一時、かなり熱心に読んだ。志賀直哉、井伏鱒二、小沼丹から、藤枝静男へと読み進んだ。単行本もかなり購入している。もう30年以上昔のことで、内容はよく覚えていない。また、思い出しながら読んでみようか。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。 

  十二日  曇り、小雨
右同断。質物巽の方、新土蔵へ残りの分移す。これは去五月
十日吉辰
(きちしん)に付、移し始め置き候。
※ 吉辰(きちしん)➜ よい時。よい日。吉日。

  十三日  晴れ、曇り
右同断。夜具類、引き移し申し候。

  十四日  晴れ、晩雷鳴。
右同断。昨日、宿寄り四ヶ村出会これ有り候は、今般、参州裁判所よりも
仰せに付、沼津、水野出羽守様御役所へ、村高帳並び村絵図、去卯刻付写し
相添え、同所より達しこれ有り次第、早々村々役人ども罷り出で申すべき旨、
御触れに付、右仕向け相談の由。

  十五日  曇り、雷鳴
古庄妹、帰宅致させ候。今般また、慶長金を始め、古金類歩増
(ぶま)通用、
※ 歩増し(ぶまし)➜ 歩合を増すこと。
これまで通り致し来り候。真鍮
(しんちゅう)、拾弐文に致し取り扱い候処、
弐拾四文。文久銭、拾六文。銅小銭とも一同歩増しの由。
今日、藤堂様御人数、御先鋒の分、御帰国の処、人足これ無きに付、
(まかな)い大混雑致し候由。右に付、雨中かたがた明荷(あけに)など有る者、
※ 明荷(あけに)➜ 竹またはむしろでつくった旅行用のつづらの一種。角や縁に割り竹をつけ、ふたをあけやすくした。
連印の詫(わ)び書、差し出し申し候。

  十六日  曇り、雨、雷鳴
今日、八木間村組合、川際
(かわぎわ)普請見分(けんぶん)の旨、
地方(じかた)よりも申し参り候えども、歩行難渋の旨、相断り申し候。
昨夜、国恩金返金致すべき旨、御廻状これ有り候由、これは中宿、洞両名にて
※ 国恩金(こくおんきん)➜ 国から借りたお金。
借用致し、浅田屋へ取替遣わし候分か、の旨に候。
(つづく)

読書:「茶漬け一膳 取次屋栄三」 岡本さとる 著
読書:「白刃 鬼役 二十四」 坂岡真 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 62

稲が穂を垂れ、畦にはヒガンバナ
暑い夏が続くけれども、もうヒガンバナが真っ盛り
自然界では、秋が着実に進んでいる

今朝、江戸時代に居る夢を見た。古文書や時代小説を毎日読んでいるから、いつかはこんな夢を見るだろうとは思っていた。残念ながら内容は覚えていない。

土曜日は、午前、午後と、「古文書に親しむ」2講座を実施した。面白古文書には、「河童の詫び状」を取り上げた。

今日は敬老の日、マーケットでお寿司を買い、夕食を作る手間を省き、合わせて敬老の日を祝う。夕方、掛川の孫たちから敬老の日の祝いで、大福やみたらし団子、イワシ、ニシン、サンマの佃煮セットを頂く。佃煮はしばらく食事のお供になりそうだ。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  七日  曇り、甘雨(かんう)、曇り
※ 甘雨(かんう)➜ ほどよいときに降って、草木を潤し育てる雨。慈雨。(十日近く晴れが続いていた)
右同断。今日、(たつみ)土蔵前、弐つ割り格子出来、地方(じかた)よりも、
※ 巽(たつみ)➜ 南東の方角。
甘雨、御節句問い合わせに付、宜しくこれ有るべきやの旨、申し答え候。

  八日  晴れ、曇り
右同断。四条殿、関東へ御進軍にて、当宿御昼休に相成り申し候。
※ 四条殿(しじょうどの)➜ 四条隆謌(しじょうたかうた)。江戸時代後期から明治時代にかけての日本の公家、華族、陸軍軍人。後陽成天皇の男系七世子孫である。戊辰戦争では、中国四国追討総督・大総督宮参謀・仙台追討総督・奥羽追討平潟口総督などを務めた。
古庄、妹来たる。

  九日  晴れ、曇り
右同断。山切村源左衛門殿へ、洞兵借用金弐拾五両、弐割引き、弐拾両にて、
皆済致しくれ候様、申し遣わされたき旨、横砂権左衛門殿よりも、文通に付
(したた)む。惣兵衛殿来たる。

