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「三河物語 第三 下」の解読 2


(散歩道のギボウシの花)

よく見る花なのだが、名前がどうしても思い出せない。そんな花の一つである。名前を思い出すよすがとして、その名前の由来を調べてみた。

「ギボウシ」は擬宝珠(ぎぼうしゅ)の転訛であるが、これはこの植物のつぼみ、または包葉に包まれた若い花序が擬宝珠に似ることに由来する。

多分、そんな由来だろうとは想像していたが、これで名前を思い出すことが出来るだろう。この花を見れば、橋の欄干などについている「擬宝珠」を連想して、あの欄干のネギ坊主、あれは何という名前だっけ‥‥。思い出せなければ、「ギボウシ」は「ネギ坊主」と呼べばよい。似たような名前である。 

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

上様は御笑わせ給いて、その儀はまず置け。勘七郎、汝(なんじ)あやかりと云うにはあらず。見付の台より追い立てられて来たる間、急息(せいき)のせき上げたる処に、定めて汝は鉄砲を中程に手をかけて、火皿の下を持ちて放したるか。御意の如く、左様に仕り申す、と申し上げれば、左様に有るべし。中程に手をかけて、火皿の下を持ちて放せば、引息にては、筒先が上り、出る息にては、筒先が下るものなり。殊更、常の時と、追い立てられし時の、息は変わるものにてある間、外れたるも道理なり。汝が臆病と云う処にはあらず。何時も左様なる時は、諸手ながら、引きが手の下を持ちて打つものなり。何と息を荒くつきたりとも、筒先は狂わざるものにて有るぞ。以来はその心持ち有るべしと御意なり。
※ あやかり(れい)➜ 事実が明白でないこと。また、そのさま。
※ 急息(せいき)➜ 非常に急いで、息をきらすこと。息をきらして。あえぎあえぎに。
※ 引息(ひくいき)➜ 吸う息。

然る間、遠江の小侍どもが、信玄へ退きけるが、この度、供(とも)して来たりて、天方、向笠、市の宮、各和の古構い(ふるがまい)、その外の古城(ふるじろ)、又は屋敷構いを取り立て持つ。各和の構いを持ちたる小侍どもを、久野と懸河と出合いて、攻め落して、多く討ち取りたれば、その外の所をば、残らず明けたり。天方ばかり、久野弾正、その外、寄り合いの小侍どもが持ちけるを、味方ヶ原の合戦の後、天方の城を攻めさせ給いて、本城ばかりにして引き退かせ給えば、その後、明けて退く。

信玄は、見付の台より、国府(こう)台島へ押し上げて陣取り、それより、二俣の城を攻めける。城には、青木又四郎、中根平左衛門、その外籠る。信玄は乗り落とさんと仰げれば、山方三郎兵衛と馬場美濃守両人、駈け廻りてみて、いや/\この城は土井高くして、草うら近し。とても無理責めには成るまじく、竹束をもって詰めよせて、水の手を取り給う程ならば、頓(やが)て落城有るべしと申しければ、その儀ならば責めよとて、日夜油断なく、鉦(かね)太皷を打って、(閧)をあげて責めけり。
※ 閧(とき)➜ ときのこえ。戦場で士気を高めるためにあげる声。

城は、西は天龍河、東は小河有り。水の手は岩にて、岸高き崖作りにして、車を掛けて水をくむ。天龍河の押し付けなれば、水もこと凄まじき態(てい)なるに、大綱(おおづな)をもって、筏(いかだ)を組みて、上よりも流し掛け/\、何程ともきりもなく重ねて、水の手をとる。釣瓶(つるべ)縄を切るほどに、ならずして城を渡す。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「花たまご情話 南蛮おたね夢料理4」 倉阪鬼一郎 著
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