「マニア」というほど入れ込んではいない。
何をさておいて・・・というほど熱も入っていない。
でも確かに私の中にかすかな「鉄分」はある。
撮り鉄でもないし、車両の名前も知らない。
新幹線などの新しい鉄道にも興味はない。
しかしローカル線に乗って眺める車窓の風景は好きだし、
何よりも昔ながらの駅舎にはそそられるものがある。
ローカル線にも、古い駅舎にも
たくさんの人々の体温や匂いを感じるからだ。
特に昔の駅舎の木で囲われた改札口に
えもいわれぬ郷愁を感じる。
おそらく原点は、花巻電鉄の西花巻駅だろう。
かつては花巻電鉄鉛線と花巻温泉線、
そして岩花線と言われた軽便鉄道への連絡線のターミナル。
昭和44年に廃止となった鉛線とともにこの駅は廃駅となった。
(昭和47年廃止となった花巻温泉線は花巻駅が終着になった)
廃駅になった年、私は小学校3年生だったが
1度か2度、ここからグランド前までひとりで電車に乗り
松園町の友人宅へ遊びに行った記憶がある。
廃駅となったあとも駅舎やホーム、信号機などが残っていて
われわれ子どもの格好の遊び場だった。
駅員さんしか入れなかった改札口の枠の中、
取り外されていなかった、黒く塗られた時刻表、
ポイントや、信号機や木のベンチなどなど・・・。
あの駅舎すべてがモノクロームとなって記憶に残っている。
ホームは縁だけがコンクリートで、真ん中は土のままだった。
大人の仕事の世界を垣間見つつ、
ごっこ遊びにはあまりに本格的すぎた。
あの光景こそが私の鉄分の要素の大半を占めている気がする。
西花巻駅は今の消防署のあたりだった。
そんなあれこれを記憶している世代も少なくなった。
私の世代が最後なのかもしれない。
今この時代に花巻電鉄が残っていたら
さぞかし貴重な観光資源になっていたんだろうなぁ。
※写真は「写真集 栄光の軌道 花巻電鉄」(花巻電鉄OB会)より
かなり昔の西花巻駅だけど、記憶の駅舎も変わらなかったと思う。