2005年私はシアトルで行われたAAEP年次大会へ出張させてもらった。
そこでCornell大学の Gillian A. Perkins (アメリカ獣医内科専門医)が
How to Rapdly Adminstration Intrvenous Fluids to Critically Ill Eqine Patients on the Farm.
重症馬に牧場でどうやって急速静脈内輸液を行うか
と題する講演をしていた。
重症馬に。
牧場で。
というのがキーワードである。
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まず要約。
脱水を起こした病馬の輸液必要量(欠乏量)は25-40?であり、1日30?の維持量も必要である。
大口径の静脈カテーテルを使って、大量の輸液(1時間当たり20?以上)を重症馬に急速に投与することができる。
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Introduction には、
平均的な体重500kgの病馬が5-10%の脱水を起越していると、初期の輸液必要量は25-50?である。
とある。
これは、単純な話で、脱水を体重比で示せば、500kgの馬が体重の5%の水を失っているとするならその量は25?だということだ。
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ここからは私の算数。
体の60%は水分だとされていて、40%は細胞内液、20%は細胞外液である。
急速に起きた脱水だから細胞外液だけが失われていると単純化する。
500kgの馬の細胞外液は100?。
それが25?失われているということは1/4を失ったことになる。
PCVを血液の濃さの指標として使うと4/3倍になっているはず。
健康だったときのPCVが35~40%だったとすると、脱水後は45~52%くらい。
これくらいのPCVを示す症例にはざらにお目にかかるだろう。
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昨夜10時前に来院した馬は、PCV54%、超音波検査で小腸が膨満しているのを確認した。
胃拡張もありそうだったので、ストマックチューブを入れて10?ほど胃液を回収した。
開腹すると小腸はかなり膨満し、腹膜炎で腹水も増量していた。
20-30?以上は体内で「隔離」され、脱水を起こし、さらにはエンドトキシンショックでもあったのだろう。
SIRS(全身性炎症反応症候群)と言ってもいいかもしれない。
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はっきりと脱水があるときには、5%程度の脱水が起きていることはざらにある。
(つづく)
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今日は、子馬のALD(Angular Limb Deformity)肢軸異常の矯正手術から。
午前中、子宮動脈破裂の剖検。
どちらも春の季節もの。
午後は、2歳馬の歯槽骨膜炎?
4歳競走馬のTieback & Cordecotmy .
繁殖雌馬の副鼻腔炎と鼻出血。
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この1週間でかなり雪と氷はとけた。
それでも、見えてきた地面はまだ固く凍っている。
脱水の初期、まずは血液が濃縮されるわけですが、経時的な変化を考慮すると、十分な輸液は重要なわけですね。
30?の維持量、エンドポイントの目安にはPCVを使うのですか?ツルゴールは使えないですよね、たぶん。
季節もの疾患もおんまさんではなかなかに大変そう。
オラ君の写真が1週間前なら、この水色のオモチャは、15%位は消失してるかな、と。
脱水はとてもありふれた病態で、輸液はとても効果がある処置なのですが、形式的な「補液」しか行われていないことが多いと考えています。
ツルゴール(皮膚テント)は馬でも行います。どうやって脱水を評価するかもそのうち触れます。
そろそろ春のようです。
大型犬に与えられるおもちゃは多くありませんね。このブーメランは常時わたしてはいませんが、リトリーヴごっこだけならもう1年以上使っています。ピーピーは鳴らなくなってますけど。