馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

救急外傷の診察の進め方「整形外科基本手技」から part2

2023-12-01 | その他外科

つづき

「患者到着までの準備」の最後の方に、

自分が深呼吸、ABCの手順で患者を死なせることはないはずと気を取り直す。

とある;笑

まだ患者は来てもいないのに、なぜ「気を取り直す」のだろう?

          ー

Primary survey とは、生理学的異常をきたす致死的損傷部位の検索を行うためのアプローチ、とある。

その手順は、

A・・airway

B・・breathing

C・・circulation

D・・disfunction of CNS  中枢神経系の機能障害

E・・exposure & enviroment

蘇生を進めていく。

          ー

secondary survey は、解剖学的な外傷の発見と応急処置

AMPLE を聴取。

AMPLE とは、

Allergy  アレルギー歴

Medication  服用薬

past history & pregnancy  既往歴・妊娠

last meal  最終の食事

events & enviroment  受傷機転や受傷現場の状況

だそうだ。

これは私たちも訊きたいことが多い。

疝痛(急性腹症)では、他に駆虫状況、そして放牧と飼い付け歴だ。

しかし、うちでは聞き取れないことないことも多い。

「ボク、現場にいなかったんで」

「ボク、担当の厩舎じゃないんで」

という人が馬を運んで来るからだ。

           ー

secondary survey として何かやり残していないか、FIXES でチェック。

FIXES とは、

F finger & tube  すべての穴に入れたか(直腸診、フォーレーなど)

I iv, im 静注・筋注、輸液、抗生剤、破傷風トキソイドは入っているか?

X Xray X線撮影取り残しはないか?

E ECG 12誘導心電図は確認したか?

S splint 副子固定はあたっているか? 

          ー

PTDの70%は初療室の初期診療時に発生しているのだそうだ。

PTDとは、preventable trauma death ; 防ぎうる外傷死。

瀕死の状態で運ばれてきて、迅速に救命処置をしていれば助かった、と言われたら救命救急医も辛いかな。

救命処置と言っても、何が起きたのかわからないままでは手を施しようがないことも多いだろう。

かと言って、何でもCTへ送るとC(死)のT(トンネル)になりかねないことがQ&Aに書かれている。

          ー

dysfunction of CNS は、

外傷医はGlasgow Coma Scale で評価する。

救急隊はJCS ; Japan Coma Scale を用いているので、医師はこちらも覚えておく必要がある。

う~ん、どちらもそのままでは大動物には使えないかな。

しかし、経験がある獣医師は、重症畜の意識レベルを顔つきや反応でよく診ているものだ。

それと、大動物は立てるか、歩けるか、が重要になってしまう。

立てない、歩けない、だと二次診療施設へ運ぶことができない(新生子馬・子牛を除いて)し、診察・治療することもたいへん難しくなる。

         ー

さて、ヒトの救急外傷の診察でどのような手順が勧められているか、参考になっただろうか?

        /////////////

私の、意識障害がある患者さんで一番多いのは・・・

スズメの集団に阻まれてエサをついばめないゴジュウカラ

うちの家の窓にぶつかることが多いのもゴジュウカラだ。

警戒心も強い。

ただ、人なつっこさもあって、私が外で薪作業をしていると、エサがもらえると思うのか近くへやってくる。

なかなか姿も好いよね。

            ー

ガラス衝突の小鳥はできるだけ救護してやりたいと思っている。

意識レベルは、GradeⅢ;刺激しても覚醒しない、が多いが、2-30分で回復して飛んでいくのもいる。

その間、カラスに襲われたりしないように保護してやりたい。

蘇生率は・・・落ちてしまうやつだと50:50くらいかな。

今度、記録を付けてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (はとぽっけ)
2023-12-01 06:43:54
 ABC手順などは実際動いて経験しないと覚えていても使えないでしょうけど、大事ですね。
 人の救急では発症からの時間が治療方法、画像撮るかどうか、薬剤選択に関わってくるので、目撃者のいない場合もあれこれ情報収集しなければいけません。

 ゴジュウカラはからの群れでも少数まじっているかいないかくらいなので見かけると気分高揚します。幹に逆さまになって止まったり、見分けやすいですね。
 そもそもどうしてぶつかりやすいのかあたりも考察をお願いします。
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2023-12-02 04:23:08
経験のない医師向けの本なんでしょう。しかし、整理されて箇条書きになり、頭文字で語呂合わせされているとベテランの復習にも役立つのかも。

うちの周りは林だからか、ゴジュウカラが多いです。樹をつついているのは虫を食べているのでしょうけど、雑穀も食べるので雑食なんでしょうね。

スズメはぶつかったことがありません。そういうとシジュウカラもかな。
返信する
Unknown (zebra)
2023-12-03 07:06:38
外回っていれば出生仔対応で意識させられる事多いのではないですかね。
でもこの場合外傷はほぼ関係なしですね。
蹴られた潰れたの見えないものはあるかもです。
バイタルに関係する外傷はほぼ予後判定レベルかと。
牛は角で突かれて腹腔貫通していても平気。
それでも消化管裂創まで開けて確認する人少ないかな。

くちばし折れているのは少ないですか。
意識戻ってもあとなかなか生きていけないのではと思います。
それでもこういう細いものに積む徳は獣医師としてのリターンあると思います。
神懸かりではなく、意識の問題でしょうけれども。
返信する
>zebraさん (hig)
2023-12-04 02:38:11
墜落や交通事故で意識不明の重態でもなんとかしなければならないヒト救急と、反応なし、起立不能であきらめているのが現状の大動物臨床のレベルの差、はありますね。
しかし、われわれにも対応できる症例もあるはずです。

くちばし折れてるのは少ないです。ほぼ即死しているのは、頭か首がいかれちゃうんでしょうか?あるいは全身打撲か・・打突による心停止か・・・・
大動物ゆえの難しさを日頃考えてますけど、小さく、弱く、もろいゆえの難しさもありますね。
返信する
Unknown (ふみふみ)
2023-12-04 22:41:47
基本的にはヒューマンエラーをいかに防止するかを精神面と手順の標準化から載せてる感じですね。もっともマニュアルの手順に頼りすぎるとそれこそ頭痛以外もすべてとりあえずCTになっちゃいますが。
返信する
>ふみふみさん (hig)
2023-12-06 03:57:51
ご指摘のとおりだと思います。抜け落ちをなくすためには大事なことなんでしょうね。
ABCDE、FIXES、AMPLE、GCSに、JCS、これらを忘れないための略号も欲しいかも;笑
返信する

コメントを投稿