真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「愛染恭子の人妻セールスレディ ~快楽の実演~」(2000/製作・配給:新東宝映画/監督:小林悟/脚本:愛染恭子・かねださとし/原作:愛染恭子『快楽理研株式会社』より/企画:福俵満/撮影:飯岡聖英/照明:ICE&T/編集:井上和夫/録音:シネキャビン/スチール:佐藤初太郎/助監督:竹洞哲也・定城秀夫/撮影助手:岡宮裕/タイトル:ハセガワタイトル/現像:東映科学《株》/出演:愛染恭子・吉澤綾・剣幸志・茂木晃・けーすけ・ささきまこと・坂入正三・港雄一)。共同脚本のかねださとしは、いはずと知れた金田敬の平仮名表記。セカンド助監督の定城秀夫は、本篇クレジットママ、これでも読みが変らないのが凄い。
 タイトル開巻、兼愛染塾長の覚束ないモノローグ起動。結婚十年、未だ子宝に恵まれぬ小沢美智子(愛染)と夫・等(坂入)の夫婦生活。正直子作りに厭きた等は、美智子の量が多過ぎる愛液にも閉口する。事後のグジャグジャした夫婦喧嘩を経て、BAR「Riz」。前後に二人の子を負ひカウンターに入る、弟で八人の子沢山マスター・宍戸翔(剣)にくだを巻く美智子に、L字型のカウンターの画面手前から金髪の山田太郎(茂木)が声をかける。“人類を救ふ偉大な仕事”の販売部員募集とやらで、美智子が深く考へもせずに訪ねてみたのは「快楽理研株式会社」。店長改め社長の徳大寺春彦(港)曰く“全地球の将来を守るべく設立された政府の認可予定の素晴らしい会社”との快楽理研の業務内容とは、コンドームの実演訪問販売。ところでオフィスの画面左手前に、電車のドアが見切れてる。何だこれ、要は摩天楼ぢやねえかと草を生やしかけてゐると、流石は小林悟、しかも堂々と劇中そのドアを使用してみせる。徳大寺に招かれ、繰り返すが電車のドアからトップ販売部員の野村久子(吉澤)が颯爽と登場。後に抜かれる棒グラフには野村と小沢のほかに、椎名・坂口・秋山と計五つ名前が並ぶも、徳大寺の台詞ではトップとはいへセールスレディは久子と美智子の二人しかゐない模様。ともあれ、尺八でコンドームを装着するところから始まる、コンドームの作法ことゴム道を美智子は伝授される。真綿色したシクラメンよりも清しい馬鹿馬鹿しさが、紙一重をも易々と超え素晴らしい。
 配役残りささきまことは、美智子の初陣相手でリストラ主夫の佐藤耕作。サクサク抱いた美智子に―事を致すのが―二十年ぶりだと感激してみせるのは、流石に幾ら何でも振り過ぎ。けーすけは少子化の昨今避妊具を売り歩くとはけしからん、あまつさへやつてゐることは出張風俗と同じではないかと至極全うに美智子の目を覚ます、大東京大学の医学生・平賀源外。後に久子が、シレッと“日がな”と呼ぶカットあり。塾長に乱暴に真性を剥かれたけーすけが奇声を上げながらいはゆる変顔を作る十八番を、東から上つた日が西に沈むかの如く披露する。源外が検査する等の精子役のモジモジくんが、定石だと竹洞哲也と城定秀夫ではなからうかと思はれつつ、チャカチャカ動き画も遠く視認不能。若干名見切れるRizの客要員にも手も足も出ないが、オーラスの声しか聞かせない入浴中の男は、大御大御当人のやうな気がする。
 小林悟2000年ピンク第四作は、大御大×塾長第二戦。最終的に何時何処で誰の映画に出ても、愛染恭子は相変らずな愛染恭子でしかないマキシマムによくいへばワン・アンド・オンリーさは爆裂し、そんな塾長が客とセックスしながらコンドームを売り歩くといふ物語自体が、抜けた底の落下速度を加速する。脇に控へるのも御馴染港雄一とサカショーと来れば、自ずと更に一層大御大な大御大仕事かと、一見思ひきや。名前で映画を見る悪弊に染まるやうで若干恐縮でもあるが、金田敬が一枚噛んでゐるのは恐らく伊達ではないらしく、開巻の濡れ場から度重ねて投げた伏線で大概な力技にも見え、案外周到に始終を畳み込む作劇は矢張り平素の大御大映画とも塾長映画とも一線を画する。無人の“旧”快楽理研事務所に漂ふ祭りは終つた感は予想外の抒情を叩き込み、裸映画的には何はともあれ、塾長に食傷したところで飛び込んで来る、吉澤綾の超絶美身のオアシスぶりが素晴らしい。となると何か?愛染恭子の裸は砂漠かよ(´・ω・`)


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