真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「宏岡みらい したがり女医の湿毛」(1995『美尻診療台 締めて開いて』の2003年旧作改題版/企画・製作:オフィス・コウワ/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:坂本太/プロデューサー:高橋講和/撮影:紀野正人/照明:三浦方雄/音楽:伊東義行/編集:フィルムクラフト/助監督:高田宝重/監督助手:堀田学/撮影助手:塚園直樹/製作担当:真弓学/メイク:大塚春江/スチール:小島ひろし/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:宏岡みらい・摩子・浅野桃里・杉本まこと・平賀勘一・久須美欽一)。監督と脚本を別立てするのは、本篇に従つた。
 ビル群のロングに、高橋講和からクレジット起動。雑踏噛ませて電話口では奥山メンタルクリニックの、看板「奥山クリニック」。尻を向けた女医が患者の股間に顔を埋める画に坂本太の監督クレジット、タイトル・イン。出社恐怖症の筒井(平賀)に奥山レイコ(宏岡)が身を任せ、受付のハルミ(浅野)がその様子を窺ひながらオナる。診察後、もしくは単なる事後。男の悩みなんて下半身をスッキリさせれば解消される、と即物的なジャスティスに到達してのけたレイコがハルミに曰く、男の悩みが、女を愉しませる。早速振り抜かれる劇中世界観の根底を成す、底の抜けた方便が清々しい。摩子と杉本まことことマコマコの、摩子が欲求不満の風情残す夫婦生活挿んで、机に向かふレイコと、ションボリ膝を抱へる久須美欽一が背中合はせの奥クリ診察室。娘の反抗期に過敏に打ちひしがれる平沢(久須美)にレイコが持つて来させたブツが、何と娘の制服。それを着させたハルミを娘・ナオコに模し、平沢大ハッスル、何てフリーダムなんだ。平沢相手に午前の診療からトバし過ぎるハルミの様子に、レイコが女手の追加も考へない中、帰り支度夕暮れ時の奥クリに、レイコの姉・ミサコ(摩子)から取留めのない電話がかゝつて来る。
 サクサク配役も残らない、DMMスルーの坂本太1995年第一作。レイコの増員希望が、摩子に着弾するタイミングが些かでなく早いのではとも思ひつつ、正確な顛末は案外豪快に割愛して済ます、元々レイコが杉まこと持つてゐた爛れた関係を軸に、後半は絡みのグルーブ感が再どころか更に一層の猛加速。ナオコ役に今日はレイコが扮する平沢の治療に目を丸くしたミサコは、軽く姉妹百合を咲かせがてら、モラルなり理性の殻を破れだ、本当の自分云々だと煽られる。この辺りは坂本太が何処まで本気なのかは兎も角、夫に、ミサコが妹のクリニックを手伝ふ旨だけのお伺ひをたてる寝室。ミサコが尺八を吹く引きから杉まこを抜いたバスト・ショットが一旦フェード・アウト、再フェードで今度はレイコの尺八に繋げるカットが鮮烈にして、映画の起爆装置に完全に点火。ロケーションなり時制といつた仔細は軽やかに等閑視した上で、宏岡みらいV.S.杉本まこと×摩子V.S.久須美欽一×浅野桃里V.S.平賀勘一、濡れ場・ストリーム・アタックが苛烈に火を噴くクライマックスが圧巻。屈強位にしても腹に段が発生しないスレンダーな肢体から、オッパイだけ悩ましく膨らんだ美巨乳を誇る宏岡みらいをビリング頭に擁し、脇を固めるのが絶対美人の摩子に、別に主演を張つて全然おかしくない浅野桃里をもが三番手に控へる超攻撃的な三本柱を得た坂本太は、脇目もふらずにアクセル全開。物語なり起承転結如き、犬にでも喰はせてしまへといはんばかりに、女の裸だけで観客を圧倒する、しなやかな裸映画の力作である。


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