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「江戸繁昌記 ニ篇」 57 箆頭舗15

(今日の夕景)

久し振りの一日中晴れで、干柿が少し進んだが、一方、出始めた干柿の黴対策に、夕方、マーケットに焼酎を買いに行った。明日も午前中雨の予報で、その間に焼酎で黴退治をする予定。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

庸醫の子姓(子供)、初めて大成論句読を識(し)る。謂わく、医は賤業なりと。賤とは、士大夫の貴きよりして、これを言う。今、儒業の賤しくして、更に賤しきを知らず。
※ 庸醫(ようい)- 凡庸な医者。平凡な医者。やぶ医者。
※ 大成論(たいせいろん)-「医方大成論」のこと。江戸時代前中期まで、日本で最もよく読まれた医書であった。
※ 句読(くとう)-文章の読み方。特に、漢文の素読。


医は人間の司命、それ、世に用有り。天下に焉(これ)より急なるはなし。然るに、不善の変、自らの是(これ)と以為(おも)いし。匕(さじ)を擲(なげう)ち、薬研を斡(まわ)して、三世伝来の薬籠をして、卒(つい)に骨董舗に曝(さら)さしむ。痛いかな。
※ 司命(しめい)- 生殺の権を持つもの。また、たのみとするもの。
※ 薬研(やげん)- 主に漢方で、薬種を砕き、または粉末にするために用いる器具。
※ 薬籠(やくろう)- 薬を入れる手箱。また、薬を入れて携帯する箱。


扇子を揮(ふる)いて高砂(タカサゴ/曲名)を謳(うた)うは、浪士の
本色、儒を售(う)りて、俗を敗(やぶ)るは、謳(うた)を售(う)るの善に如(し)かず。
※ 本色(ほんしょく)- 本来の性質。本領。

邦の本の農を棄て、田を作らずして、詩を作る。牛を売りて刀を買い、鞋(わらじ)を脱ぎて袴を贖(あがな)う。頑然たる一書生(未だ先生の儼然に及ばず)。士(さむらい)に似て士ならず。商と為るに商に非ず。
※ 頑然(がんぜん)- 強情で頑固なさま。
※ 儼然(げんぜん)- いかめしくおごそかなさま。


医風凛々、農気生れるが如し。多くはこれ寺院士輩(テラザムライ)に類せり。(金を国主に貢ぎ、士流に準じる者に比べれば、較(あきらか)に勝り)その心に以為(おもえ)らく、天下に儒より貴きは莫(な)しと。偃蹇世をして、倨傲人を陵(しの)ぐ。王侯を蔑視し、神仏を非毀し、甚しきは国家の事を議するに至る。
※ 凛々(りんりん)- りりしいさま。
※ 偃蹇(えんけん)- おごりたかぶるさま。
※ 睨(げい)- にらむこと。
※ 倨傲(きょごう)- おごり高ぶること。また、そのさま。 傲慢。
※ 非毀(ひき)- 悪口を言うこと。他人の悪事や醜行をあばいて、その名誉を傷つけること。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 56 箆頭舗14

(散歩道のシチヘンゲ)

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

儒人多くは礼(礼記)を講せず。老荘諸子、或いは、その言の取るべきも、然もこれを専らにするは、また儒人の業に非ず。韓非の如きは、則ち、人を誤り事を害す。孰(いずれ)か言う、人君必読の書と。
※ 老荘(ろうそう)- 老子と荘子。老子や荘子の道家の思想を、あわせて老荘思想と呼び、儒家の礼や徳の重視を人為的な道徳として否定し、無為自然を説いた。
※ 諸子(しょし)- 中国、春秋から戦国時代にかけて一家の説をたてた人々。
※ 韓非(かんぴ)-「韓非子」中国、戦国時代の思想家。君主は法と賞罰によって支配することを政治の根本であるとし、秦に始まる官僚国家創建の理論的支柱となる。


知見を古今の興廃に広げし。精神を忠孝の事蹟に励(すす)ます。史、読まざらんは、べからざるなり。而今人のこれを読むは、概ね皆な、細かにその事跡を憶して、人に向いてこれを談じて、自己の強志を示すに過ぎず。
※ 知見(ちけん)- 実際に見て知ること。また、見聞して得た知識。
※ 而今(じこん)- 目下。ただいま。
※ 憶す(おくす)- おもう。
※ 強志(ごうし)- 強いこころざし。


