平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「江戸繁昌記 三編」を読む 43
今日から「書舗」の項に入る。「江戸繁昌記 三編」ももう少しで半分くらいのところになる。この頃、考えている。金谷宿大学の講座として、「漢文『江戸繁昌記』を読む(仮名)」といった講座を開いてみたらどうだろうと。
昔の人は漢文の素養があったが、今では漢文を読める人はほとんどいない。江戸時代の書籍を見ると、その多くが漢文で書かれている。それが読めないのは残念極まりないと、高校で数時間しか漢文を学んだことがない自分が、この所、漢文の書物を読んでいる。辞書をひきひきだが、案外と読めるものである。
『江戸繁昌記』は漢文で書かれていながら、江戸時代のベストセラーであった。江戸の下世話な話を、漢文で書いたのは、多分に権威に対する痛烈な批判を含んでいて、漢文で書くことで、お上の取締りから逃れる意味があったのかもしれないが、結局、発禁、追放の処分を免れることは出来なかった。
読み終えるにどのくらいかかるか、分からないが、開講して見ようかと思う。ただ、受講者がいるかどうかは、大いに疑問である。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。
書舗(ホンヤ)
昭代右文の数、書肆、日に盛んに、著作、歳に新たなり。老舗と称するもの、五十を額と為し、子肆、孫店、百を算(かぞ)え、千を算う。且つ、画(え)草紙舗なるもの有り。また五十を額となす中、新古を分けて、各々その半ばに居る。合して三部(ミクミ)と称す。また、読本肆(みせ)十六、借本戸八百、これその大略、その子、その孫に至りては、算(かず)に数え易からずと云う。
※ 昭代(しょうだい)- よく治まっていて、栄えている世の中。太平の世。
※ 右文(ゆうぶん)- 学問・文学を重んじ尊ぶこと。
※ 書肆(しょし)- 書店。本屋。
※ 額(がく)- 物の量。
正面は唐本、両壁は雑本、整斉、位置、積々疊々たり。先生、某などが著す所の書目招帖、翩々風に翻る。肆(店)頭に、一箇の糊造招子(カンバン)を安置す。舗主、欄内に坐し、薄(簿)に対して、監す。千履万屢、客来り、客去る。伴頭、磕頭(オジギ)、左喏右唯(ハイハイ、ヘイヘイ)、小猴、坐起、睡を愉しむに暇あらず。
※ 唐本(とうほん)- 中国から渡来した書物。漢籍。
※ 整斉(せいせい)- 正しく整えること。正しく整っていること。
※ 積々(れい)- 積み重ねること。
※ 畳々(じょうじょう)- 幾重にも重なり合うさまのこと。
※ 書目(しょもく)- 書物の目録。図書目録。
※ 翩々(へんぺん)- 軽やかにひるがえるさまのこと。
※ 千履万屢(せんりばんる)- 千の履物、万のしばしば。(次から次へと客が来ることを表す)
※ 磕頭(かいとう)- 頭を地につけて拝すること。極めて丁寧な礼。
※ 左喏右唯(さだくうい)- 諾も唯も、「はい」という応答語。
※ 小猴(しょうこう)- 小僧。
※ 坐起(ざき)- すわることと、たちあがること。立ったり座ったり。
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「江戸繁昌記 三編」を読む 42
枯れたと思ったサツキの株の一枝が、地面に着いて根を張り、知らない間に花を付けていた。
