因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

学生版『日本の問題』Bチーム

2011-12-21 | 舞台

Aチームに続いてBチームを観劇した。途中休憩なしの90分。
 上演順に
1,桜美林大学/思出横丁 岩渕幸弘作・演出『鼻曲がりの残像』
 恋しい人の手紙を待ち焦がれて死んだ、いや死に切れない3人の娘たち。
2,早稲田大学/荒川チョモランマ(1) 
  長田莉奈作・演出『独り、だなんて言わせない』
 女子会のクリスマスパーティ。なぜか『若草物語』の四姉妹の名をもつ彼女たちはおおいに盛り上がるが、実はそれぞれの本音があり、ひとりの男性が絡んでいた。
3,青山学院大学/劇団けったマシーン(1) 白井洋平作 鳥越永士郎演出『喫茶しののめ』
 不法滞在の外国人労働者が多い町。兄と妹がよい香りのコーヒーとおいしいケーキを出す喫茶店をいとなむ。

 こちらもAチームに負けない仕上がり。凝った舞台美術や小道具類が少なくないが、スタッフのすばやい対応ですっきりと鮮やかに進行する。
 A,Bどちらか片方でももちろん、両方みればより楽しめるだろう。
 ここから先の記述はご注意のほど。
 

 思出横丁 岩渕幸弘作・演出『鼻曲がりの残像』
 演目のなかではもっとも大掛かりな?舞台美術が施されている。白装束に白塗りの3人の美しい娘たち。棺桶のなかには折りたたんだ手紙がいっぱいだ。しかし彼女たちが待ち焦がれているあの人からの便りは来ない。
 久びさに全編絶叫調のアングラ風の芝居に触れて少々驚いた。3人はべつの人格のようで、もしかするとひとりの娘の分裂した様相かもしれず。観念的な台詞のなかに俗なものも入り混じりる。
 これが劇団初見の舞台であり、ひとつみただけでは判断できない。
  次回を待つことにしよう。

 荒川チョモランマ 長田莉奈作・演出『独り、だなんて言わせない』
 30分弱の小品であるが、もう少し先を知りたい、終わってしまうのが惜しいと思わせる。
 劇作家の作劇、俳優の演技は呼吸がよく合っていて、達者な手さばきはほんとうにお見事だ。俳優のキャラのおもしろさやギャグの場面を小出しにしながら話を引っ張ってゆくのではなく、自分の言いたいこと、みせたいことが演劇でどう表現できるかを懸命に考え、仲間たちと力を合わせている印象だ。
 頑張り屋の演劇女子たち。そのなかでひとり気を吐くローリー役のたこ魔女さんが気になる。

 劇団けったマシーン 白井洋平作 鳥越永士郎演出『喫茶しののめ』
 6劇団のなかで唯一作者と演出家が異なる作品だ。不法滞在の外国人労働者を排除するか、共生を試みるか。行政の施策の前に個々人の家族や友人の濃厚な交わりがあって、一筋縄ではゆかない。劇団の次回作は「社会派二本立て」と銘打ってあることからも、作り手が社会のさまざまな問題をどう舞台にするかを創造の核としていることが窺われる。
 30分のなかでみせるために、台詞に情報的な面が出てしまうのはいたしかたないが、説明台詞を聞いている感覚はない。舞台下手奥の階段?や通路を巧みに使いながら、いなくなった人の存在を自然にみせる。あざとくないのが好ましい。
 話の運びにやや強引なところがあって多少とまどうが、これも荒川チョモランマ同様に、もっと先を知りたい、終わるのが惜しいと思わせた。上演時間をたっぷりとって台詞や場面を増やすのではなく、同じ30分の枠でもっと研ぎ澄ました対話を通して、もっと遠く、深い地点へ到達する可能性を秘めた作品だ。

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