晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

「東大生はどんな本を読んできたか」

2007-12-21 20:52:33 | Weblog
 『東大生はどんな本を読んできたか 本郷・駒場の読書生活130年』(永嶺重敏著 平凡社新書 2007年刊)

 明治初めから現在までの130年間に東京大学で学んだ学生たちが、どんな本を読み、どのような読書生活を送り、どのような読書文化を築いてきたのか。

 駆け足で歴史をなぞると、明治期は、国家的な超エリートの学生が、漢書をマスターし洋書を原文で読むというレベルの高い読書であった。戦前は、マルクス主義の影響が強く、読書会やセツルメント活動など読書に「共同性」が存在していた。

 戦後の特徴は、東大生は一般社会と異なる読書文化を形成していて、それは「岩波書店」という一出版社の影響力を受けた読書文化であった。



 本書の後半は、「読書」という切り口からの戦後史であるが、ここでも、『「感動」禁止!』と同様に、1970年がひとつの画期と言える。

 1970年を境として、学生の読書は、マルクス主義古典から同時代の新しい文学や左翼文献に変わり、読書の「共同性」も衰退した。丁度時を同じくして、学生服も姿を消す。月刊の総合雑誌文化からマンが・週刊誌への転換期でもあった。

 大学進学率は、1960年10%、1970年19%、1975年32%に急上昇、学生の存在が少数の社会的エリートから大衆的存在になる。
 私は、1954年生まれで1974年に進学している。著者の永嶺氏は、1955年生まれ、『「感動」禁止!』の著者の八柏氏は、1953年生まれで、1970年後に学生時代を送っており、戦後史の捉え方に共通なものを感じる。

 その後は、コミック、情報誌の隆盛であり、インターネットの普及と読書習慣の喪失、「教養」の解体と、「情報」への移行であった。
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