夜、金谷宿大学、理事会。6月の総会に向けての会議であったが、自分が提案してきたことが徐々に実現していくようで、楽しみである。教授陣の老齢化に伴い、講座が減りはじめている。当然、学生もじり貧になるわけで、その対策に、様々な提案をしている。少しでも盛り上げることが出来たらと、色々と策を練っている次第である。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「永代橋」の項を今日で終える。
乃ち、萬ず、或るは外冦の門に入るも、譬えは、鼠袋に走る(如く)、千艘来たれば、これを鏖(みなごろし)にせん。萬艘至らば焉(これ)を殲(ほろば)さん。然るに、兵家、或るは言う。武江に要害無し。儻(も)し、賊船の突き入る有れば、手、措(お)く所無し。屏(へい、=塀)を植(た)て、炮を置き、不虞に備う宜しく。笑うべきかな。
※ 外冦(がいこう)- 外国から攻めてくること。また、外国から攻め込んでくる敵。
※ 兵家(へいか)- 兵法・兵学の専門家。兵法家。
※ 不虞(ふぐ)- 思いがけないこと。また、その事柄。不慮。
予、嘗つて論ず。火器と舟具とは、異邦の長ずる所にして、短兵陸戦は我れこれに勝れり。短を以って長に較ぶ策に非ざるなり。かれ脱し岸に上れば、魚の沙(=砂)に胠するなり。千もまたこれ擒せん。萬もまたこれ馘せん。昔者(せきしゃ、=むかし)は北條氏の元賊を鏖(みなごろし)にする。短兵克(か)てり。このこれ証(あかし)。これ証明の鳴謙か。我が禦(ふせ)ぐ策に曰く云々、若し、これを縦(ゆる)して、岸へ登らしめば、則ち制し難しと。我が陸戦に長ずは、異方(ことかた)の畏るゝ所、これまた証々(=明らか)。
※ 短兵(たんぺい)- 短い武器。弓矢や長槍・長剣などに対して、刀剣や手槍 (てやり) の類。
※ 胠する(きょする)- 逃れる。
※ 擒す(きんす)- とらえる。いけどりにする。
※ 馘す(かくす)- 首をきる。
※ 鳴謙(めいけん)- 易の卦の一つと思われるが、不詳。
居士、手を拊(うっ)て曰う、善し適々(たまたま)橋吏の棒を打ちし至るに遇う。呵して曰う、狂人速(すみやか)に去れ。脚を住(とど)めるを許さずと。遂に、橋頭に走りて、売卜者の卦を説くを聴く。
※ 橋吏(きょうり)- 橋守の役人。
※ 呵す(かす)- しかる。どなる。
※ 橋頭(きょうとう)- 橋のほとり。橋のたもと。
※ 売卜者(ばいぼくしゃ)- 占いをする人。易者。
※ 卦(け)- 易で、算木に現れる種々の象 (かたち) 。
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「江戸繁昌記 三編」を読む 41
静岡市長田生涯学習センターで、「十返舎一九に親しむ」という4回講座があるというので、申し込んであり、その初回に、午後出掛けた。受講料が4回で1000円かかるのだが、定員の30人がすぐに埋まってしまったという。事前に出席確認の電話があり、御丁寧なことと思ったが、多分キャンセル待ちがあったのかもしれない。
駿府に生まれた十返舎一九は、江戸に出て、日本最初のプロの文筆家というか、副業なしに文筆一本で生計を立てた日本最初の人だという。世に出た「東海道中膝栗毛」を始め、生涯400本とも500本ともいわれる戯作を書きまくったという。
駿府十返舎一九研究会は平成12年に結成され、会員は十数人で、一九の研究かたがた、一九の戯作を月一回のペースで輪読をしていると聞いた。現在までに28本の戯作を読んだけれども、すべてを読みつくすには、この後100年以上かかるらしい。
