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「水濃徃方」の解読 70


(散歩道のノカンゾウ)

午後、掛り付けのS医院に行って、第一回目のワクチンを打ってきた。ファイザー製という。気分が悪くなったり、発熱したりは今のところないが、打ったところに違和感がある。これは当然か。明日には消えるだろう。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

御前には長右衛門へ御盃を下し置かれ、首尾(しゅび)残る所なき上、この掛物、仙人の認(したた)めしと云う来歴、並びに、墨跡の文字につき、様子ありげに見ゆる間、かれこれ詳しく、御物語り申す様にとの御意。長右衛門、謹(つつし)んで、私義、先年富士の根方にて、壱人の隠士(いんし)を相知り、これに事(つか)うる事、年久し。彼人、齢(よわい)百歳の余は何程と云う事、自分にも慥かには覚えず。云う所を以って考うれば、すでに弐百歳に近しといえども、行歩(ぎょうぶ)の健(すこや)かなる事、五十里の道を遠しとせず。
※ 首尾(しゅび)➜ 事のなりゆき。具合。事情。事の顛末。結果。
※ 隠士(いんし)➜ 俗世を離れて静かな生活をしている人。 隠者。
※ 行歩(ぎょうぶ)➜ 歩くこと。歩行。

世上の名利(みょうり)を余所(よそ)に見て、明け暮れ、巌穴(がんけつ)に書を友とし、又は山中に薬を採りて吉田の町へ持ち出し、里の童(わらわ)にひさぎて、衣食にあて、住所あれども時あって、一ト月、二タ月、帰り住まざる事多く、その人、童顔鶴髪(どうがんかくはつ)にして、人表(じんぴょう)凡ならず。その学、主とする所なけれど、博聞強記(はくぶんきょうき)なる事、また世に類いあるべしとも存ぜず。地上の(せん)と申しても偽(いつわ)りならぬ異人(いじん)なり。
※ 名利(みょうり)➜ 世間的な名声と現世的な利益。また、それらを欲すること。
※ 巌穴(がんけつ)➜ 岩の洞穴。岩窟。
※ 鶴髪(かくはつ)➜ 鶴の羽のように真っ白な髪。白髪。
※ 童顔鶴髪(どうがんかくはつ)➜ 年老いても元気な人の様子。
※ 人表(じんぴょう)➜ 人の外見。
※ 博聞強記(はくぶんきょうき)➜ 広く物事を聞き知って、よく覚えていること。
※ 仙(せん)➜ 山中にはいって不老不死の法を修め、神変自在の術を得たという想像上の人。仙人。
※ 異人(いじん)➜ 普通でない人。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「姿見橋 知らぬが半兵衛手控帖」 藤井邦夫 著
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