これにして、これを専らにす、学問の道に非ざるなり。況んや、輓近、穿鑿の事をや。永昼一冊、睡を駆るの具と為さんのみ。これを獲りて、これを珍とす。先生、或いは睡を悪(にく)む。蓋し、夢に周公を見ることを欲せざるなり。師、已(すで)にこれを悪(にく)む。弟子、如何んぞ然らざらん。
※ 輓近(ばんきん)- ちかごろ。最近。
※ 永昼(えいちゅう)- 永日。日中がながく感じられる春の日。春の日なが。


十三の経、未だその一を解さず。径(まっすぐ)に後人の鑿書に走る。頚(くび)に縄し、股に錐(きり)し、終夜寝ず、以って困(くる)しむ。益無し。睡るに如(し)かず。
※ 十三の経 - 儒家が重視する経書十三種類の総称。宋代に確定した。
※ 鑿書(さくしょ)- 研究書。解説書。


その僅かに、字を読み、文を作ることを知る。世に人有ることを知らず。自ら謂わく、英雄(善く人を欺(あざむ)く)、豪傑、我が才、以って天下に名(なのり)するに足ると。自ら高(のぼ)ること、度に踰(こ)へ、自ら重すること、分に過ぐ。

この子(し)多くは、これ村児(イナカモノ)、里正の子ならざれば、則ち、上豪(ゴウシ)の弟、然らざるや。亡命(カケオチ)の浪人、然らざるや。
※ 里正(りせい)- 庄屋。村長。
※ 上豪(じょうごう)- 郷士(ごうし)。江戸時代,城下町に住む武士に対して、農村に居住する武士をいった。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 55 箆頭舗13

(庭のヒイラギナンテンの紅葉)

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

一陰一陽、これを道と謂う。潜(もぐ)らむべくして潜り、躍るべくして躍る。陰陽の消息を以って、人事の進退を観(し)めす。
※ 陰陽の消息(いんようのしょうそく)- 農事暦における自然運行の法則。消は陰が消えてゆくこと、息は陽が伸びてゆくことである。この陰陽の消息は、冬至をふくむ「子」、夏至をふくむ「午」を軸とする軌(みち)である。即ち子から午は日ざしののびる陽の軌、午から子は日脚の短くなる陰の軌である。

要に人をして元亨、天の如くならしめんと欲するのみ。人、天の如くにして、人、始めて人たることを得んや。、卑しき者は象数(なず)、高き者は神理に陥る。
※ 要に(ように)- 要するに。
※ 元亨(げんこう)-「元亨利貞」易経で乾(けん)の卦(け)を説明する語。「元」を万物の始、善の長、「亨」を万物の長、「利」を万物の生育、「貞」を万物の成就と解し、天の四徳として春夏秋冬、仁礼義智に配する。
※ 識(しき)- 物事を区別して知る。見分ける。また、その心の働き・能力。
※ 象数(しょうすう)- 易で、それぞれの卦(け)が象徴する形と、その卦が示す六爻(こう)のもつ数理。
※ 泥む(なずむ)- ふんぎりがつかない。こだわる。
※ 見(けん)- 物事の見方・考え方。見解。


魚を(した)を用ゆ。象数取るべきも、進退に益無し。神陰人陽、二にして一と雖ども、陥いるは、則ち泥(なず)む。泥むは則ち偏るなり。或は人事に用無しに至る。
※ 漉む(したむ)- 水分が残らないように、しずくを垂らし切る。
※ 筌(うけ)- 細く割った竹を編んで筒形あるいは籠状に作り、水中に沈めて魚・エビなどをとる漁具。
※ 象数(しょうすう)- 易で、それぞれの卦(け)が象徴する形と、その卦が示す六爻(こう)のもつ数理。


乱臣(おそ)れ、賊子(こり)る。春秋の趣意、これを説いて足る。、或いは漢人の手になるも、前聖の遺文も、蓋し、また多くに居る。何如(いか)んぞ、講せざらん。
※ 乱臣賊子(らんしんぞくし)- 国に害を与える悪い家臣と、親の心に背いて悪事をはたらく子供。人の踏み行うべき道に外れ、悪事をはたらく者の意。
※ 春秋(しゅんじゅう)- 中国、春秋時代の歴史書。五経の一。魯の史官の遺した記録に、孔子が加筆し、自らの思想を託した。
※ 礼(らい)-「礼記」のこと。中国、儒教の経書で五経の一つ。おもに礼の倫理的意義について解説した古説を集めたもの。