  十日  曇り、晴れ
右同断。

  十一日  曇り、小雨
右同断。官軍用意米、預りこれ有り候分、拾三俵、江尻宿へ相渡し候。
(つづく)

読書:「落とし水 おっとり聖四郎事件控 4」 井川香四郎 著
読書:「蟷螂の男 八丁堀「鬼彦組」組激闘篇」 鳥羽亮 著
読書:「ねこの証明」 森村誠一 著
読書:「江戸の探偵」 鈴木英治 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 61

正午前、突然の雨
掛川古文書講座へ出かけようとした時で
しばらく空模様を窺っていた
10分もしないで小降りになった
これだけの雨をホースで撒こうとしたら
大変な時間を要するだろう
それを自然は別けなくやってしまう

午後、掛川中央図書館での、掛川古文書講座に出席した。

昨日、牧之原塾「古文書解読を楽しむ」講座に行く。全員(11人)出席で気分が良く、事務局の人に、「今日は全員出席で、嬉しかった」と話していた。
講座の方は準備不足か、穴が多くあって、受講者の皆さんが多く発言、その穴を埋めてくれて、受講者も含めた活発な講座になった。準備不足も悪くない。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  三日  晴れ
病氣の処、引続き持病の様、胸下の痛みこれ有り候。夜に入り、儀兵衛殿
参り、官軍預り米の内、白米にて六拾壱俵余、三保神主八幡へ相渡し候様、
支配御役所よりも仰せ渡され候旨に付、右搗(つ)き立て、その外運送の趣、
(はな)しこれ有り候。

  四日  晴れ
(いよいよ)持病の様相成り候間、塩津相招き、服薬致し候積り。江尻宿、
野村孫兵衛殿よりも申し越し候義は、当時、関町岡崎様へ、その宿の米、
御渡し方、相成り申すべきやに付、米の処、白に候や、又は玄に候や、
米見請け申したく候間、人差し遣わし候に付、見させ候様の文通の処、
(いま)だ当宿へ御沙汰これ無く候間、右見させ候義も如何(いかん)やに
存じ候旨、儀兵衛殿へ添え書き致し遣わし候。もっとも、この間中、病氣にて
引き籠り居り候処、同勤の内にても、一作、林助、治三郎とも出府の義に付、
右儀兵衛殿へ申し遣わし候。

  五日  晴れ
昨日、医に薬、相頼み置き候処、途中酒席にて、晩帰宅これ無きやに付、
今朝、薬相始め申し候。

  六日  晴れ
服薬中、引き籠り。

(つづく)

読書:「江戸の御庭番」 藤井邦夫 著
読書:「狐火の女 三人佐平次捕物帳」 小杉健治 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 60


庭のサフランモドクキ
最悪の条件の場所で根を下ろし
年に何回か一斉に花を付ける
ふしぎな花である
土曜日は「駿遠の考古学と歴史」講座であった。台風の影響か、暑さの影響か、コロナのせいか、受講が5人と少なかった。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿八日  晴れ
昨日、普請見廻りに付、暑気請け候か、気分悪しく候処、今般宿方の義に付、
出役(しゅつえき)人取り極めたき旨、持ち廻りの処、断わり遣わし候。服薬。

  廿九日  晴れ
服薬致し、快方の様、存じ候。
  
  丗日  晴れ
右同断に付、引き籠り居り候処、夜に入り、横砂村、惣兵衛母、参り泊り。
昨夜、極り番にて、明日普請所へ見廻り候様、地方
(じかた)よりも
申し越し候えども、引き籠り中に付、出張り出来難く候旨、申し断り置き候。

  六月朔日  晴れ
横砂村老母、昨夜泊り、朝帰り。三島宿辺り脱走の義も、熱海より船にて
(いず)れへか、立ち去り候由にて、往来通行とも、前の通り出来、
相成り候由。官軍下りこれ有り。横砂老母へ拾金、貸し遣わし候。
土蔵壁、左官惣勘定致し遣わし候。もっとも昨年よりも、惣人工百九拾七人、
賃金拾六両壱分弐朱余、相渡し済み。

  二日  晴れ
出役よりも申し越し候義これ有り候間、相談の義、詰め合い、儀兵衛殿も
申し越し候えども、病氣にて引き籠り居り候間、断り遣わし候。
昨夜、龍興寺主へ米売り渡しの義、申し談じ候処、今日拾弐俵なり、和助へ売り渡し代金請け取る。
(つづく)

