馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

DIC

2015-07-14 | 馬内科学

DIC;Disseminated intravascular coagulation

播種性血管内凝固

「播種」とは種蒔き(播き)みたいにあちこちでたくさんという意味。

あちこちの血管内で凝固が起きてしまう。

血液は固まる機能を持っているし、血管内で凝固して血栓ができたらそれを溶かす機能も体は持っている。

血栓を溶かす機能は線溶と呼ばれる。

血栓溶解ではなくて、線維素(フィブリン)溶解なのだろう。

凝固亢進と線溶亢進が同時に起こり、あちこちの血管内で血栓形成と出血が起こるのがDICだ。

とても重い状態で、対処方法は考えられてはいるが、予後は悪い。

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ヒト医療ではDICの原因は、悪性腫瘍、白血病、重度の感染症、熱傷、外科手術などがあげられるが、馬では重度の感染症や消化管破裂で経験することが多い。

牛では壊疽性乳房炎が典型だろうか。

いずれもDICに対応するより原因疾患が治せないのでそのまま予後不良になることが多い。

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DICは病名というより状態あるいは現象の呼び名なので診断というより評価と呼んだ方が良いかもしれない。

古典的には原因疾患、症状と経過、そして血液検査では血小板の減少、フィブリノーゲンの減少、PT・APTTの異常、で判断する。

FDP(Fibrinogen Degradation Products フィブリン・フィブリノゲン分解産物)がヒトでは測定される。

昔、若かった頃、馬で測ってみたらどの馬もとんでもなく高かった。

測定方法がおかしかったのか、寄生虫性血栓を持っている馬ばかりだったせいかわからなかった。

まあ、せっかく測ったのだからきちんと記録して学術報告しておけばよかったかもしれない。

しかし、まだインターネットで文献検索もできない時代だった。

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さて、先日の大腸炎で死亡し、剖検でDICを起こしていたと思われた子馬。

来院時の血液検査では、白血球は50,400/μl。

血小板は新鮮血で測ったにも関わらず測定不能だった。

凝集していたのだろう。

フィブリノーゲンは残念ながら測定していない。

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きょうは、子馬の肢軸異常のsingle screw。

2歳馬の去勢。

1歳馬の腕節の2日経った外傷の縫合。

2歳馬の頚の血腫?の切開。なんだ?

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北海道も急に暑くなった。

それも蒸し暑い。

その耳の毛と、首周りと、散髪しようか?

えっ?嫌だ?

どうして?

 

 

                    



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2015-07-14 21:56:49
 以前、おんまさんの血液凝固関連の検査値をひろっていたら、ヒトよりも、よくいうところのサラサラ血液で、さすが、ウマともなれば、そういうものなんだろう。だから酸素要求に応答するのか?と、勝手に思い込みました。
 hig先生のデータは罹患している疾患を添えて、今からでも発表する価値はあるように思いますが、いかがですか?
 おんまさんや、牛さんの場合、DICに移行しないように、原因疾患の発症がないように、日ごろの管理が大切という印象です。
 毛を刈ったら、ある意味よけい暑いんじゃないですか?お年頃なので、パパ床は嫌で、トリマーさんならいいとか?散髪されないといいね、オラ君。
>はとぽっけさん (hig)
2015-07-15 04:17:05
凝固系って複雑で、しかしヒトではよく研究されていて、中途半端に手を出せないみたいなところがあります。でも、ウマはどうなっているのか文献だけでも調べておいた方がいいですね。

運動してなくてもハア~ハア~してるのをみると放熱部分が必要に思います。あのパタパタ耳は適材かと。

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