読書:「江戸落語図鑑 落語国のいとなみ」
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「江戸繁昌記 ニ篇」 54 箆頭舗12

(散歩道のイヌタデの群落)

午前中、早めに雨になり、一日中雨降り。写真は昨夕撮ったものである。地味な花が続いているけれども、地味でも、デジカメを被写体に近づけて撮ったり、群落を探して撮ると、見栄えのする写真になる。目立たないようでも、自然は美しい。

お昼に、伊勢の長兄から電話があった。天皇陛下より一つ年下の長兄は、毎日5キロ強、速歩で歩き(50分少々で歩く)、腕立て伏せ50回以上など、体力の維持に日々励んでいる。歩き遍路2回の実績があるのだから、少しは歩くなど運動をした方が良いと、パソコンの前に座ってばかりいる、自分の毎日を見ているように、苦言を述べる。まるで親父のようで、70歳になっても、弟は弟なのだ。

電話を寄越したのは、今朝の新聞に、大学の友人M氏(憲法学者)が天皇陛下の生前退位の有識者会議16人に選ばれ、名前が載っていたことを伝えたかったためのようだ。大学時代、M氏とは、二人で伊勢、大和の10日間の旅をした折りに、長兄の家に一泊したことがあり、長兄は今でも覚えていて、身内同等に思っているようだ。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

弟子曰う、願うは先生の志を聞かん。曰う、妾者(めかけ)をばこれを安(やす)んじせん。諸侯にはこれに信(まこと)せられん。富商をば、これを(なず)ん。田舎の里長(ナヌシ)も、必ず学問吾れの如き有らん者、焉(いずくん)ぞ、吾が穿鑿を好むには如かざらんやと。
※ 懐く(なずく)- 慣れ親しむ。親近感をいだき、近づきなじむ。

(よ)俊徳を明かにし、允(まこと)にその中を執(と)る、これ書教の大目、これらの語を審(つまびらか)にせんのみ。古今、篇を論じ、真贋を弁ず。書生の常談、今日に用無く、楽しみて揺るがず。哀しみて傷(いた)まず。卷を開けば中を説く。思い邪(いつわり)無くして徳明らかなり。然らむべくして、然りの時に中するなり。
※ 俊徳(しゅんとく)- すぐれた高い徳。
※ 序(じょ)- 物事の順序。物事の秩序。
※ 常談(れい)- ありふれた話。日常の話。冗談。
※ 中する(ちゅうする)- かたよっていないさまになる。中庸の道を守る。


子夏が所謂(いわゆる)礼は後なるか。子貢、所謂、切磋琢磨。これ古人詩を解く本領。区々、何ぞ、字句の間を論ぜん。
※ 子夏(しか)- 中国、春秋時代の学者。孔門十哲の一人。姓は卜(ぼく)、名は商。礼の形式を重視、また古書に通じていた。「詩経」「春秋」などを後世に伝えたといわれる。
※ 子貢(しこう)- 孔子の弟子にして、孔門十哲の一人。商才に恵まれ、孔子門下で最も富んだ。孔子死後の弟子たちの実質的な取りまとめ役を担った。
※ 区々(くく)- ばらばらでまとまりのないさま。まちまち。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 53 箆頭舗11

(散歩道の瀕死のモンシロチョウ)

羽根を休めるモンシロチョウだが、つついても、もう飛び立つ力も尽きたようだ。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

叟、清泗(ミズハナ)を攬(と)りて曰う、その論孟に於ける、最も穿鑿を極め、徒らに諛博に誇る。曰う、その説はこれの若(ごと)く、某(それがし)の解はこの如しと。甲を非とし、乙を是とし、臆断これを折す。なお骨董店(ドウグヤノミセ)上に百貨品物を排し、菜蔬肆(ヤオヤノミセ)頭に八百果蓏を陳するが如し。闕如疑いを存ず。聖人これを善とす。
※ 論孟(ろんもう)-「論語」と「孟子」の2書を合わせていう語。
※ 穿鑿(せんさく)- 細かなところまで根ほり葉ほりたずねること。
※ 諛博(ゆはく)- おもねりひろめること。
※ 臆断(おくだん)- 根拠もなく推し量って判断すること。
※ 折す(せつす)- 責めとがめる。
※ 八百果蓏(やおから)- たくさんの木の実と草の実。
※ 陳する(ちんする)- たいらに並べる。
※ 闕如(けつじょ)- 必要な物事が欠けていること。


