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「三河物語 第三 下」の解読 4


(庭のキキョウが一輪咲いた)

高齢者へのコロナワクチン接種が進んで、陽性の内で、高齢者の割合が少しづつ減って来たという。これが続いて、朗報になってほしいものだ。

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

敵を祝田へ半分過ぎも引き下ろさせて、切ってかからせ給うならば、易々(やすやす)と切りかたせ給わんものを、逸(はや)り過ぎて、早くかからせ給いし故に、信玄度々の陣に遭(あ)い付け給えば、魚鱗(ぎょりん)に備えを立て、引き受けさせ給う。家康は鶴翼(かくよく)に立てさせ給えば、少勢という、手薄く見えたり。信玄は、まず、郷人ばらを出(いだ)させ給いて、礫(つぶて)を打たせ給う。然るとは申せども、家康衆は、面も振らず(しころ)をかたぶけて、切って掛かる程に、早や一、二手切り崩しければ、また入れかえてかかるを切り崩して、信玄の旗本まで切り付けるに、信玄の旗本より、真っ黒に、閧(とき)をあげて、切って掛かる程に、纔(わずか)八千の人数なれば、三万余の大敵に、骨身を砕きてせり合いたれば、信玄の旗本に切り返されて、敗軍をする。
※ かたす ➜ 片付ける。
※ 魚鱗(ぎょりん)➜ 魚鱗の陣。中心が前方に張り出し両翼が後退した陣形。「△」の形に兵を配する。底辺の中心に大将を配置して、そちらを後ろ側として敵に対する。
※ 鶴翼(かくよく)➜ 鶴翼の陣。両翼を前方に張り出し、「V」の形を取る陣形。魚鱗の陣と並んで非常によく使われた陣形である。中心に大将を配置し、敵が両翼の間に入ってくると同時にそれを閉じることで包囲・殲滅するのが目的。
※ 郷人ばら(きょうじんばら)➜ 村人。さとびと。「ばら」は、人を表す語に付いて、複数の意を表す。多く同輩以下に対して、敬意を欠いた場合の表現。
※ 面も振らず(めんもふらず)➜ わきめもふらず、命も惜しまず、ここを最後と攻め戦う。
※ 錣(しころ)➜ 兜の鉢の左右・後方につけて垂らし、首から襟の防御とするもの。
※ 真っ黒に(まっくろに)➜ いちずになること。また、そのさま。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「獣散る刻 無言殺剣 6」 鈴木英治 著
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