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「水濃徃方」の解読 29


(庭のマンリョウの実)

庭のサザンカの樹下にマンリョウの赤い実が残っているのを見付けた。いったい、マンリョウの実は何時頃落ちるのだろう。七月には今年の花が咲き始めるはずだが。

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「水濃徃方」の解読を続ける 。

「覚えた事もなければ、忘れた事もなし」と云いし。「深草の元政でも、私程の楽しみはあるまいと、独り心を高く持ちて、馬糞の匂いも悟りて見れば、世にありし時の奇楠(きゃら)真南蛮(まなばん)。何時を終わりと知ら(白)雪の、積もる齢(よわい)も死ぬるが」と悟りきったる言葉の端。
※ 深草の元政(ふかくさのげんせい)➜ 元政上人。江戸時代前期の日蓮宗の僧・漢詩人。山城・深草瑞光寺 (京都市)を開山した。俗名は石井元政(もとまさ)。
※ 奇楠(きゃら)➜ 伽羅。香木の銘。東南アジアに産するジンコウ属の樹木を土に埋め、心材から採取する。香道では最高の名香とし、優美、宮人のごとしとして、珍重されている。
※ 真南蛮(まなばん)➜ インド東海岸のマラバル産の香木の名。
※ 手(て)➜ 事を行なうための手段。てだて。また、事を行なう方法。

両人思わず頭をさげて閉口し、「驚き入りたる隠君子(いんくんし)、久しいものじゃが、一樹の陰も他生の縁と申せば、迚(とて)もの事に、こうならせられた来歴、御素性が承りたい」と問いかけられて、いやはや申し立てになる程の筋目(すじめ)でも御座らぬが、先祖から少々禄をも汚(けが)した身なれども、子細ありて、主君の家は断絶しぬ。
※ 閉口(へいこう)➜ 口を閉じてものを言わないこと。
※ 隠君子(いんくんし)➜ 俗世に交わらず山野などに隠れ住んでいる有徳の人。
※ 一樹の陰も他生の縁(いちじゅのかげもたしょうのえん)➜ この世で起こるすべての出来事は、みな前世からの因縁によるということ。一本の木の陰でともに雨宿りするのも、すべてめぐり合わせによるということから。
※ 筋目(すじめ)➜ 家代々の血筋。家柄。

  危而(あやうけれども)不持(たもたず)
  顛而(くつがえれども)不扶(たすけずんば)
  (すなわち)(いずくんぞ)用彼相矣(かのしょうをもちいん)
※ 危而不持 ~ ➜「論語 季氏篇」(訳)主君の危難を見て支えず、主君が倒れても助けないというのでは、いったい宰相の役目とは何なのだ?

と聖人の御叱(しか)り、我身の上と思(おぼ)しく、所詮(しょせん)行き倒れに致して、不忠の臣の見懲らしと、覚悟極(き)めて、喰わぬ日も御座ったが、死なれぬは命。
※ 見懲らし(みこらし)➜ こらしめ。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「仇討ち居合 はぐれ長屋の用心棒 38」 鳥羽亮 著
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