公式サイトはこちら 渋谷ルデコ5F 17日まで
3度めのJACROW観劇(1,2)。今回は0.5(ハーフ)シリーズ第2弾として、中村暢明と井原謙太郎が30分前後の作品を競作する企画である。
1、「きぼうのわだち(改訂版)」 脚本・演出は中村暢明
大学の映画研究会出身の助監督や俳優たちが、仲間の結婚披露宴に招かれている。集まった全員に新郎新婦に捨てられた過去があった。
2、「Love Letter from...」 脚本・演出は井原謙太郎
小説家を目指してフリーターを続けている男と、何かというと彼のアパートに押しかける正社員の友人。正社員がある女性を好きになり、フリーターにラブレターならぬラブメールの代筆を強引に依頼したところ、意外な展開になる。
3、「リグラ―」 脚本・演出は中村暢明
不動産会社の営業部で、一向に成績が上がらない社員を上司が執拗に攻め立てる。しかし実は・・・。
公演チラシ裏には3本のあらすじが、表には「『敗者復活戦』をテーマに描く30分×3本のオムニバス作品集」と書かれているが、なぜか自分はこれらを全く読まずに観劇に臨んだ。結果的に登場人物の会話や表情などにしっかり集中することができ、刺激的で濃密な時間を過ごせた。もちろん読んでいても大丈夫、じゅうぶん楽しめると思う。
物語に特殊な設定はなく、「意外な展開になる」と書いたけれども仰天するような結末ではないし、極端すぎる人物も出てこない。仲間同士の結婚式にそれぞれの元カノや元カレが招かれているという状況はよくあることだし、いやいや引き受けた恋の橋渡し役のはずが、という話も同様だ。3本めについては話の詳細が書けないのが辛いところだが、それでも読める展開である。
にも関わらず3本とも緩い既視感はなく、前のめりになるような緊張やほろ苦い感傷、ぞっとするような寂寥感を味わうことができた。出演俳優は9人だが、3本では延べ20人に達する。1人の俳優が少なくとも2本の作品に出演しており、3本に関連はなく、それぞれ独立した作品である。いずれも稽古がしっかり入っていることが窺われ、終幕の一瞬の俳優の動作、照明のタイミングが絶妙な効果をあげているもの(2本め)もあった。筆の力の強い劇作家がおり、それを的確に体現できる俳優がいることで、舞台作品として非凡な雰囲気を作り出せるのだろう。
細かいことを思い出すと、1本めの終盤に登場する新婦の兄は謎が多すぎるし、2本めの影の存在には長短あると思われる。。3本めのぎりぎりまで相手を追い詰める場面のやりとりなどは中村暢明の真骨頂であるが、これまでみた2本の本公演については、ぎりぎり度が少々強過ぎると感じたのである。今回の『リグラー』は上演時間が短いこともあり、より凝縮された描写になっていることで成功していると思う。本作は来年新春上演予定の新作のベースなのだろうか、楽しみではあるが、全編あの調子が続くとするといささか辛そうである。
出演俳優は、JACROW公演やそれぞれ所属の劇団公演でみたことのある方々がほとんどであったが、そのときと違う面を見ることができた。橋本恵一郎は2本めの正社員役では一見単純なようで、実は友だちに対して複雑な感情をもっていることが感じられ、3本めの本社社員役には、出番が少ないながらもはっとするような現実味があった。また今里真はついこのあいだの「視点」公演で難しい役どころを演じており、今回はまた別な意味で重苦しい役柄であるにも関わらず、連投、続投の疲れを感じさせない。ほかにも福原冠、菅野貴夫が地味ではあるが、誠実で的確な造形をみせており、短い作品に奥行きが生まれている。
充実の3本立てだ。
この度は、ご来場誠にありがとうございました。
今回の公演の成功は、間違いなく役者9人の力です。最高の役者が揃いました。どうかこれからも彼らのことを温かく見守って戴けると幸いです。
また、2話目のラストに関しましては、「絶対に賛否分かれるだろうな…」とは思いながらも、
しかしながらどうしても今回、「今まで自分からは動けなかった男が一歩目を踏み出す瞬間の物語」を描きたかったもので、その結果あの終わり方を選んだという経緯がありまして、
なので、あのラストが生み出した余韻等々に何かしらの心地よさを感じて戴けましたのならば、本当に感激の極みです。実に励みになります。
とはいえまだまだ未熟者のわたくしです。これからも全力で精進致しますので、どうかこれからも忌憚のないご意見を宜しくお願い致します。
井原さんが作・演出された第2話は、あのラストシーンの一瞬に凝縮された舞台であったと改めて思い出しております。9人の俳優さんと手ごたえのある舞台を作られたこと、よかったですね!
自分も嬉しくコメント読ませていただきました。
ありがとうございます。
今後ますますのご活躍をお祈りしております。