読書:「千の倉より 取次屋栄三」 岡本さとる 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 59

裏の畑のニラの花

台風接近で、今日の駿河古文書会は日延べになった。しかし、天気は上がり、台風は千葉県に大雨を降らして、御前崎沖で熱低になってしまったようだ。

おかげで今日は久しぶりに、しのぎやすい一日となり、クーラーが不要であった。秋が早く来てほしい。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。

  廿六日  晴れ
今朝、年寄伝左衛門殿よりも申し越し候義は、昨日庄兵衛殿、普請
見廻り候間、今日同人にて見廻り、明日見廻り致し候様、申し参り候間、
承知の旨、申し遣わし候。持廻りに付、出勤致し候処、助郷より咄し
これ有り候は、兼ねて御承知の割り増し割合方の義、一宿限り思し召しの処、
承知致すまでに候えども、一作不在に付、儀兵衛殿へも談示の上、
一作殿へ問い合わせ候て、挨拶相頼み候旨、新右衛門へ頼み、帰宅。
忠次郎よりも文通これ有り候義は、箱根の義も咄し程の義これ無き旨、
※ 文通(ぶんつう)➜ 文書で通信すること。
また沼津宿の義は残らず荷物など取り片付け、畳、床板までも取り外し候由。

  廿七日  晴れ、雷雨
昨夕刻、御支配高橋泰蔵様戻りの由に付出勤。当川除け目積り
(めづもり)
※ 目積り(めづもり)➜ 目で見て、大体の分量をはかること。目分量。
箇所帳差し上げ、御送り相済み、帰宅致し候。廿七日の義は川除け見廻り
致し候。大井堰(いせき)見廻り、当分助郷の義に付、早々宿助郷にて中泉まで
※ 井堰(いせき)➜ 水を他に引くために、土や木などで川水をせきとめた所。
罷り出るべき旨、郷宿へ仰せ渡され候旨、文通これ有り候処、川除け
見廻りに付、差し抜き相成らず候旨、申遣わし候。

(つづく)

読書:「暗闘七人 八丁堀「鬼彦組」組激闘篇」 鳥羽亮 著
読書:「寵臣 鬼役 二十三」 坂岡真 著
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「慶應四年日録/徳元」を読む 58

静岡城北公園近所のセンニンソウ

一昨日午前中、吉田の古本屋Tさんの倉庫へ行く。コロナなどで遠慮があって久し振りであった。何点かの古文書を写真に撮らせて頂いてきた。二年分のカンパも渡す。

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「慶應四年日録/徳元」の解読を続ける。 

  廿四日  晴れ、曇り
昼後、御見分御出役、高橋様御越し、当町川除け、荒れ破れ御普請の処
御見分これ有り候処、箇所付帳、印紙(いんし)にて差し出し申すべき旨、
※ 印紙(いんし)➜ 自筆文書であること、または文書作成者の責任を明らかにするために署名捺印した書付をいう。
仰せこれ有り候て、御越しこれ有り。箱根宿にては、脱走方、官軍と戦争
これ有り候由。
川除け急務、見分の上、帰り道、先日野村氏よりも申し越され候義は、
※ 急務(きゅうむ)➜ 急いでしなければならない任務や仕事。
般、参州吉田宿へ裁判所御取り建てにて、諸事御取り扱いの由に付、
宿々にても、御伺いとして罷り出るべき由にて、相談致したき趣、
返し文の処、川支えにて、蒲原宿、由比宿出張(でば)りこれ無く、
※ 返し文(かえしぶみ)➜ 返事の手紙。返書。
これにより見合わせ居り候処、蒲原出張り致し、待ち受け居り候趣に付、
出勤面会致し、何れ由比宿出張り次第、同道にて当宿も罷り出で候積り。

  廿五日  晴れ
昨日夕刻、箱根戦争の上、脱走方小田原人数
(にんず)ども、追々三島宿へ
※ 人数(にんず)➜ ある条件にかなう人々。ある集団の構成員。メンバー。
入り込みに相成り候て、殊の外大騒ぎと相成り、沼津宿の義は、
人馬継ぎ立て、御休泊なども賄(まかな)い候は、更にこれ無く、両見付とも
締め切り候由。これにより右の段、御通行諸家方へ申し上げくれ候様、
廻し文に付、その模様聞きとして、忠二郎差遣わし候。
※ 廻し文(まわしぶみ)➜ 複数の人に順に回して知らせるようにした手紙や通知。回状。
廿五日の義は、焼山(ひのき)抜き伐(き)り致し候。
(つづく)

読書:「修羅の鬼 三人佐平次捕物帳」 小杉健治 著
読書:「若の恋 取次屋栄三」 岡本さとる 著
読書:「冬椋鳥 素浪人稼業 15」 藤井邦夫 著
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