研究し得た一九の略歴、18年間の研究会の色々なエピソードの話の後、「十返舎一九信濃紀行集」の一場面の読解があった。その絵解きは大変面白かった。その部分の講師は駿河古文書会の副会長もされているNM氏であった。実にお話が上手で、いつ聞いてもわかりやすい。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「永代橋」の続き。
予、頃(このごろ)、繁昌記を読む。既に三篇に至りて、未だその一所を記さず。蓋し、記し及ぶに遑(いとま)あらざるなり。叟、顧(かえりみ)て曰く、看(み)ざるや、那の(かの)千百の父舶(ヲヤフネ)、天下第一の港と謂うべし。房の鋸山、相の浦港、相対、支して門を作(な)す。その間、相距(へだ)てること、纔(わずか)に三里。一槽口以って、四海の潮を収む。
※ 父舶(おやぶね)- 親船。連絡用の小船に対し、沖に停泊している大船。
※ 鋸山(のこぎりやま)- 房総半島の南部、千葉県安房郡鋸南町と富津市の境に位置する山。
※ 槽口(ふなくち)- 上槽中に酒が酒槽(さかぶね)から出てくる口をいう。酒槽の片方の側面下部についている。
宝なり。天造地設、自然の要害。且つ、富津の暗礁、剣を樹(う)え、穽(おとしあな)を設(もう)く。土人(=土地の人)避け慣れるといえども、間々或るは、吸(すいこ)むを見る。且つ武江、漸沙(トウアサ)にして、以って、往く巨船、潮を候(ま)ち、風を待たざれば、則ち、一直(=すぐに)、岸に近づくこと能わず。
※ 天造地設(てんぞうちせつ)- 天然の造形。
※ 要害(ようがい)- 攻防上で重要な地点。要衝。
※ 武江(ぶこう)- 武蔵国江戸の意。
読書:「珈琲屋の人々」 池永陽 著
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「江戸繁昌記 三編」を読む 40
午後から雨、昨日までとは打って変わって涼しくなる。その温度差は10度ほど。こんな乱暴な気候には、子供やお年寄りはなかなか対応出来ない。昨日まで半そでに半ズボンが、今日は長袖で長ズボンに逆戻りである。
朝から、テレビでは、川崎で起きた、子供たちを襲った通り魔事件の報道ばかりで、昨日まで占めていた来日中のトランプさん関連の報道は、手品のように消えた。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「永代橋」の続き。
忽ち見る、大石良雄が数箇(=数人)の幇間を拉(ひっさ)げ、下流より泝(さかのぼ)り過ぐる。倐(たちま)ち見る、伴頭・手代(商家通例、舗相、番頭と曰い、その制を受ける者、並び、手代と曰う)、一隻の猪牙を駆(か)って、橋下より攅(あつま)り出ずを。又見る、妓を載せる一舫(ふね)、直に巨舶に走りて、観を乞い、因って一席を借り、酒殽を檣下に排し、且つ歌い、且つ舞う。興飛び、魂逝く。
※ 幇間(ほうかん)- 太鼓持ち。男芸者のこと。
※ 舗相(ほそう)- 店を補佐する人。
※ 猪牙(ちょき)- 猪牙舟。猪の牙のように、舳先が細長く尖った屋根なしの小さい舟。
※ 酒殽(しゅこう)- 酒肴。酒と肴。
※ 檣下(しょうか)- 帆柱の下。
※ 排す(はいす)- 並べる。配する。
一釣舟、上流より、楫(かじ)を還す。一叟(おきな)、中間に坐し、左右の数人、竿を収め、籃(らん)を理(おさ)む。叟、旋々、手甲(てっこう)を抽(ぬ)き、雨衣を整い、便々として、談(はな)して曰く、看(み)ずや、新地の繁昌。聞く、往時、那の(かの)辺、皆な沙(すな)、皆な芦。朝晩、唯だ波濤の声を聞く。
※ 籃(らん)- かご。ここでは魚籠(びく)。
※ 旋々(せんせん)- やがて。次いで。
※ 便々(べんべん)- だらだらとやたらに長いさま。
