*前川知大作・演出 公式サイトはこちら シアタートラム 11月7日まで 大阪、広島、福岡でも公演あり
劇団名や作・演出の前川知大の名前を知ったのはいつのことか、どういうきっかけがあったのか既にあやふやだが、これがおそらく初見になる。~“食”についての短篇集~のサブタイトル通り、食べることにまつわるエピソードがオムニバス形式に4本描かれる。中心になる人物が数名のほかは、俳優が1人何役も兼ねる。
洗練されてセンスのよい舞台美術、俳優の動きもスピーディでテンポよく、設定や台詞もおもしろい。窪田道聡と岩本幸子以外はたぶん初めてみる俳優さんがほとんどだと思うが、複数の役柄を過不足なく演じて安定感がある。
生きるために食べることは不可避であり、そこに人間の強さも弱さもある。また飽食の時代にあって、菜食主義にのめり込む妻と、それに抗おうとする夫、必要最低限のものだけ万引きする男が、おもしろ半分の万引き犯を諌めるおかしさ、不老不死の肉体を得た医師の葛藤などが4つの短篇をつなぐ手腕もみごとだと思う。だが最も重要な3話めが冗長に感じられ、4話のエピソードが締めくくりとして弱いこと、わざわざ本物の食材を出して調理の過程をみせることに必然性が感じられなかった点が終演後の気分を曖昧なものにした。
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