“前へ”....言わずと知れた、明治大学ラグビー部の合言葉であります。80年代~90年代半ばくらいまで、“重戦車軍団”と呼ばれた屈強なフォワード陣が、これでもか?、これでもか?と押しに押す。強烈なタックルに全く怯まず、ただひたすら前へ進む....。高校3年の時に“雪の早明戦”をTVで見てしまい、すっかりラグビーの虜になってしまいました。明治は終盤何度もペナルティーキックのチャンスを得る。しかもゴール目の前で。キックしてしまえば同点優勝なのに...。何故蹴らないんだろう....。その意図たるや何ぞ?てな事は当時全く分かりませんでしたが、試合終了しても、しばらくTVの前から動くことが出来ませんでした。感動を越え、ただしびれた....。何かのご縁で自分がその重戦車の大学に入り、同じクラスで4年間一緒に過ごした仲間が大学4年次には、その重戦車軍団のレギュラーとして第一列のスクラム組んでいた....。あの試合、何故蹴らなかったの? 答えは簡単。明治は“前へ”だからだ...。禅問答のようですが、実は物事の本質を突いている。自分達の特徴を明らかにしてそれを愚直に行い続ける。バカにされようと、批判されようとお構いなし。実際、蹴れば勝てたのに蹴らなかったのはバカだとか、脳ミソまで筋肉だから考えられなかっただとか、おかしな事言う人は何時の時代も、どこにでもいるものです。ただあの時の世論は圧倒的に賞賛の嵐。何よりも試合終了後の選手たちの表情が最高でした。自分達の特徴を高めるための猛練習に耐え、試合ですべてを出し切った清々しい顔、今でも鮮明に覚えております。さて、地域の活動であれ、会社であれ、何かの集団において、上述のような場面に遭遇する時があります。押すべきか?蹴るべきか? そこで自問自答する。我々の集団とは何だ。と....。その場、その場で臨機応変。なんて、分かったようなことを言う方もおりますが、それは無関心の証拠。“その時”に臨機応変な動きなんて出来ない。ビビッて立ちすくむか、無鉄砲に進むかでしょう。目の前に障害があった時、誰かにパスするとか、ステップを切ってかわすなんてことしちゃダメだよ。とにかく“前へ”ぶち当たれ...。それが我々の集団の特徴であり、魂である...。昨日のリーダーシップ論。鬱の時代を迎え、華麗なステップで敵をかわせるスターの存在を待ち望むような風潮を感じますが、地域の問題なんかは住民みんながスクラムを組んで、愚直にスクラムトライを狙う。そんな街に元気がある。という傾向が強いのは偶然ではないような気がします。