晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『西行 月に恋する』

2012-05-01 17:05:40 | Weblog

 『西行 月に恋する』(三田誠広著 河出書房新社 2008年刊)

 今年のNHK大河ドラマ『平清盛』視聴率が低空飛行を続けている。その理由は、登場人物が多すぎ、また並行していくつものストーリーが進むので、非常にわかりにくい。公家の世界の隠微さがメインになってしまっていて、主人公たる清盛の活躍が霞んでしまっている。映像は埃っぽくキレがない。松山ケンイチの演技も怒鳴り声のワンパターン。諸々が複合して視聴者が離れているのだろう。

 西行(1118年~1190年)は、平安末期から鎌倉初期の人、清盛と同じ年生まれ、NHKドラマでは時々顔を出す脇役、佐藤義清(のりきよ)という名の武士であったが、出家して西行となる。三田の小説は、前半部分は侍賢門院との恋を中心に描く恋愛小説。後半は、その侍賢門の二人の皇子が保元の乱で敵味方に別れて争うという悲劇的な歴史小説に変わる。なお、未読ではあるが、続編として『阿修羅の西行』(2010年刊 河出書房新社)が刊行されている。

 西行は、流鏑馬に長け、また今様の得意な文人(文武両道)、また僧侶でありながら政治にも深く関わり、水銀の密売にも手を染めるなど多面的人物として描かれている。三田は、人間は一面的に理解できない存在なのだ、また人の一生は一切幻想であると言いたいのか。

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