因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

ホリプロ『ヴェニスの商人』

2007-09-23 | 舞台
*ウィリアム・シェイクスピア作 河合祥一郎訳 グレゴリー・ドーラン演出 天王洲 銀河劇場 公式サイトはこちら 30日まで
 ずっと以前東京グローブ座で『ヴェニスの商人』をみたことがある。俳優たちの舞台稽古という趣向の演出であった。さて今回はイギリス気鋭の演出家グレゴリー・ドーランによる遊び心いっぱいのシェイクスピアである。とはいったものの開幕前ロビーでの楽隊生演奏や、カーニバルの仮装で練り歩く俳優にはいささか困惑した。まるでそこがヴェニスのように感じられる・・・ことはないし、どこか無理が感じられ、居心地が悪いのである。開幕して冒頭の場面、巨大な植木のお化けのようなものが動く様子や、仮装した人々が出たり入ったりするところも冗長に感じられ、「早く本編をはじめて」と苛立った。申しわけないが、自分は演出家の趣向、遊び心というものを楽しみにくい体質のようである。

 バサーニオ(藤原竜也)がみごとポーシャ(寺島しのぶ)の結婚相手と決まるまでの恋愛遊戯と、アントーニオ(西岡徳馬)とシャイロック(市村正親)の「人肉裁判」が物語の核である。どうかすると前者はご都合主義のドタバタもの、後者はとんでもない人種差別劇になり、両者合わせてひとつの劇世界として楽しむことが、自分には今度もできなかった。パンフレットを読むと、出演者がほぼ異口同音に演出家の素晴らしさを讃えており、彼によって『ヴェニスの商人』の新しい面を知らされた喜びに溢れている。それを客席からも感じ取りたかったのだが。

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