桑海の変、太平の運、濤声、嘔哇と為り、蘆沙、亭榭と為る。これを聞く妓舘中、五明大観など、幾箇の名楼有りて、酷(はなは)だ劇(はげ)しく、酷だ盛んなりと。且つ、深川、本所、今また別に繁昌域と為るもの久し。
※ 桑海の変(そうかいのへん)-(「桑田(そうでん)変じて海となる」から)世の変転の甚だしいたとえ。
※ 嘔哇(おうあい)- 歌い、笑う声。
※ 蘆沙(ろしゃ)- 芦と砂。
※ 亭榭(ていしゃ)- あずまや。
※ 妓舘(ぎかん)- 遊女屋のこと。
※ 五明(ごめい)- 江戸時代、江戸新吉原江戸町にあった妓楼、扇屋の異称。(五明は、扇の異称)
※ 大観(たいかん)- 高く大きい建物。高殿(たかどの)。
読書:「眠れない凶四郎(一) 耳袋秘帖」 風野真知雄 著
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「江戸繁昌記 三編」を読む 39
古希を越えて、この所、料理を時々作っている。長兄を見ていて、何時、自分で料理をしなければならない時が来るやもしれないと思い、料理を少しばかり始めて見た。出来るだけ、安価な材料で、料理を作ってみようと思った。知人から野菜をいただけば、それを使って料理を作ってみる。マーケットで安い素材を見付けたら、それで料理を作ってみる。それならば、失敗しても被害はほとんどない。どんなものでも、ネットで探すと、そのレシピが出て来る。
今夜作ったのは「鯛のあら煮」である。現役のころ、鹿児島へ出張して、よく同じ旅館に連泊した。その旅館で、料理に飽きて来るころ、「鯛のあら煮」を出してくれた。賄い料理に近いものだったのだろう。マーケットで「鯛のあら」を見かけて、それを思い出した。一匹分で200円弱、これなら惜しみない。ネットで探すと、レシピがあった。
それで、作ったのが写真のあら煮である。鹿児島の料理は何でも甘くて、その当時はやや閉口したものだが、その味を近付けたくて、レシピより砂糖を少し増やした。フライパン一つで出来てしまうのが嬉しい。
味はまずまずに出来たが、食べられるところが何とも少ない。鹿児島の料理ではもっと食べられる部分が多かったと思うが、まあ、200円では文句は言えない。
また、時々、爺さんの料理を、ブログで紹介しよう。レシピはネットで探せば大概のものは出て来る。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「永代橋」の続き。
また、一桁(=橋げた)を間(へだ)てゝ、児女喧嘩、香餌乱れ抛(う)つ。忽ち見る、竿頭一鱣魚(せんぎょ、=うなぎ)を引き上げすを。吃驚、苦を叫び、竿を連ねて放丟し、後ろを望みて倒る。蓋し、錯(あやまり)て蛇となすなり。壺を覆(くつがえ)して酒流れ、瓶を傾けて茶迸(ほとばし)る。碗跳(はね)り、剱走る。
※ 香餌(こうじ)- 味やにおいのよいえさ。
※ 吃驚(きっきょう)- おどろくこと。びっくりすること。
※ 放丟(ほうちゅう)- 投げすてること。
橋を離れて舟を避け、一葉、中流に漾(ただよ)う。簾箔長く垂(たら)して、閴(ひっそり)として、人無きがごとし。黄頭(センドウ)葉尾に坐下し、假呆天を仰ぐ。風無し、波無し。看る、那の(なの、=かの)舟、漸く揺動し来たるを。
※ 簾箔(れんぱく)- すだれ。みす。
※ 黄頭(こうとう)- 黄頭郎。船をあつかう者。船頭。水夫。(中国では「黄」は土の色を表わし、土は水に勝つとして、船頭は黄色の帽子をかぶって災難を免れようとした)
※ 葉尾(ようび)- 舟の艫(とも)。(「葉」は小舟を数えるのに用いる。)