所謂(いわゆる)博文とは、穿鑿の謂われには非ざるなり。大人は能くの心の非を格(ただ)す。今の世、儒、服する者、果して能くこれを格(ただ)すの数人有るか。寡人有り。曰う、色を好む。(女悦丸服する宜し)曰う、好き。(万金丹服する宜し)
※ 博文(はくぶん)- 広く学問を修めて、深くそれに通じること。
※ 大人、君(たいじん、きみ)-「大人」徳の高い人。「君」一国の君主。
※ 寡人(かじん)- 帝王・諸侯などが自分をさしていう語。
※ 疾(しつ)- やまい。病気。
※ 女悦丸(にょえつがん)-江戸時代に売られた媚薬びやくの一種。
※ 貨(か)- 貨幣。
※ 万金丹(まんきんたん)- 伊勢参りのお土産としても古くから伝わる和漢胃腸薬。(形が似ているところから)一分金の異称。


謹しんで對(こた)えて曰う、大王これを為す。公劉もまた然り。この些(いささか)の疾病、何ぞ事を害せん。曰う、年、饑(うえ)て用足らず。これを如何せん。曰う、この謀(はかりごと)は、吾が能く及ぶ所に非ざるなり。已(や)むこと無くば、則ち、一つ有り。焉(いずくん)ぞ、斯民に賦し、(爵一級を賜う)斯商に貸(借)り、(官数等に仮す)商に与え、これを謀(たばか)りて、商辞さずんば、則ち是れを為すべきなり。
※ 公劉(こうりゅう)- 伝説的な周の先王。鞠の子にして、后稷の曾孫。戎狄の間で生活し、農耕にはげんだ。
※ 斯民(しみん)- この民衆。
※ 斯商(ししょう)- この商人。
※ 官数等(かんすうとう)- 官の数段階。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 52 箆頭舗10

(庭のヒメツルソバ)

富士山初冠雪、平年より26日遅いという。初冠雪は地上から見えることが条件で、今年は天候不順が続き、あるいは雪は降っていたが、雲に覆われて地上からは観測出来ないまま、溶けてしまったことがあったのかもしれない。

今日は快晴。気温も昨日と比べてぐんぐん上がった。午前中、残りの渋柿24個を干柿に加工し、一日続いた日差しに当てた。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

只言う、財有るはこれ用有りと。楚国は以って宝と為すこと無く、唯、銭以って宝と為す。(俗学、口を開き、この別字を吐く)予、嘗(かつ)て謂う、明徳、中和は固(もと)より、世儒の暁し得て、能(な)し得る所には非ざるなり。庶幾(願い)は、かの輩をして纔かに自ら欺(あざむ)き、独りを慎しむの語を省察せしめんのみ。これまた足れり。これまた足れり。(大言)
※ 暁す(ぎょうす)- はっきり悟る。
※ 省察(せいさつ)- 自分自身をかえりみて、そのよしあしを考えること。


それ天人合一、天地と我れ呼吸す。一念の微動、即ち天に通じ、人感ずるは、則ち自ら欺くは天を欺くなり。独りを慎しまざる者は、天を慎しまざるなり。矜色、臂(ひじ)を張り、大言、舌を鼓(う)たるも、隠所の欲、私心の愧(はじ)、君子のこれを視ること、肺肝を見るごとく、天神これに臨みて、その左右に在り。豈に畏(おそ)れて慎しまざるべきや。その論孟に於ける、最も穿鑿を極む。
※ 天人合一(てんじんごういつ)- 旧中国において、天と人間とは本来的に合一性をもつとし、あるいは、人は天に合一すべきものとする思想。
※ 一念(いちねん)- 非常に短い時間。瞬間。
※ 矜色(きょうしょく)- おごりたかぶった顔つき。
※ 肺肝(はいかん)- 心の奥底。
※ 天神(てんじん)- 天の神。あまつかみ。
※ 論孟(ろんもう)-「論語」と「孟子」の2書を合わせていう語。


