因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

龍馬伝第21回『故郷の友よ』

2010-05-26 | テレビドラマ

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 毎日が運動会と文化祭のように賑やかで熱気に溢れている勝塾、平井収二郎が切腹し、岡田以蔵が土佐藩に追われて行方知れず、武市半平太も失脚したいま、元気に振舞っている龍馬だが、故郷の幼な友だちが案じられてならない。

 岩崎弥太郎(香川照之)は何かと言うと坂本家に上がり込み、材木を買ってくれとやら、茶を出せ、ぬるいのはいかんとやら厚かましい。坂本の女性たちは弥太郎をこてんぱんにけなし、それでもまったくめげない弥太郎とのやりとりは、もはやコントの領域である。龍馬が誰からも好かれる好青年であるのに対し、弥太郎はなりは汚いわ、態度は横柄、香川照之の熱演にも食傷気味で、みるたびにほとんど不愉快の一歩手前の気分だったのだが、今回武市とのやりとりに変化がみてとれた。

 遠くの高知城を見つめる武市に、弥太郎はまたぞろ悪態をつく。武市は「自分は今までお前を馬鹿にしていた。でもお前のような人間がいてもいいと思う」と、これまた随分なことを言う。弥太郎は武市が「辛そうにお城をみていた」と言い、「自分のような人間がいてもいいと思うなら、武市さんも自分に正直に生きてみればいいじゃないか」と、これまでのような揶揄や嫌みやからかいではなく、武市の両肩をつかんで揺さぶりながら、本気で語りかける。この日初めて材木が売れた。商売にはものよりも、気持ちが必要だということを弥太郎は知ったのだ。

 武市が妻の冨と向かい合う最後の朝餉の場面は一幅の絵のように美しい。夫婦がじゅうぶんに語り尽くさないまま、武市は捕えられ、投獄される。武市半平太と冨はまさに天の配剤というべき夫婦であり、今回の大森南朋と奥貫薫の配役は唸るほどぴったりだ。お似合いのいいご夫婦。一方で「なぜこんないい娘がこんな男のところに」と家族すら不思議がる弥太郎と喜勢(マイコ)夫婦もあって、この可愛らしくて気立てもよく、賢くて優しい申し分のない嫁が来たことで、岩崎家は確実に明るい方向へ進んでいく。材木がぜんぶ売れたことを弥太郎夫婦はもちろん、両親たち(蟹江敬三、倍賞美津子)も抱き合って喜ぶ様子にはほっとさせられる。

 逃げる岡田以蔵を追って、新撰組が登場した。さまざまな思想、行動をもつ人々がいっそう激しく入り混じり、ぶつかりはじめる。

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