※ 坐下(ざげ)- 座ること。
※ 假呆(かほう)- ぼうっとして。
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「江戸繁昌記 三編」を読む 38
セイヨウキンシバイともいう。今、散歩道の、あちこちに咲き出した。目立つ花である。
夜、金谷宿大学の学生代表会があった。夜6時半開会はまだ明るい。今日は北海道では最高気温が39℃を越えた。地震があったばかりの、千葉でゴルフのトランプさんは、さぞ暑かったことであろう。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。
永代橋
居士、嘗つて橋欄に倚着して、南望し指點す。大島隠約として、有るが若く、無きが若し。総山房嶺、青を刷す。翠(みどり)を抹す。海天一色、水路万里、風帆遥か靄中(もやなか)に明滅す。謂うべし、壮望となり。
※ 橋欄(きょうらん)- 橋の欄干。
※ 倚着(いちゃく)- 寄り掛かること。
※ 指點(してん)- 指でさし示すこと。
※ 隠約(いんやく)- はっきりと見分けがたいこと。
※ 総山房嶺(そうざんぼうりょう)- 房総の山々。
※ 刷す(さっす)- すりこんで染める。
※ 抹す(まっす)- こすりつける。塗り付ける。
※ 風帆(ふうはん)- 風をはらんでふくれた帆。
※ 壮望(そうぼう)- 規模が大きくてすばらしい眺め。
千石を漕し、萬石を運ず。天下の巨舶、皆な橋に面して碇す。危檣林を作し、鱗篷山の如し。偶々(たまたま)聞く、脚下管弦の湧き起こるを。欄を攀(よ)じ、水に俯(ふ)し看る時、一箇の屋船、青簾波に捲いて、錦纜風に繋ぐ。
※ 巨舶(きょはく)- 非常に大きな船。巨船。
※ 危檣(きしょう)- 高い帆ばしら。
※ 鱗篷(りんほう)- うろこのようなとま。(「とま」は、竹や茅などで編んだ、舟のおおい。)
※ 屋船(やぶね)- 屋形船。
※ 青簾(せいれん)- 青竹を編んだすだれ。
※ 錦纜(きんらん)- 錦で作ったともづな。
小竪、爐に当りて、酒を篩う。篙師、職を解いて、烟を吹く。その声、清朗なるを知る。その人の外、秀(ひいで)て中恵なるを、その舟、躁熱、その客の身貴く、財富めるを知る。一橋脚を隔てゝ、軽舟流れに横ぎる。一僧一医、相対して碁を争う。子童(こわっぱ)、茶を掌(つかさど)り、火を吹き、艫(とも)に当る。一人、頤(あご)を支えて、思いを運ず。蓋し、寒儒の詩を探るなり。
※ 小竪(しょうじゅ)- こぞう。
※ 篩う(ふるう)- ふるいにかけて不要なものを除く。
※ 篙師(こうし)- 舟を操るのに巧みな者。船頭。
※ 清朗(せいろう)- すがすがしくて気持ちがよいさま。
※ 中恵(ちゅうけい)- 中位のめぐみ。
※ 躁熱(そうねつ)- さわがしく熱いこと。
※ 寒儒(かんじゅ)- 貧しい儒者。
読書:「冬の光」 篠田節子 著
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「江戸繁昌記 三編」を読む 37
江戸時代に観賞用として入ってきた。今では雑草と呼ばれて、根がなかなか強いので、抜いても抜いても出て来る。やっかいものだが、花は拡大してよく見れば、なかなか奇麗な花である。そういえば雑草魂と呼ばれた上原投手が引退した。年齢が44歳。これから昭和生まれの選手が次々に引退して、昭和も遠くなりにけりなどと言われるのであろう。
