真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ピンク・ゾーン3 ダッチワイフ慕情」(2020/制作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督:国沢実/脚本:切通理作/撮影・照明:渡邊豊/撮影助手:渡邊千絵/録音:清水欽也/助監督:菊嶌稔章/監督助手:粟野智之/美術協力:いちろう/特殊造形:土肥良成/スチール:本田あきら/編集:渡邊豊/音楽:與語一平/整音:Pink-Noise/仕上げ:東映ラボ・テック/カラリスト:如月生雄/協力:はきだめ造形・Abukawa corporation LLC./出演:佐倉絆・生田みく・並木塔子・折笠慎也・中瀬しんいち・橘秀樹・片桐俊次・西村太一・国沢実・安藤ヒロキオ)。出演者中国沢実は、本篇クレジットのみ。
 “宇宙の彼方に浮かぶ第四惑星”の、すゝき野原で伸びをした佐倉絆が振り向いてタイトル・イン。最初から提示しておけばいゝのに、何故か中盤まで温存する舞台設定を先に踏まへておくと、古典的なアダムスキー型飛翔体を主兵装とする、宇宙人連合軍が第四惑星に侵攻。人類は地下に逃れる一方、女性用ダッチワイフ―ハズバンドの用語は頑なに用ゐない―である男性型セクサロイドが都合よく一斉蜂起。不正プログラムの類なのか、機械にのみ感染するスペースQに脅かされつつ、苛烈な抗戦を繰り広げてゐるとかいふ世界観。を、掻い摘む画を作る能力が国沢実には端から望むべくもない中、ナレーションの力も借りつつ、昭和の紙芝居調の挿絵で簡潔に物語る絵師は不明。何気に、実際の俳優部に結構寄せる画力(ゑぢから)も披露してのける。
 セクサロイド看護師・東さくら(佐倉)の下に、上半身はサイヤ人戦闘服柄のロンT、下半身は迷彩パンツ―靴は銘々の私物―の負傷したセクサロイド兵・カルロス(折原)がパラシュートで落下。救護しようとしたさくらに襲ひかゝつたカルロスは、友松直之よりも大仰かつ珍奇に鳴らすSEとともに機能停止。国沢実が門番する、元々赴任する道すがらであつた前線のセクサロイド医療施設に、さくらはカルロスを担ぎ込む。ボイーンなりプルーン的に、即物的な煽情性に振る分には大目に見なくもないにせよ、子供騙し未満のラウドな音効はどうにかならないものか。音効に限つた話でなく、序の口に過ぎないんだけど。
 配役残り、所々で村上ゆう(大体ex.青木こずえ)ぽい貌も覗かせる並木塔子は、矢鱈と含んだ風情の婦長・南キク。その癖、これといつた中身ないし秘密なんて、別にない。登場順に橘秀樹・片桐俊次・西村太一・中瀬しんいちは大部屋に収容される、セクサロイドのヒデキ・セイジ・ゲン、とジングウジ。ヒデキにも、即ちヒムセルフのタチバナといふ苗字が与へられる。御無沙汰な印象の橘秀樹が振り返つてみると、「未亡人下宿?」シリーズ第二作の清水大敬2018年第一作、「続・未亡人下宿? エロすぎちやつてごめんなさい♡」(2018/主演:永井すみれ?)以来。話を戻して暴れてフリーズさせられるだけの役、の割にビリングが不自然に高いジングウジにスタンガン的な特殊警棒で引導を渡す安藤ヒロキオが、施設責任者を兼ねる軍医の岡部。フリーク・アウト制作の工藤雅典大蔵上陸作「師匠の女将さん いぢりいぢられ」(2018/主演:並木塔子)、渡邊元嗣2019年第二作にして、山崎浩治復帰作「悩殺業務命令 いやらしシェアハウス」主演を経てピンク三戦目となる生田みくは、さくらと仲良くなる同僚の北アザミ、ヒデキとはパーマネントな仲。
 国沢実2020年第一作は、「地球に落ちてきた裸女」(2017/脚本:高橋祐太/主演:阿部乃みく)と「淫乱と円盤」(2018/脚本:切通理作/主演:南梨央奈)に続く、「ピンク・ゾーン」第三作。さうは、いへ。PZ三作が互ひに全く連関しない以前に、「地球に落ちてきた裸女」以降の国沢実が、“空想特撮”ピンクを謳ふのが烏滸がましいにもほどがある点に関しては一旦兎も角、要は全作ファンタ傾倒もとい系統揃ひにつき、そもそも傍目には甚だ意義の不鮮明な、よく判らないナンバリングではある。全部似たやうな痴漢電車なのに、任意の三本をたとへば「どすけべ痴漢電車」で括る違和感、といつた風にいへば、当サイトが首を傾げる所以を御共有頂けようか。
 オープンの背景を平然と車が往来する、人類が地下に避難してゐる状況を、度を越した怠惰なのか底の抜けた無頓着なのか、説得力を有した映像で形にする気のサラッサラない国沢実に、壮大な宇宙戦争なり、謎解き交じりのSFロマンなんぞ期待するだけ無駄。小屋に木戸銭を落とした観客を虚仮にしてゐるやうにしか思へない、散発的に爆裂するイメージの迸る安さチャチさは商業映画ナメてんのかと、投げるのを思ひ止(とど)まつた匙を逆手に、ジョン・ウィックばりに柄で米神を狙ふたろかとでも思ふばかりだが、近年コンスタントに撮らせて貰へてゐるVシネ業界に於いても、国沢実は斯様にふざけた仕事ぶりなのかな?こゝはひとつ検証してみるかといふ気にも、無論ならない。他愛ないそこら辺の屋上にて、カルロスとセイジ&ゲンが妙な長尺も空費して仕出かす、他愛なくすらない大乱闘は、清大に劣るとも勝らない盛大な茶番劇。言葉を選ぶとゴミ未満のSPAC―公式に曰く“Science Pink Adventure Cinema”とかいふジャンルらしい、アホか―と比べると、思ひのほか正攻法な濡れ場が殊更に輝いて映るのは、多分逆説的な錯覚。普段はど不良が、捨て犬を拾つてゐる姿が云々といふのと同じ、所詮外道は外道である。一応振り抜きはする、ラストの豪快な巨大女―と巨大男が更にセックロス―でラッキーパンチを当てかけつつ、ショボい印字から見るに堪へない、足を洗ふ佐倉絆に捧げた陳腐なメッセージでみすみす茶を濁すにあたつてはもう国沢実天才、全速後進逆の意味で。実は同期のいまおかしんじ(ex.今岡信治)が一年後輩の荒木太郎ともども、手酷く梯子を外した大蔵から放逐される反面、未だプロパーあるいは子飼ひの座を保ちながらも、事この期に及んで国沢実が如何せん厳しい。内向性を拗らせてゐた暗黒期でさへ、まだしもマシかと生温かく懐かしみかねないくらゐに、現在進行形で過去最悪に厳しい。


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