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「水濃徃方」の解読 57



(水が入った田とくちなしの花)

今日は一転大雨、午後、駿河古文書会に出席した。

73歳以上、月曜日からコロナワクチンの予約が始まると、ハガキで連絡があった。月曜日に夫婦して予約を取ろう。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

父母に受けたる身躰髪膚、終(つい)刀の錆となる。悪小(すこし)きなりとて、する事なかれ。霜をふんで堅(かた)き氷(ひ)いたるとは、この戒(いまし)め。おれがじろ/\見て居るに、わずか百年、二百年に、これ程も違ふものか。天王寺の妖霊星を見ばやと、若盛(わかざか)に囃(はや)して嬲(なぶ)った相模入道などの奢(おご)りは、(はした)間口(まぐち)持った町人がしますわいの。
※ 身躰髪膚(しんたいはっぷ)➜ 人間のからだ全体のこと。「髪膚」は髪の毛と皮膚の意 。
※ 刀の錆(かたなのさび)➜ 血が錆の原因になるところから、刀で切り殺すことや切り殺されることをいう。
※ 霜をふんで堅き氷いたる(しもふんでかたきひいたる)➜ 何事も徴候が現われてから、その後に実際のできごとが起こるというたとえ。
※ 妖霊星(ようれいせい)➜ 彗星の別称。 古来より、彗星は大乱や国の滅亡、災害、疫病といった出来事を予告する凶兆と信じられ、人々に恐れられた。
※ 若盛り(わかざかり)➜ 年が若くて血気の盛んなこと。
※ 嬲る(なぶる)➜ もてあそぶ。
※ 相模入道(さがみにゅうどう)➜ 北条高時の異称。相模守であり、 出家したことからいう。太平記には、高時が妖霊星を見て喜び踊ったと書かれている。
※ 端(はした)➜ 中途半端。

これを一々(いちいち)に奢り者じゃの、慢心(まんしん)じゃのと、おらが方へ攫わせて見やれ。ほんには天狗、働いても、続くものじゃ御座らぬ。さればとて、捨ても置(お)かれず、仲ヶ間でもいろ/\に工夫して見たが、彦山の豊前坊と白峯の相模坊とが、とかくこの病気には、灸ほどな薬は無い。懲らしめのため、すえてやろうと云わるれど、おれや秋葉の三尺坊などは灸嫌いで、有り来たりの通り、熱鉄(ねってつ)尓志やれ。
※ 慢心(まんしん)➜ いい気になること。おごり高ぶることである
※ 攫う(さらう)➜ 油断につけこんで奪い去る。気づかれないように連れ去る。
※ ほんに ➜ 疑いなくある事態であるさま。本当に。まことに。 
※ 有り来たり(ありきたり)➜ 従来と同じで、新しさがないこと。 ありふれていること。 
※ 熱鉄(ねってつ)➜ 高熱でとけた鉄。また、熱した鉄。罪人の責め具?

  火炎崐岡、玉石倶焚
※ 火(ひ)崐岡(こんこう)に炎(も)ゆれば、玉石(ぎょくせき)倶(とも)に焚(や)く。
※ 崐岡(こんこう)➜ 崑岡。崑崙山のこと。 古くから璧玉の産地とされてきた。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「亡者の夢 問答無用 4」 稲葉稔 著
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