因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

さよなら平成記念イベント★27時間耐久!劇団肋骨蜜柑同好会の五月祭★

2019-04-30 | 舞台番外編

*公式サイトはこちら 新宿/シアターミラクル 4月30日~5月1日
 タイトルの通り、平成最後の4月30日16時30分の「開祭式」に始まり、トーク、リーディング、練習時間も含めたライヴ、5月1日に30歳の誕生日を迎える主宰のフジタタイセイが受け取ったプレゼントのレヴュー(何ももらえなかったらおしゃべりする会になる。どうだったのだろう?)、ラジオ形式のトーク、ゲーム大会、令和元年5月1日6時30分のラジオ体操、エチュード大会、プロレス、落語等々19時まで続く、お大晦日の年越しならぬ、改元をまたぐイベントである。

 因幡屋は、開幕して最初のコーナー「フジタの部屋 劇団肋骨蜜柑同好会解体篇」と題したトーク企画に参加した。フジタ氏が司会を務め、アガリスクエンターテイメントの塩原俊之氏、しむじゃっくの杉山純じ氏、シンクロ少女の横手慎太郎氏とともに、肋骨の来し方と行く末を語り合った。自分の肋骨観劇記録はこちら(1,2,3,4,5,6,7)の通り、2015年の板橋ビューネの『散る日本』が最初であり、そのときのあっけにとられるような強烈な印象、それからわずか2か月後に、現在は閉館したpit北/区域で上演された『恋の手本~曾根崎心中』の高揚感などをお話したが、塩原氏はもっと早くから観劇されており、当時のチラシなど貴重な資料もお持ちである。杉山氏は自らも作・演出として公演を行うのみならず、制作側として、つまり舞台が観客の目に触れるまでのプロセスをつぶさにご存知の方だ。横手氏はフジタ氏作品にいくつも出演されており、その作風をからだで受け止める体験を踏んでおられる。それを語る迫力たるや!完全に客席側の因幡屋にとってお三方のお話は新鮮であり、フジタ氏が演劇活動を始めた筑波大学の学生演劇相関図、ここのところの数作でモチーフとなっている「田瓶市」についての感想や、今後期待できる企画など、まことに興味深いものであった…と同時に、自分の勉強不足も痛感され、これは今後の課題に。

…『恋の手本』について、フジタ氏は「最初は登場人物が死なない設定にするつもりだったが、『曾根崎心中』の言葉に引き込まれて、やはり心中することに」という創作の裏話を話してくださった。戯曲が、その台詞が、演じる者の心をかき乱し、翻弄し、途方に暮れさせる。そのプロセスを経ての、あの熱情が迸るラストシーンだったのかと。

実は「田瓶市」が舞台となる作品は、自分にとってはひとつの躓きであった。どこともわからぬ地方都市での物語は、日本のラジオ(屋代秀樹主宰)の公演でもお三方のお話を伺って、理詰めでわかろうとせず、まずは受け止めてみようと思った次第。

 続く「無責任上等!波乱の初見読み大会」は、劇団員、客演陣これまで肋骨の舞台に出演したことのある俳優方が車座になり、このコーナー用に過去作品から何本かを選んだ台本を文字通り初見で読むというものだ。自分が見たことのある作品は1本であったが、上演と違う役もどんどん配されていく。ここでも横手慎太郎氏は、やかんの音役や、ずいぶん長い会話のなかで、たったひとことしか台詞がない役をトーク以上の熱量を発揮、終盤は客席から飛び入りのご参加もあり、会場は大いに沸く。

 途中フジタ氏が俳優に「メールっていう概念を知らない人みたいに」、「〇〇と▲▲がお互いにポジションを取ろうとしている感じで」など演出を加えると、それに即座に対応し、台詞の色合いを変え、人物の性質や人々の力関係まで変容するさまはお見事であった。特筆すべきは日本のラジオ主宰の屋代秀樹氏である。短い台詞から醸し出すその人物雰囲気、心象の微妙なニュアンスの表現など、これほど出来る方が作・演出をなさっていることに(いい意味で)背筋が寒くなるのであった。

 ともあれ日本テレビ顔負けの27時間耐久のイベントは、演劇ができること、演劇だからできること、演劇には無理かもしれないがやりたいこと等々、作り手だけでなく、受け手にもさまざまに考え、次なる歩みに踏み出す一歩でありましょう。皆さん、お疲れさまでした。参加のお声がけをありがとうございます。これからも客席から確と見届けますので、どうかよろしく!

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