平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「水濃徃方」の解読 71
(庭のムラサキクンシラン)
午後、駿河古文書会に出席した。
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「水濃徃方」の解読を続ける。
この書画、当春、久々にて相まみえ候節、形見とも見候わんと、達って懇望致せしかば、久しく廃したれど、少し思う旨あればとて、この三幅を与え候。かの翁(おきな)、人ありて平生受用(じゅよう)の語を問えば、寡欲(かよく)の二字を与え、治術(ちじゅつ)の事を尋ぬる人には、
在安民、在得人
民を安んずるに在り。人を得るに在り。
と、聖人の言至れりとのみ申し候。これにより、所の者は三言翁と呼び候。左右に寡欲、安民の二文字を書きし。中に富士を画きしは、富士は則ち、士に富むと読めば、士に富むはこれ人を得るの聖謨(せいぼ)にあたる。
※ 受用(じゅよう)➜ 受け入れて用いること。また、受け入れて味わい楽しむこと。
※ 寡欲(かよく)➜ 欲が少ないこと。欲ばりでないこと。。
※ 治術(ちじゅつ)➜ 国を治める方法。政治の方法。
※ 聖謨(せいぼ)➜ 天子のはかりごと。天子の統治する方策。
済々多士、文王以寧
済々(せいせい)たる多士、文王以って寧(やす)し。
と申せば、諸侯の御身、富士より上の、目出たき夢や候べき。かれこれ思い合わすれば、今日の事を未然に知りたるが如し。翁は誠に神人(しんじん)なるべしと。始め、木薬売りに来し様子、薬を授かりて、男子を設(もう)けし次第まで、逐一に達しければ、列座の諸人、詞(ことば)を揃(そろ)え、御家運長久の瑞相(ずいそう)とて、感心斜めならざりけり。
※ 済々(せいせい)➜ 多く盛んなさま。数が多いさま。
※ 多士済々(たしせいせい)➜ すぐれた人物が数多くいること。また、そのさま。
※ 瑞相(ずいそう)➜ めでたいことの起こるしるし。 奇瑞の様相。 吉兆。
※ 斜めならず(ななめならず)➜ 並ひととおりでない。格別だ。
(「水濃徃方」つづく)
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