馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

助けられない分娩事故と小腸閉塞

2024-02-11 | 急性腹症

出勤したら前夜から子宮穿孔疑いの繁殖牝馬が入院していた。

分娩5日後、発熱、元気食欲不振、腹水増量。

腸管手術歴がある。

「それは開けなきゃだめでしょ」

予定を変更して、朝一で開腹したが、子宮は穿孔していない。

消化管か・・・・?

この馬は、回盲部重積で回腸盲腸バイパス手術を受け、

その2年後、網嚢孔ヘルニアで開腹手術を受けたsurvivor 。

その回腸盲腸あたりに穿孔が見つかった。

消化管穿孔で汚染がひどいと助けることはできない。

あきらめて剖検したら、回腸盲腸バイパスした反吻側の回腸が穿孔していた。

分娩事故なのだろう。

            ー

妊娠末期の疝痛も依頼が来ていた。

PCV49、乳酸値も4越え。

超音波で完全膨満した小腸が多数見えた。壁の肥厚もある。

開腹したがまともな小腸はない。

腸間膜の孔をくぐっているらしい。

膨満した空腸を切開し、内容を排泄させて減圧し、整復したが小腸全域の壊死で厳しい。

あきらめる。

剖検で、空腸上位腸間膜に大きな孔があった。

入り込んだ小腸が全部壊死してしまっては助けることは叶わない。

 

 

 



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-02-11 12:37:02
 どのあたりが救命の境目だったのでしょう?
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>はとぽっけさん (hig)
2024-02-11 16:43:15
分娩による消化管破裂は、すぐ来院しても厳しいかもしれません。すぐ開腹する判断もつかないかもしれませんし。

空腸腸間膜ヘルニアは、小腸が壊死する前に来院して開腹の判断ができれば助かったかもしれませんが、7時に疝痛を見つけて11時すぎには来院してこの状態ですから、厳しいですね。

人でも、例えば大動脈破裂などは病院内で発症しても間に合わないことが多いようですね。
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