真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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HOT STAFF -快感SEXクリニック-/ex.DMM戦
か行
/
2021年01月03日
「
HOT STAFF -快感SEXクリニック-
」(昭和62/製作:FILM・CITY/提供:にっかつ/監督:加藤文彦/脚本:岩松了・加藤千恵/原作:大島岳詩《コミックBE!光文社所載》/プロデューサー:半沢浩/企画:塩浦茂/撮影:長田勇市・滝彰志/照明:遠藤光弘・田中洋一・小林篤志/美術:佐々木敬/編集:菊池純一/助監督:田胡直道・上田良津・小野里政之/製作担当:松本洋二・岡田周一/メイク:桜田真由美/スチール:西本敦夫/録音:ニューメグロスタジオ/衣裳:第一衣裳/現像:IMAGICA/撮影協力:ガレーヂ・ホノラリー/出演:岸加奈子・河村みゆき・足立弘規・?照雄・田山涼成・水木薫・橘雪子)。出演者中、足立弘規と某照雄は本篇クレジットのみ。某のこゝろは輝く水面に白文字が完全に飛び、苗字が判読出来ず。もう少し考へろよ―監督クレジットはそこだけ黒バックにしてゐる―といふのと、もう一点トメに置いたのはポスターの記載に従つた当て図法で、トリミングに削られたのか橘雪子のクレジットは正直見てゐない。
ドボルザークの「家路」流れる中、図書館に勤める夏目京介(田山)がぼんやりと橋を渡る。夏目が欄干にボサッと寄りかゝつてゐると、買物帰りでほてほて歩いて来た夏目の妻・八重子(岸)が合流。田山涼成のモノローグ起動、「プラトニック・ラブといふ言葉が、私は好きだ」。「しかし結婚一年となる夫婦にとつて、これは悪い冗談だ」。キレもなければ華もない主演男優に、果たしてこの映画は支へきるのか。そこはかとなく去来した危惧は、大体当たる。兎も角連れ立つての帰途、草花の好きな八重子が、綺麗なヒメジオンを見つけ入る草叢。二人にピンスポのやうな光が頭上からボヤーッと差す、へべれけな画像処理は幾ら何でもどうにかならなかつたのか。さて措き夏目家ベランダの灯が消え、その日の夫婦生活。その日も、夏目は勃たなかつた。翌朝、鞄と間違へスリッパ立てを提げ、夏目は悄然と出勤、八重子もその場で止めろ。矢鱈と天井の低い、地下通路を夏目が進むロングにタイトル・イン。通路の壁に穴が開いてゐるかの如く存する、SEXクリニック「HOT STAFF」の敷居を夏目は跨ぐ。「つまりアレですねえ」、「インポテンツ」。開口一番情け容赦ない診断を仮借なく下した「HOT STAFF」のセンセイは、白衣を引つかけクソよりダサいウェリントンをかけてゐるだけで、夏目と瓜二つの男(当然田山涼成の二役)だつた。流石に合成線は、見えなんだ。
配役残り河村みゆきは、センセイのアシスタントで基本キッワキワのボディコンを着てゐるミミちやん。水木薫は、女子力ならぬ女史力を爆裂させる夏目の同僚・宮園五月。二人飛ばして橘雪子は、「HOT STAFF」クライアントの重戦車マダム。その他夏目が乗るイースタン無線の運転手と、夏目家に新聞を配りに来る、無闇にキメた新聞配達が足立弘規と某照雄か、空に太陽がある限り特定不能。但し、夏目と交す遣り取りも与へられるのは運転手の方だが、新聞配達はミミと軽く絡む点を鑑みるに、一応ビリング上位の足立弘規―本職は撮影部の模様―が新聞配達かも。更にその他、重戦車マダム同様センセイに抱かれる―のを待つ―中年女が五人、待合室を賑やかす。橘雪子が一幕限りで銀幕を潔く駆け抜けて行くのに対し、ノンクレ隊は都合三度登場。この人等は不脱、脱がんでいい。
2014年に享年六十二と、今時にしては早くに亡くなつた加藤文彦の通算第七作は、「
偏差値 H倶楽部
」(製作:フィルム・シティ/監督:すずきじゅんいち/脚本:菅良幸/原作:愛川哲也/主演:杉田かおり)と、「
若奥様のナマ下着
」(製作:U-PRODUCTION/監督:石川欣/脚本:加藤正人/原作:大地翔/主演:小沢めぐみ)との何れもマンガ原作の買取系三本立てで、「コミック・エロス」企画を成す当サイトがランダムに見た順では最後の一本。
夏目が二度目に「HOT STAFF」を訪ねたところ、センセイは眼鏡を机上に残して不在。伊達なのか戯れにセンセイの眼鏡をかけてみた夏目を、眼鏡をかけてみた“だけの”夏目をミミはおろか、実は患者であつた宮園女史もセンセイと見紛ふ。何時の間にかか気がつくと不能も大完治、そのまゝ治療だかカウンセリングと称して夏目がミミ込みで女達とヤリ倒す一方、八重子はセンセイと思しき男と夏目は為し得なかつた夜の営み含め、夫婦としての生活を送つてゐた。やがて、夫の以前との変化に戸惑ひを覚えた八重子が、今は夏目が主であるホトスタの門を叩く。さう掻い摘むと、それらしき物語が構築されてゐたかのやうに思へなくもない。もの、の。センセイの職なり立場と、夏目の配偶者を交換する大胆なスワップが、マンガがどうなつてゐたのかは知らないが少なくとも、映画の画的には満足に成立してゐない。それゆゑ絶妙に足が地に着かぬ心許ない展開を経ての、兎にも角にもか遮二無二な、遂に夏目と八重子が情熱的に結ばれる美しい締めの濡れ場、をも、オーラスで不用意に後味を濁すとあつては、いよいよ以て万事休す。完遂率の高さこそ買へる絡みも、下手にマンガを意識したのか不要な意匠に足を引かれる感は否めず、絶対美人の岸加奈子を扇の要に、飄々とプリップリの河村みゆきと日常性を最上級の形でスクリーンに咲き誇らせる水木薫をも擁してゐながら、腰から下が、首を縦に振る決定力にも些か遠い。キレもなければ華もない主演男優と綺麗に命運をともにした、漫然とするか釈然としないの二択くらゐしか見当たらない一作。最終的にコミエロを大雑把に総括すると、一番見られるのは原作如何は最早さて措いてマンガみたいな映画の「H倶楽部」で、裸映画として比較的充実してゐるのは「ナマ下着」。「ホトスタ」は後塵を拝した、といふのがザックリした概評である。
一点琴線を撫でられたのが、セカンド助監督に名前の見られる上田良津。改めて軽く調べてみると、確認し得る最古の活動歴は珠瑠美昭和60年第五作「連発絶頂テクニック」(ミリオン/脚本:木俣堯喬/主演:あおい恵/未見)の矢張りセカンド助監督、チーフは鎌田敏明。真央元の声を神戸軍団同門の山本清彦がアテた、「
昼下りの暴行魔 団地妻を狙へ!
」(1995/主演:江崎由美)で華々しくは全然ないが逆の意味で派手なデビューを果たすまで、キャリアの端緒から結構時間がかゝつてゐた格好となる。そんな上田良津も、1999年の第七作「発情乱れ妻」(大蔵/プロデューサー:関根和美/主演:夢乃)以降の、活動の形跡は全く追へない。
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