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「水濃徃方」の解読 63



(散歩道のハンゲショウ)

昨日、色々な方から、古文書解読がらみで頼まれた三件の作業、二件は片づけて、資料を送った。もう一件は次月の話題の古文書にしようと思う。

午後、掛川古文書講座へ出席する。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

如何なる人に連れ添うも、天よりの宛がい、一度娵入りしてからは、足踏み出す気は御座らぬ程にと、夫婦相睦まじく、杵(きね)だこの入りし手に、琴弾いた褄外れ。なるれば馴れて、せりに出たる帰りさえ、待遠(まちどお)に、丁子茶(ちょうじちゃ)ぢりめんの小袖の上に、桟留(さんとめ)の袷(あわせ)ひっぱり。里帰りより下女も返して、その替りに丁稚置いて、店も広げ、御屋敷方の、こつさの御扶持米、売る様になるも、直段との談合づく、内義挨拶不束ならねば、御役人衆の思い付よく、夫婦もろ稼ぎに、わずか十年経つや経たずに、千両の町屋敷調(ととの)え、蓬莱屋長右衛門と改名し、
※ 宛かい(あてがい)➜ 取り計らい。配慮。 
※ 褄外れ(つまはずれ)➜ 着物の褄のさばき方。転じて、身のこなし。
※ 待遠(まちどお)➜ 待ちどおしいさま。
※ 丁子茶(ちょうじちゃ)➜ 茶色がかった丁子色。紅色がかった茶色。
※ 桟留(さんとめ)➜ インドのマドラスの港から渡来した縞織りの綿布。紺地に赤または浅葱の細い縦縞の入ったものが多い。のちに日本でも織られた。
※ ひっぱり ➜ うわっぱり。
※ こっさの ➜ 勘定高い。こまかい。
※ 不束(ふつつか)➜ 気のきかないさま。行きとどかないさま。不調法。
※ もろ稼ぎ(もろかせぎ)➜ 両稼ぎ。
(「水濃徃方」つづく)
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