(たちま)聞く、駒履(コマゲタ)の声、琤々(コロ/\)たるを。看る時、乳婆(オンバ)惶急、剃刀を懐にし、来たり。請うて曰う、毎々煩擾、願いは硎一硎(とぎ、ひととぎ)せよ。親方(げい)して曰う、乳娘、吾れ瞥見し得たり。昨日昏黒横坊の角(カド)に在りて、離立(フタリタチ)密語す。知らず、何等の事を談する。その人誰ぞや。婆、微笑、応(こた)えずして去る。
※ 忽ち(たちまち)- にわかに。
※ 乳婆(おんば)- 乳母。おばさん。おばあさん。
※ 惶急(こうきゅう)- おどおどする。おそれあわてる。
※ 煩擾(はんじょう)- わずらわしいほど乱れること。ごたごたと 乱れること。
※ 睨(げい)- にらむ。
※ 乳娘(にゅうじょう)-「乳婆」と同じ。乳母。おばさん。おばあさん。
※ 瞥見(べっけん)- ちらっと見ること。短い時間でざっと見ること。
※ 昏黒(こんこく)- 日が暮れて暗くなること。日没。
※ 横坊(よこぼう)- 横丁。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 51 箆頭舗9

(散歩道の土手のオオイヌホオズキ)

小さい、目立たない花だが、近付いてみると、白にわずかに紫色を帯びて、花格の感じられる花である。

夕方から、東海道金谷宿大学、特別講演会、パーマイ雅晴の「勉学を勉楽に変えてしまおう!」に出席する。雨上がりで今年一番の冷えの中、開幕前の交通整理から行う。参加者が少ないのではと心配したが、200名ほど参加者があって、何とか形が出来た。「3ガガヘッズ」のメンバーで、海外公演で訪れた国々の気になった話、お笑いの彼としては、場違いな演題に、何とか、一時間半、飽きさせることなく頑張ったと思う。なお、パーマイ雅晴氏は当地、金谷の出身である。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

吾が明徳を明らかにすると、吾が中和を致すとに在りて、既已(すで)にこれを明らかにす。また、天下の人をして、またこれを明らかに使(し)めんと欲す。正心誠意はこれを明らかにするの工夫、既已(すで)にこれを致す。その效(効)、天地をして自ら位せしめ、万物をして自ら育(はぐく)ませしむ。
※ 中和(ちゅうわ)- 性格や感情がかたよらないで穏やかであること。
※ 正心誠意(せいしんせいい)-「大学」より、心を正しく保つには、自分をいつわらず誠実に対処すべきであるということ。
※ 位す(くらいす)- 居るべき所にいる。


これを致すの工夫、独りを慎しむに始める。孰(いず)れか言う。これはこれ王公の事と。士人の家は天子の天下と同じく、無籍児(ヤドナシ)の躬(み)は、何ぞ士大夫の家に異らん。設(も)し、この児をして、その徳を明らかにし、その和を致さ使(し)めんに、果して知る、その體中の天下、胸中の天地、平(たいら)にして、かつ位(くらい)せん。
※ 王公(おうこう)- 王と諸公。また、身分の高い人。
※ 士人(しじん)- 高い教養と徳を備えた人。
※ 士大夫(したいふ)- 中国で、士と大夫。のち、知識階級や科挙に合格して官職にある者をさした。


今、儒人一(ひとり)も、能く、これを明らかにして、平にこれを致して、位せしむる者有りや否や。世儒、概(おおむ)ね、この地に到りて、理會し去らず。(大言)
※ 世儒(せいじゅ)- 世俗的で見識のない儒者。
※ 理會(りかい)- 理解。


その貨殖する所において、(め)。(貨財殖し、宝蔵興す)その好色する所において辟す。(声と色に大(さかん)なり)名聞に辟し、(庶幾は永くに、誉れに終る)穿鑿に辟し、(徴なく信ぜず)飲食に辟し、(食して、その味を知らず)詩文に辟す。(文理密察、以って別つ有るに足る)
※ 貨殖(かしょく)- 財産を殖やすこと。利殖。
※ 辟す(めす)- 偏る。公平な判断ができなくなって、片手落ちの態度をとる。
※ 名聞(みょうもん)- 世間での 評判・名声。めいぶん。
※ 庶幾(しょき)- 心から願うこと。
※ 穿鑿(せんさく)- 細かなところまで根ほり葉ほりたずねること。また、むやみに憶測してとやかく 言うこと。
※ 文理密察(れい)- 文章の筋道を、細かく調べて見ること。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 50 箆頭舗8