「外宅」の項を今日で読み終える。結局、妾のシェア話になってしまったが、今まで聞いたことない話で、まさか、すべてが居士の創作ではないだろうな。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「外宅」の項、本日で終り。
正にこれ、(以下の漢詩、出典不明)
青山春晩子規叫雨 青山春晩(くれ)て、子規(ほととぎす)雨に叫ぶ。
貼坐舐席平氣呑客 貼坐(ベッタリスワリ)席を舐め、平気客を呑む。
堆笑勧盃賣媚進膝 笑を堆して盃を勧め、媚を売りて膝を進む。
十分嬌養三分未盡 十分嬌養、三分未だ尽さず。
※ 嬌養(きょうよう)- 甘やかすこと。
促(せわ)しく見せて下る、次、処子を上(のぼ)らす。眉秀(ひいで)て、神(=こころ)清し、挙止端正、恥じて憚らず。幽閑、言寡(すくな)く、静芳、秋を占(し)む。これを花中の君子に比す。蓋し、一孝処女、親の為に身を鬻(ひさ)ぐなり。
※ 挙止(きょし)- 立ち居振る舞い。
※ 端正(たんせい)- 姿・形や動作などが正しくてきちんとしていること。
※ 幽閑(ゆうかん)- 奥深くて静かなこと。
※ 静芳(せいほう)- 静けさと芳(かんば)しさ。
※ 花中の君子(かちゅうのくんし)- 蓮の異名。
一婦代り出づ年、始めて四十、脂粉、春を粧(よそおう)も、額、秋波を生ず。真にこれ、暁霜、染出ず楓(かえで)一樹、秋残して、なお数日の紅を余す。
※ 秋波(しゅうは)- 寒くなりかける頃の秋の波を、額の皺など物事の衰えるきざしにたとえていう。
※ 暁霜(ぎょうそう)- あけがたの霜。
婆細々(こまごま)説いて曰う。梅が則ち二月を縛(ばく)して養金五両。菊は則ち四両。桃は三。梨は二。客の美に就いて、値を論ず。婆言の一銭、減じ難し。婆、賤を擢(ぬい)て、挙(=行動)を勧む。客辞して曰う、思いに上(のぼ)らざると。一議一勧、事竟(つい)に成らず。客言う、近日再び択(えら)ばんと。酒銭を投じて出づ。婆、急に影を射て、塩を撒(さっ)す。曰う、叱つ、半日閑を費せり。
※ 養金(やしないきん)- 養育に必要な金銭。扶養料。
※ 賤(せん)- やすい。値段がやすい。
これはこれ、銭無くして妾を択ぶ妙方、西源子の言に得たり。
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「江戸繁昌記 三編」を読む 36
今日、初めて半そでを着る。気温が30度越えという。とはいえ、当地は比較的涼しい。テレビでは熱中症への注意を呼び掛けている。まだ5月なのに。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「外宅」の続き。
妾を買う者、合山家(ナコウド)に至る。主の婆、客を楼上に延(ひ)きて、先ず一盃を喫せしむ。須臾にして、忽(たちま)ち一處子を引き上(のぼ)す。年紀(トシゴロ)、纔(わず)かに、十四、五なるべし。
※ 處子(しょし)- 処女。
(以下の漢詩、出典を知らず)
早梅香動春信始通 早梅香り動いて、春信始めて通ず。
羅浮未試入趙郎夢 羅浮、未だ試みず、趙郎の夢に入ること。
翠袖遮羞満面潮紅 翠袖、羞(はじらい)を遮(さえぎ)りて、満面紅を潮ず。
却是似蓮花欲發未 却ってこれ蓮花に似たり。発(ひら)くを欲して、
發時誰占周氏之愛 未だ発(ひら)かざる時、誰か周氏の愛を占(し)むる。
※ 早梅(そうばい)- 早咲きの梅。
※ 春信(しゅんしん)- 春のおとずれ。
※ 羅浮(らふ)- 中国、広東省広州市の東にある山名。東海からきた浮山が、羅山と合体してできたと伝える。山麓は梅の名所。隋の趙師雄がここで、夢に梅の精である美人に会ったという。
※ 趙郎(ちょうろう)-(上述)隋の趙師雄のこと。
