真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 平成23年映画鑑賞実績:272本 一般映画:16 ピンク:229 再見作:27 杉本ナンバー:67 ミサトナンバー:10 花宴ナンバー:8 水上荘ナンバー:13

 平成22年映画鑑賞実績(確定):285本 一般映画:18 ピンク:240 再見作:27 杉本ナンバー:73 ミサトナンバー:11 花宴ナンバー:6 >一般映画に関しては基本的に諦めた

 再見作に関しては一年毎にリセットしてゐる。その為、たとへば三年前に観たピンクを旧作改題で新たに観た場合、再見作にはカウントしない。あくまでその一年間の中で、二度以上観た映画の本数、あるいは回数である。二度観た映画が八本で三度観た映画が一本ある場合、その年の再見作は10本となる。

 因みに“杉本ナンバー”とは。ピンクの内、杉本まこと(現:なかみつせいじ)出演作の本数である。改めてなかみつせいじの芸名の変遷に関しては。1987年に中満誠治名義でデビュー。1990年に杉本まことに改名。2000年に更に、現在のなかみつせいじに改名してゐる。改名後も、旧芸名をランダムに使用することもある。ピンクの畑にはかういふことを好む(?)人がままあるので、なかなか一筋縄には行かぬところでもある。
 加へて戯れにカウントする“ミサトナンバー”とは。いふまでもなく、ピンク映画で御馴染みプールのある白亜の洋館、撮影をミサトスタジオで行つてゐる新旧問はずピンクの本数である。もしもミサトで撮影してゐる一般映画にお目にかかれば、当然に加算する。
 同様に“花宴ナンバー”は、主に小川(欽也)組や深町(章)組の映画に頻出する、伊豆のペンション「花宴」が劇中に登場する映画の本数である。


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 「熟女7人 淫乱天国」(1994『七人の熟女 淫乱』の2010年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:瀬々敬久/企画:中田新太郎/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:徳永恵実子/撮影助手:丸北弘・小元/照明助手:広瀬寛巳/録音:銀座サウンド/出演:石川恵美・橋本杏子・梶原恭子・杉原みさお・三橋里絵・清水大敬・吉行由美・荒木太郎・林由美香・平賀勘一・池島ゆたか)。出演者中、吉行由美がポスターには吉行由実。
 例によつて山梨県の山村、次女・京子(杉原)は高速道路の渋滞に捕まり未だ到着しない中、平山家の面々が盆の墓参りを済ませる。一行は長男で医者の幸一(池島)、幸一の妻・文子(石川)、癌で若死にした次男・昌二(荒木)の未亡人・紀子(橋本)と、長女―幸一からは妹に当たる―で未婚の滋子(梶原)。そしてヴィジュアル上もメソッドとしても、殆ど志村けんの「変なをぢさん」のコピーと片付けて概ね差し支へもなからう、得体の知れぬ怪人物で滋子の変人、もとい恋人の沼田鴻造(平賀)。幸一らが不審がる奇怪なダンスに対し、あれは瞑想中なのだと滋子が説明する沼田は、新興宗教教祖であるとのこと。因みに参られたのは昌二に加へ、父・周吉(清水)と母・とみ(三橋)。昌二と滋子・京子の順番は不明。
 ひとまづ帰宅、文子と紀子は夕食の準備に忙しく回り、幸一は一服する中、純然たるイカサマ師ではなく何某かの特殊な術は有するらしく、別室で滋子は沼田の祈祷に激しく乱れる。様子を見に行つた文子もアテられ廊下にて自慰に耽り始める一方、幸一も幸一で悶絶しだすので催しでもしたのかと思ひきや、急な心臓の発作に見舞はれ昏倒してしまふ。幸一が目覚めると、何故か平山家に改めて帰宅するところだつた。しかも幸一を出迎へたのは死んだ筈の両親と弟に加へ、紀子ではない昌二の妻・節子(吉行)。まるで腑に落ちぬまま歓待された幸一に、昌二は翌日―夜の内に、三橋里絵と吉行由美それぞれの対配偶者戦を消化―衝撃的な事実を伝へる。何とそこは此岸ではなく彼岸、即ち、幸一は実は死んでしまつてゐるといふのだ。事態を受け容れられぬ兄に、昌二は小川の水面を通じ現世のヴィジョンを見せる。そこでは幸一の遺体の傍らで文子・紀子・滋子が泣き崩れ、沼田は平山家の財産を狙ひ暗躍を始めてゐた。挙句に沼田に篭絡される家人の姿に、幸一は地団太を踏む。途方に暮れつつ庭を散策する幸一の前に、全裸新体操などといふ、幻想的でもあるつもりなのだか正直訳の判らないファースト・カットを迸らせ、林由美香登場。学生時代の幸一の彼女で、病名には触れられないが矢張り夭折した百合子であつた。
 当時八月公開の、深町章1994年第四作。即ちお盆映画といふポジションに誠に相応しい物語と、全員絡みのある女優が計七人、などといふ異例の豪華さではある。とはいへ、流石に一時間に七人は詰め込み過ぎたか、兎にも角にも始終を追ふことに終始してしまつた印象は強い。展開の手数が少なければお話が薄いと文句を垂れ、多ければ多いで今度は余裕がない、などと不平をいふのは我ながら好き放題な方便だと思へぬでもないが、実際のところ映画によつて良くも悪くも深町章的な、間といつたものは凡そ感じられない。ビリングは二番手ながら橋本杏子が締めの濡れ場を堂々と務めるのはいいとして、そこでの取つて付けられたやうな義兄への想ひの据わりの悪さが、最終的には全体に大きく響く。そもそも、石川恵美は平賀勘一に惑はされるばかりで、杉原みさおに至つては一対一のイベントすら設けられず、女優陣の扱ひに関するムラも色濃く残る。不倫は地獄行きの絶対御法度の極楽にあつて、昌二は節子を娶つたはいいものの、その内紀子もやつて来た暁にはどうするつもりだ、などと野暮な心配をせぬでもない。総勢七人もの大軍団を物語に投入するに際しての、無理を必ずしも回収しきれなかつたものといへよう。確かに生と死のドラマではあるものの、標準的な娯楽映画の枠内にあくまで行儀よく納まる一作に、瀬々敬久のらしさも特には窺へない。

 ところで、今作の2010年新版公開時は七月。折角だから、そこもお盆に合はせれば良かつたのに。配役その他平賀勘一は、捌けたお釈迦様も大胆に兼務する。幸一の死亡を確認する本職獣医は、田尻裕司。


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