因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

プラチナネクスト第26回公演『十二夜』

2022-09-09 | 舞台
*ウィリアム・シェイクスピア作 小田島雄志翻訳 大滝寛演出 公式サイトはこちら 劇場MOMO 12日まで(1,2,3,4,5,6,7→注:プラチナネクストの第6期生によるシックスセンスの公演含みます)

 さまざまな作品に取り組んでいるプラチナネクストが、星組、月組の交互上演でシェイクスピアの喜劇に挑む。公演初日(星組)を観劇した。ふたつの階段状の台があるだけのシンプルな舞台美術(阿部一郎/青年座)で、この台が場面に応じて合体したり離れたり、双子の対面においては最高の効果を上げた。後藤浩明による音楽の生演奏は聴くだけでなく、演奏の様子を観る楽しさも。

 自分にとっての『十二夜』は80年代はじめ、出口典雄演出のシェイクスピアシアターの印象がいまだに強烈で、以後どの舞台を観てもあのときの『十二夜』を越える手応えを求めてしまう。しかしあるときふと、自分には早々と最高の『十二夜』が与えられたのだから、それを幸運とし、いっそう大切にしたいと思うようになったのである。

 今回のプラチナネクストの『十二夜』からは、シェイクスピア作品が俳優諸氏の誠実で地道な努力を受け止め、応えている、作り手と戯曲の双方向の生き生きしたやりとりのようなものが感じられた。まことに適材適所の配役であり、的確な演出がなされたのであろう、ご自分の個性や得手不得手も十分心得た上で役を大切に、楽しんで演じておられる。何度も観て、よく知っている物語なのに、双子の兄妹が再会する場面では殊更に胸を打たれ、片思いの連鎖がもつれにもつれて取り違えの勘違いがあわや大惨事になる寸前、すべての謎が解けて大団円を迎える様相にも、「ご都合主義」などと野暮は言うまい、舞台の人々とともに喜び、祝福しよう。素直にそう思えたのである。これが最大の収穫であった。
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