風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

蜘蛛の巣

2004-10-29 | 風屋日記
蜘蛛が巣を張るのは、
食料になる虫を捕まえるためだ。
網を張り、獲物がかかるのをまん中でじっと待つ。

ふと上を見上げると、
見事に網の目に張った蜘蛛の巣に
蜻蛉のような羽虫がかかり、しきりにもがいていた。
大きな巣のまん中には、
これまた少し大きめの家主。
次の瞬間、するすると羽虫に近寄って
動けないように絡め捕る・・・と思ったが、
蜘蛛は微動だにしない。
蜘蛛の体色が薄くなっている。
・・・蜘蛛は死んでいた。

蜘蛛の巣にひっかかった羽虫は暴れる。
暴れれば暴れる程、
粘り気のある糸が絡まり動けなくなっていく。
しかし蜘蛛は来ない。
暴れる羽虫は少しずつ少しずつ弱っていく。
やがては死に至る。

羽虫は何のために死んでいくのだろう。
蜘蛛に食べられるのであれば、それは自然の摂理。
食物連鎖のささやかな一場面だったはずだ。
蜘蛛は自らが生きていくために巣を張る。
しかし当の蜘蛛が死んでしまったら?
羽虫の死は、全く意味をなさない。

ふと、平和が訪れた国に残る地雷を思った。
国が新しくなり、皆が希望に燃えている。
銃を持つものもいなくなり、
全国で国づくりが始まっている。
しかし地雷は国土のあちこちにまだ残っている。
目的を失った地雷を運悪く踏んでしまった人達は
いったい何のために傷つくのだ?

私は羽虫を捕まえて逃がしてやったが、
似たようなことは世界中で起きている。
目に見えないところで。
気がつかないところで。
コメント
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