(イチジクの苗を買う)

昨日、イチジクの苗を2本購入した。裏に大木に成長したイチジクがあるが、樹勢はすこぶる良いが実が生らない。近所で安く買った苗では、駄目であった。今度は、1本は2000円、一本は1500円、どちらも苗の段階だが、実をつけている。これなら間違いはなさそうだ。イチジクの実は買えば随分高いから、すぐに元が取れるはずである。裏の畑に近いうちに植えよう。


(半分を干柿にする)

昨日、購入した渋柿の半分、24個を干柿にした。半日ほど日向へ干したが、風はあったが、日差しがわずかな時間しかなくて、一日目は少し不満、夜は家の中へ入れた。明日は雨模様で外へは出せないだろうか。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

許多(あまた)の説話、要に、人をして人ならしめんと欲するに帰するのみ。便(すなわ)ち、斯(かかる)文を以って、能くその身を濡(うるお)す者、これを儒と謂う。

異なるや。今の儒と稱する者、口、虚舌を掉(ふる)いて、身に実行無し。言、行を顧みず。行、言を顧みず。矻々、年を窮めて、徒(いたず)らに鑿説を極わむ。(智を悪(にく)み、その鑿(さく)を為すなり)大言壮語、纔かに愚人を駮(ただ)す。
※ 虚舌(きょぜつ)- 空しい言葉。うそ。いつわり。虚言。
※ 矻々(こつこつ)- 地道に働くさま。たゆまず努め励むさま。
※ 鑿説(さくせつ)- うがった説。「うがつ」は「物事の本質をうまく的確に言い表す」


予は道を以って盛んと為して、子は人を以って盛んと為す。人豈(あに)盛んと謂うことを得んや。但し、その人多し。富めり。(儒を逃(さ)るべし)善く字を読む。善く書を講せり。(口に糊、足れり)蓋しこれのみ。かの輩(やから)の著述する所のものを観るに、例して皆、明徳新民章句異同の論、読むには足らざるなり。(大言、愚を駮(ただ)す)それ学庸の道なるや。
※ 口に糊(くちにのり)- 何とか貧しい生計を立てること。(かゆをすする意から)
※ 明徳新民(めいとくしんみん)- 孔子の「大学」の説く所から「明明徳」「新民」「止至善」の三つ。つまり「学問の仕上げとしてなすべきことは、立派な徳性を明らかにすることであり、それによって、民衆の心を新鮮にすることであり、またその究極の境地に留まることである」という思想から。
※ 章句異同の論 - 言い回しが違うだけで、同じ論。
※ 大言(たいげん)- できそうにもないことや威勢のいいことを 言うこと。口では大きなことを言っても実行が伴わないこと。
※ 学庸(がくよう)- 中国の古典「大学」と「中庸」とを合わせていう語。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 49 箆頭舗7

(今年初めての渋柿)

御近所の方の紹介で、今年初めて、渋柿を買った。大きさは携帯と比べると解るが、特大の渋柿で48個で6000円、ちょっとお金を掛け過ぎたかと思うが、その分、天候を見ながら、失敗しないように上手に作らなければならない。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

杜を含み、李を咀(く)い、咳唾も化して珠璣と為る。独り、恨(うらみ)は膓の錦繍、市に鬻(ひさ)ぎて利を取ること能わず。詞(ことば)の金玉、人に貸して息(利息)を占むることを得ざるを。
※ 杜(と)- 杜甫(とほ)。唐代の詩人。律詩の表現を大成、中国文学史上最高の詩人として、「詩聖」と称される。
※ 李(り)- 李白(りはく)。唐代の詩人。奔放で変幻自在な詩風から、後世『詩仙』と称される。
※ 咳唾(がいだ)- せきばらい。「咳唾珠を成す」かりそめに出た言葉も、珠玉のように美しいものである。詩文の才が非常にすぐれていることのたとえ。
※ 珠璣(しゅき)- まるい宝玉と、かくばった宝玉。
※ 膓(ちょう)- はらわた。
※ 錦繍(きんしゅう)- 錦と刺繡をした織物。
※ 金玉(きんぎょく)- 珍重すべきすぐれたもの。