※ 翠袖(すいしゅう)- みどり色を帯びた衣服のそで。美しい衣の袖。
梅花、乍(たちま)ち謝して、百花交(か)い競う。桃花の面、紅は則ち紅なり。姿容或るは鄙(ひな)なり。柳枝の腰細は則ち細し。双眉、甚だ短し。牡丹、富麗なるも、中蓋し恵ならず。海棠(かいどう)、極めて艶。但し、香り無きを惜しむ。
※ 謝す(しゃす)- ことわる。謝絶する。
※ 姿容(しよう)- 顔かたちや姿。みめかたち。容姿。
※ 富麗(ふれい)- 豊かで美しいこと。
※ 恵(けい)- かしこい。さとい。
聞き得たり、妙香の暗に飄るを。又一阿娘を送り上(のぼ)す。柔姿、婀娜として、眼涼しく、頸援(ひ)く笄(こうがい)許り、始めて過ぎ、蛾眉早く剃(てい)す。剃り痕一双、生藍流すと欲す。
※ 阿娘(あじょう)- むすめさん。「阿」は、女子の名の上につける愛称。
※ 柔姿(じゅうし)- しなやかな姿。
※ 婀娜(あだ)- 女性の色っぽくなまめかしいさま。
※ 蛾眉(がび)- 蛾の触角のように細く弧を描いた美しいまゆ。
※ 生藍(せいらん)- 藍の生葉そめ。
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「江戸繁昌記 三編」を読む 35
気温が上がって、いよいよ夏が到来と思われる気候になってきた。ただ、湿気が少ないせいか、爽やかに感じて、気持ちのよい日々である。
この所、昼間は古文書解読、夜中は読書の毎日で、古文書解読に頭を使っているためか、読書の方は、難しい本は敬遠している。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「外宅」の続き。
妾、惶急(あわただ)しく、(目を)揩(こす)り下りて、これを迎えば、則ちこれ外人(ほかびと)ならず。家翁の醉いて帰るなり。嫗(カヽサン)もまた愕(おどろ)き醒(さ)め、子母、相に與(とも)にこれを慰めて、翁深醉いせり。怒気発越、妻を罵り、子を詈り、碗を抛(なげう)ち、瓶を碎く。厲聲して曰う、汝じら畜生、耳を抉(えぐ)りて聴け。更になお浅し。丙丁(ヤツナナツ)と云うて非ず。乃(すなわ)ち、翁の還るを俟(ま)たず、安閑蓐に上る。熟睡かくの如き、隣り火を失うも、また覚めざらん。嫗(おうな)謝して曰う、吾が過のみ(ワタシガワルカツタ)、吾が過のみ。(過を観て、仁を知る)且(しばら)く、これを密(ひそか)にせよ。
※ 厲聲(れいせい)- 声をはりあげること。声を荒くすること。
※ 安閑(あんかん)- 危急に際して、何もせずぼんやりしているさま。
※ 蓐(じょく)- ねどこ。しとね。
※ 過(か)- あやまち。とが。
※ 仁(じん)- おもいやり。いつくしみ。
※ 過を観て仁を知る -(論語、里仁第四)過を観て、斯(ここ)に仁を知る。
更深(よふ)け、人定る。娘手を使いて天を指し、(予所否者、天厭之)低々言う。官(ダンナ)在り、官来れり。翁深醉い、如何ぞ耳に上らん。叱して曰う、我吾が脚を以って、我が家に帰り、我れ吾が手を用いて、我が戸を敲(たた)き、我が物、吾れ毀(やぶ)り、我が理、吾れ説く。誰が半句の不の字を道(い)わん。
※ 予所否者、天厭之 -(論語、雍也第六 26子見南子章)予が否らざる所の者は、天之を厭てん。(意味/わたしに罪があれば、天が見はなす。)
※ 低々(ていてい)- 低いさま。
