風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

被害者の不幸、加害者の不幸

2004-10-28 | 風屋日記
イラクで新たな人質事件がおきている。
真の敵ではない無抵抗な一般市民を人質にとるのは卑劣な行為には違いない。
だが私は、行為自体は憎むものの、
行為を行う彼ら自身を心から憎むことができない。
なぜなら彼らも、自分達自身を守ろうとする迷える一般市民だからだ。
4月に人質となり、解放された今井紀明さんの手記「人質となって」を読み、
それは特に考えさせられた。
「私達はどういうやり方をすればいいのだ!?」という
ムスリム達の叫びが聞こえるような気がする。

イラクの人達を助けよう、あるいは非道を報じようとした4月の3人とは違い、
今回人質となった香田さんはバックパッカーだったとのこと。
前回は3人のイラク入国を責めることに呵責を感じていた人達も、
今回は「正々堂々」と香田さんを責めるのだろうか。
確かに軽率な行動であることは確かだが、
だからといって犠牲になるべきだとは誰にも言えない。
彼の生命はもちろん、ムジャヒディン達にも「加害者」になって欲しくない。
彼らの行動も、自分の利益のために悪意を持って行っているわけではないのだから。
戦闘、爆撃、テロによる数カ国間の殺しあい(それは兵士だけではない)、
人質という犠牲者とその「加害者」、
どちらにとっても本当に不幸なことだ。
宮沢賢治ではないが、私にはオロオロ歩くことしかできない。

ひとつ心配なことがある。
今井さんの主催するNPO「NO!!小型核兵器サッポロ・プロジェクト」
今井さんからのメッセージメールが寄せられていた。
そこには「右と左とのコミュニケーションの不足がバランスを欠いている」
と書かれてあった。それはその通りだと思う。
問答無用の力によって相手の口を塞ごうとするのは、
「右」だろうが「左」だろうが許されることではない。
自分とは違う考え、意見に耳を傾け、相手を認めながら違いを議論すること。
何度もここに書いているが、それが今の世界に最も大切なことだ。
ただ、「20・30代と40・50代とのコミュニケーションの断絶」とも書いているが、
世代間のコミュニケーション不足との今井さんの認識はどうなんだろう。
私も若い頃には似たようなことを感じていたこともあったが、
今、自分が40代になり気がついたことがある。
それぞれの人達のバックグランドの変化がその時々の考え方を生む。
しかしそれは、年代によって区分されるような違いではない。
今井さんのいう、極めて一方的な年代的カテゴリー化が
逆に「右傾化を生む」ような気がするが。
コメント (8)
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