晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『清盛』

2012-05-12 21:00:07 | Weblog

 『清盛』(三田誠広著 集英社 2000年刊)         

 近くの図書館から三田誠広の著作を手当たり次第に借りて読んでいる。最初に『道鏡』を読んだ時、三田にはまるかも知れないという予感がしたのだが、どうもその通りになっている。

 NHK大河ドラマの松山ケンイチ演じる平清盛は、何とも野卑でぶっきらぼうな感じであるが、三田氏の清盛は、保元の乱における態度などを見ると、思慮深く合理的で慎重な戦略家、悪く言えば日和見主義者として描かれている。

 果たして清盛は、白川法王の落胤なのか、違うのか、NHKは『平家物語』と同じく落胤説だが、三田の場合、落胤説を思わせるが断定を避けた推定に留めている。武士であって武士で無いかもしれない出自が清盛の性格形成に大きく影響を与えていることは両者に共通している。

 作品は、清盛の一生を描くが、三田氏が様々な作品を通して一貫して追及しているのは主人公の『僕って何?』という問いである。人は自分の運命の行方を知ることはできない。清盛も一介の武士の子として生まれ、当時は武士の時代ではないので身分は非常に低く用心棒のような扱いであったと思われるが、最後は太政大臣まで昇り詰めるのであるが、若き日の清盛は自己の未来を知る由も無い。

 人は生きていく中で、自分とは何か、自分とは何者なのか、と常に問うている存在である。

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