子母墨々(まじまじ)、只、手を使いて天を指す。(上天の載、無声、無臭)翁、如何ぞ、眼を上げん。曰う、これ何の、為せる所ぞ。我れ、毎日疲困、擂木(すりこぎ)に脚を為して、孜々業に走るに、汝安閑、早く寝(い)ね、晏(おそ)く起く。(翁、毎日疲れ、女、毎夕疲れ、未だ孰(いずれ)か苦を知らず。)女曰う、爺(トツサン)大に醉う。請う、寝に就け。曰う、何々、我飲まず、何に因って醉を致さん。呶々一夕、また罵り、また詈(ののし)る。客堪えず、悄々(コソコソ)梯(てい、=階段)を下り、纔(わずか)に身を抽きて去る。(天遯(にげ)る、臣妾を畜(やしな)えば吉)
※ 墨々(まじまじ)- 気遅れして、はっきりした言動がとれないでいるさま。もじもじ。
※ 疲困(ひこん)- 疲労困憊。
※ 孜々(しし)- 熱心に努め励むさま。
※ 呶々(どど)- くどくど言うこと。
※ 悄々(しょうしょう)- 元気のないさま。
※ 天遯矣、畜臣妾吉 - (易経より)
読書:「肖像彫刻家」 篠田節子 著
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「江戸繁昌記 三編」を読む 34
お昼頃、電話が掛かって、いきなり「〇〇警察署生活安全課の××です」という。いかにも手慣れた言い方であった。これは詐欺電話と思ったから、「警察には用がありません」と言って、相手の言葉を待たずに電話を切った。そもそも、警察が相手を確かめずに名乗ることなどないと思ったからで、案の定、再び電話がかかって来ることは無かった。
一日、家にいると、いろんな電話が掛かって来る。詐欺ばかりではなくて、色々な勧誘話も多い。いずれも「興味はありません」「必要ありません」と、二の句を継がせないように、電話をすげなく切ることにしている。中には真面目な勧誘もあるのだろうが、電話で何かを勧めるなど、全く信用していない。
警察からの電話と言ってくるのは初めてであったが、いつもの癖で、「警察には用がありません」と言ってしまった。こちらが用がなくても、向うが用があるのが警察だから、そんな言い草はないのだが、本当の警察が詐欺と紛らわしい電話をしてくるわけがないと思っている。
電話による詐欺には、十分気を付けましょう。知人以外からの電話には、向うの話を聞く前に、出来るだけそっけなく切ってしまうのが得策である。
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「江戸繁昌記 三編」の解読を続ける。「外宅」の続き。
次夜、客有り。酒を命ず。肉を命ず。一碗の清醪、我一呷、汝(なれ)一呷。一鼎の香羹、我一筋(ヒトハシ)、汝一筋。我歌い、汝和し、我捻(ひね)り、(汝)咬む。我々喜々、汝々歓々。情濃に更闌くなり。
※ 清醪(せいろう)- 清酒。
※ 呷(こう)- すう。あおる。
※ 鼎(かなえ)- 食べ物を煮たり、祭りに用いたりする三本脚の器。
※ 香羹(こうかん)- 香しい熱い汁物。
※ 情濃(じょうのう)- 濃情。情が深いこと。感情がこまやかなこと。
※ 更闌く(こうたく)- 夜がふける。
忽(たちま)ち聴く。人の戸を敲(たた)くを。羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く。妾、熟睡に知らざる為(まこと)す。外面高く敲き、低く叩き、大に叫ぶ。開け、開け、開け(アケロ/\)。正にこれ、月餅舗(カマボコヤ)急に庖刀を鼓し、混堂戸(ユヤ)暁(あかつき)伴頭を罵(ののし)る(に似たり)。
※ 忽ち(たちまち)- にわかに。
※ 為す(まことす)- まねる。よそおう。
※ 混堂戸(こんどうこ)- 湯屋。風呂屋。
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