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『社会主義はなぜ大切か』 その1

2008-11-02 21:47:12 | Weblog
 『社会主義はなぜ大切か マルクスを超える展望』(村岡到著 社会評論社 2005年刊)

 読みかけ途中で他の本を読んでいて忘れてしまっていたのを、積ん読山脈の中から見つけたので、再び読み返す。

 本書の構成は、以下のとおり。
序章  問題噴出の現代社会
第1章 人間・言語・思考法
第2章 社会とは何か
第3章 「社会主義」に託してきたもの
第4章 ソ連邦崩壊から何を学ぶか
第5章 連帯社会主義への道

 時々章立ての順とは違った読み方をする時があるが、本書は、序章→第4章→第3章と読み進めた。

 第4章において、著者は、「ソ連邦=社会主義国」は誤り、「ソ連邦=共産党主導国」で、その内実は、「政治的自由の欠如を主要な特徴とする非民主的な官僚制支配であった」、とする。

 1920年代からの粛清、1956年ハンガリー事件、1968年プラハの春への弾圧などの歴史から判断しても社会主義国家とはいえない。

 ソ連邦の情況が次第に判明したため、日共は、1977年「社会主義生成期」論を唱えだす。今だ未熟な社会主義という事なのだろう。しかし、1994年第20回党大会で放棄、その後、「社会主義とは無縁の体制」などと説明するも明確な認識は示されず。ただ、聴濤弘氏は、「独特の位階制社会」とした。

 ソ連邦の経済システムは、「計画経済」ではなく、「指令経済」であった。政治システムは、「民主政」ではなく「党主政」であった。

 政治システムにおいて、「党主政」が成立した根拠
①ロシア社会の法文化が、法や法律を重んじるより人治の要素が大きな比重を占めていた。近代的な人権思想にもとづく「民主政」の発達が遅れていたため。
②強行的な社会変革=革命を実現したため。
③ソ連邦の経済・政治システムは、「指令制党主政」であった。

 資本制社会は、「資本制民主制」、社会主義社会は、「協議制民主制」を目指し、資本制社会から社会主義社会への転換・変革・革命は、「資本制経済」を「協議経済」に変えることを意味するだけで、政治では「民主制」が踏襲されることになる。

 ソ連邦崩壊から学ぶあるべき政治システムについて
①「ブルジョア民主主義」を否定して、「プロレタリアート独裁」「労働者階級の権力」を目指すことは根本的に誤り。

 日共は、2004年第23回党大会における綱領改定で、「労働者階級の権力」を削除、この国の現在の政治システムについても「主権在民を原則とする民主政治」と改めた。(「ブルジョア独裁」ではない。)

②性急な宗教批判は宗教の克服とはならず、逆に宗教の潜在化・復活を招く。文化の多様性の観点から、より柔軟に寛容に対応する必要がある。

 以上が、村岡氏の論の要旨である。

 1991年ソ連邦崩壊後、資本主義的経済体制の勝利が叫ばれたが、現在のところのその帰結は、新自由主義による新たな格差・貧困の創出、経済のグローバル化と世界同時不況と資本の暴力性が剥き出しになっている。

 しかし、我々には、この資本主義的経済体制に対するオルタナティブが提起できていない。村岡氏のような試みが今求められているが、自称前衛党も含めてラディカルな議論がない。敵失と弥縫策ばかり。
コメント
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