風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

昭和天皇は何を語ったのか〜初公開・秘録「拝謁記」〜

2019-08-18 | 世界・平和

昨夜放送のNHKスペシャルを見た。
昭和天皇の人となり、考え方、想いにかなり突っ込んだ
かなり興味深い内容だった。
特にも自らの戦争責任をどう考えているのか、
支那事変以来の軍部の暴走をどう感じていたのか、
ズルズルと太平洋戦争へとなだれ込んだ当時の状況について
戦後どう振り返っているのか、
生身の人間、昭和天皇の姿がそこにはあった。

戦争責任を取るため退位して、
当時の皇太子に天皇位を譲ろうとしていた昭和天皇を
押しとどめたのは吉田茂だったとのこと。
それから70年ほど経った今、その功罪を考えてみると
良かった点は、世の中の変化がスムーズに行われたこと。
(吉田茂の意図通りになったわけだ)
それと、恐らくもうひとつ、
現人神の人間宣言により、時代が変わったと
国民全体が否応なく認識させられたということも。
2つの憲法下を生きた昭和天皇は辛かったのだろうが、
国民にはわかりやすかったのだと思う。

ただし、悪かった点もあった。
戦争責任は当然のことながら
天皇にのみ問われるわけじゃない。
昭和天皇の戦争責任を(本人の想いとは裏腹に)
うやむやにしてしまった結果、
当時の内閣や軍上層部の責任まで
いつのまにかうやむやになってしまった。
石原莞爾は「自分にも責任がある。逮捕せよ」と語ったが
そういう人が果たして他にいたのだろうか。

それ以来、国のトップの責任の取り方が
なんとなくおかしくなった気がするんだな。
誰かに責任をかぶせ、本当の責任者は知らん顔する。
昭和天皇は知らん顔していたわけじゃなく
深く苦悩していたと思うし、
吉田茂も本当のインテリとして熟慮の判断だった。
今の為政者たちにそんな気持ちかあるようには思えない。

残念ながら、この拝謁記を遺した当時の宮内庁長官や
吉田首相のように、明晰な頭脳を持つ人格者たちのいない
今の政界や与党内には悪い前例にしかならなかったのだと思う。
コメント
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