この4月の分娩後にひどく痛くなったが、それまではそうでもなかった。とのこと。
そんなはずはないと思うが・・・・
何とか歩けるとのことで来院してもらった。
サラブレッドの場合、幅の細い魔法使いの靴とか、アラビアの靴のようにならず、このような「ホタテ」状態になるのが慢性蹄葉炎のなれの果てかもしれない。
左は装蹄して、アドバンスドクッションサポート ACSも入れてある。
しかし、1ヶ月近く前に装蹄してもらったが、楽にはならなかった。と飼い主さんの弁。
こういう蹄を観ても、蹄の中で蹄骨がどれくらいローテーションしているか外見から判断することは装蹄師さんにも、獣医師にもできない。
だから、蹄葉炎の評価にはX線撮影が必要になる。MRIが使えるなら別だけど。
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蹄骨は著しくローテーションしている。
蹄骨の先は蹄底からの圧迫で磨り減っている。
蹄尖部の蹄角度は寝過ぎていて、蹄尖部は伸び過ぎている。
もはや蹄尖部は負重の役に立ってはおらず浮いてしまっている。
蹄踵部も伸びすぎで、蹄支も前へ出すぎていて、このままでは負重しにくい。
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こちらも同じだが、こちらの方が程度がひどい。
蹄骨の背側壁はほとんど垂直に立っている。
蹄骨の磨耗もこちらの方がひどい。
装蹄師さんも苦心してくれたのだろう。
反回ポイントを少しでも後へ下げようと特殊な蹄鉄を着けてくれているが、蹄骨の先端ははるかに後。
もっとも装蹄したのは1ヶ月近く前だからそれからさらにローテーションが進んだ可能性もある。
(実際にはそうは思わない。蹄底の膨隆部の様子や蹄骨の磨耗の仕方、蹄骨内の空洞がさほどないことから見て、この馬はひどくローテーションしてからの時間が長い。)
右前も左前も深屈腱を切断すれば蹄骨はデ・ローテーションできる。
左前のこの蹄鉄ははずして蹄尖部は大きく切除して、蹄踵部で負重できるようにすれば、蹄葉が剥がされる痛み、蹄骨の先端が蹄底から圧迫される痛み、過長な蹄尖部が反回時に蹄冠部に食い込む痛み、などを減らせるはずだ。
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右も左も蹄側部もつぶれて伸び過ぎている。
左前は、蹄骨は内側へ落ちている。
内側の蹄葉ももう蹄骨を支えらないのだろう。
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この繁殖雌馬は5月に交配され受胎確認されている。
このまま諦めるというわけにはいかないのだろう。
来年、お産をしたら乳母をつけても良いとのこと。
やれるだけのことをやってみることにする。
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すぐに好ましくない草が生えてくるし、
収穫適期に牧草作業をしなければならないが、乾草を作るのに適した天候が続くとは限らない。
今、牧草作業真っ盛り。
馬の診療どころではない。という牧場も多いが・・・・
それでは手遅れになる馬も多い。