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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

『よくないこと』

2008-02-16 | インポート
*ウィリアム・サローヤン『おーい、救けてくれ』より 中野成樹誤意訳演出 公式サイトはこちら 江古田ストアハウス 17日まで
 ちょうど1年前から、中野成樹の作る舞台はは自分にとってはずせない大切なものになった(1,2,3,4,5)。
 今回は「E-Pro」という日大劇術学部の在校生、教授陣、OBを含めたプロジェクトである。「E」とは「江古田」でもあり、「演劇」でもあるという。何と無料公演である。

 さて舞台『よくないこと』であるが、なぜか後ろ手に手錠を掛けられた男(ゴウタケヒロ)が部屋に監禁されており、頼まれてドアの番をしている?女(山本郁子/文学座)がいる。やがて依頼人らしき男(中村彰男/文学座)とその妻(片岡佐知子/ク・ナウカ)がやってきて…。なぜ男は手錠を掛けられているのか、ドア番の女の位置づけは、依頼人?夫婦は手錠男に何をしたのか?ドアの影になって見えない部分、これまでの経緯もすべてが話されるわけでもない。フランケンズ、ク・ナウカ、そして新劇の老舗文学座の俳優が共演するという試みで、前半集中できなかったのは残念だが、依頼人の妻のだらだらした長台詞で一気に劇の世界に引きずり込まれる。あっけなくも恐ろしい結末にしばし茫然。

 在校生や教授陣がOBも巻き込んで、学校のある江古田の町で芝居をする。それは決して同窓会のような閉じられたものではなく、広く間口が開かれてもいる。自分は違う大学で演劇学を専攻した。学問としての演劇を探求するのが第一で実践教育はなく、自分で芝居をやりたい人はお好きにどうぞという見事なまでの放任主義であった。学内の演劇サークルは雰囲気が怖すぎて近寄れず、かといって同じクラスで芝居をやろう!という人たちの盛り上がりにもついていけず。それがいいとか悪いとか、今回の日大の試みと安易に比較するわけではないし、いろいろな大学があっていいと思うが、学生が次々と入っては卒業していく大学というコミュニティのなかで、卒業後も互いの活動を見守り、協力しあってさまざまな企画が実現するというのはほんとうにすごいことだ。

 自分が演劇について考えること、演劇にどう関わっていくかを考えて、自分だけで何かをしている状態は、まだ「点」である。それを誰かの活動と結びつけて「線」にし、さらにそれを広げて「面」にすることができれば、単なる趣味や道楽ではなく、経済的に自立できるかどうかは別の問題として、演劇活動をしていることになるのだろう。今回の試みは、自分の進む方向ややり方に迷っている人に「こういう方法もあるよ」とひとつの道を示すことでもあり、「演劇はこんなにおもしろいんだ!」ということを再認識させてくれるものでもあった。

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