言、未だ既(おわ)らず。叟、壁を仰ぎて大いに笑う。局々然たる者、これを久し。鑷(ケヌキ)を抛(なげう)ち、腮(えら)を撫(なで)し。かの赤頭を把(つか)みて、掉一掉して曰う、否々何ぞ然らん。
※ 局々然(きょくきょくぜん)- 身体を屈めて丸くなること。
※ 掉一掉(とういっとう)- 交替すること。


今の君臣の懿(よさ)、文物礼制の盛ん、これを以って、これを言わば、所謂(いわゆる)儒の盛んなるもの、固(もと)よりこれなり。は則ち、儒人を以って言うに似たり。これを以って、これを言うは、豈(あに)盛んと謂うを得んや。それ儒なるは、何ぞ人道を修むるのみや。その教え、民生において日用彜倫の外に出ず。
※ 子(し)- 2人称代名詞、あなた。
※ 彜倫(いりん)- 人が常に守るべき道。人倫。


伝に曰う、仁は人なり。また曰う、仁は人心なり。心の霊妙、これを明徳と謂い、性の偏(へん)ならざる、これを中と謂い、善と曰い、至善と曰う。
※ 霊妙(れいみょう)- 人知でははかり知れないほどに、 奥深くすぐれていること。神秘的な尊さをそなえていること。
※ 明徳(めいとく)- 立派な徳性。生得の立派な本性。
※ 至善(れい)- この上ない善。この上なく正しいさま。
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「江戸繁昌記 ニ篇」 48 箆頭舗6

(「ベニバナ」という鑑賞用茶の木)

近所に、「ベニバナ」という鑑賞用茶の木があることを教えてもらった。花に紅が少しかかり、蕾、茎、根まで赤みがかった珍しい茶の木である。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

但し、繁華を極わめるの今日、儒、隨いて盛んに、仏、隨いて盛んなるに至るは、蓋し、前日の無き所、叟以って如何(いか)んとする。叟、未だ儒人の編號(バンヅケ)を覧(み)ず。厳然たる大先生、無慮数百、門塾の大なる、生徒の繁き、蔵書の富める、肩服の美なる、善尽くせりや、美尽くせりや。
※ 厳然(げんぜん)- おごそかで近寄り難いさま。動かし難いさま。
※ 無慮(むりょ)- おおよそ。ざっと。


叟、未だ、先生某らの著わす所の、中庸何本、大学何本を読まず。文集未だ観ず。詩篇未だ看ず。考証垢を剔り(一把の密篦)、穿鑿光を磨(ま)す(一本の剃刀)升庵西河も歩を譲りて却退し、欧北、竹垞も指を啣(くわえ)忸怩(じくじ)たり。
※ 升庵(しょうあん)- 楊慎(ようしん)。明の学者、文学者。亡父の処遇について、帝に反対して、激怒を買い、流されて、約35年を配所で過し没した。
※ 西河 - 毛奇齢(もうきれい)。清の学者、文学者。西河先生と呼ばれた。博学で、議論を好み、独自の説を立てて、人を論難することが多かった。
※ 却退(きゃくたい)- あともどりすること。退却。
※ 忸怩(じくじ)- 自分のおこないについて,心のうちで恥じ入るさま。


文は則ち春秋謹厳なり。左氏浮誇なれ。秦に泝(さかのぼ)り、漢に跨(こ)え、直に八大家を一呑(ひとのみ)す。
※ 春秋(しゅんじゅう)- 中国、春秋時代の歴史書。五経の一。魯の史官の遺した記録に、孔子が加筆し、自らの思想を託した。魯の隠公元年(前722)から哀公14年(前481)までの12公、242年間の編年体の記録。
※ 謹厳(きんげん)- まじめで、いかめしいこと。
※ 左氏(さし)-「春秋左氏伝」。「春秋」の注釈書。魯(ろ)の左丘明著と伝わる。歴史的記事に富み、説話や逸話を多く集め、また礼制に詳しく国家興亡の理を説く。左伝。左氏伝。
※ 浮誇(ふこ)- うわついていて、大げさなこと。
※ 八大家(はちたいか)- 唐宋八大家。中国唐代から宋代にかけての八人の文人をさす。 唐の韓愈、柳宗元、宋の欧陽脩、蘇洵、蘇軾、蘇轍、曾鞏、 王安石の八人を指す。


読書:「二度泣いた少女 警視庁犯罪被害者支援課3」堂場瞬一著
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