真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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美人取立て屋 恥づかしい行為/DMM戦
か行
/
2013年03月25日
「
美人取立て屋 恥づかしい行為
」(1999/企画・製作:新日本映像株式会社/提供:Xces Film/監督:工藤雅典/脚本:橘満八・工藤雅典/プロデューサー:稲山悌二・西澤信行/撮影:上野彰吾/照明:田村文彦/音楽:たつのすけ/編集:三條知生/録音:加藤大和/助監督:高田宝重/監督助手:永井卓爾/撮影助手:中澤正行/照明助手:船橋正生/編集助手:青野直子/音響効果:中村佳央/スチール:佐藤初太郎/ヘアーメイク:早津晋二/制作担当:岡輝男/現像:東映化学/協力:日活撮影所/出演:青山実樹・佐々木ユメカ・黒田詩織・森士林・吉田祐健・飯島大介・町田政則・赤星昇一郎)。照明の田村文彦の文の字が、正確には左から右のはらひが髭付き、明朝体でないと出せん。
青山実樹と飯島大介の絡みで綺麗に開戦、正常位に入る青山実樹を左側から捉へた画が、不意に青味を強調したキネコに変化したかと思ふと鮮烈なタイトル・イン。挿入前に、美人取立て屋のたまき(青山)は町工場「猪熊製作所」社長の猪熊(飯島)に、今月分の払ひを確認。一方、先般のキネコは情事が盗撮されてゐることを示す一手で、デフォルトで花瓶に仕込まれたカメラを通し表に停められたバンの中では、たまきとは別口の取立て屋・小夜子(佐々木)とマサト(森)が、マサトはたまきに執心気味に二人をモニタリングする。介錯役の飯島大介込みでグレードの高い青山実樹の裸含めて、抜群にカッコいい開巻である。事後宅配便を装ひ「道頓堀ファイナンス」から雇はれたバンの二人が猪熊のセカンドハウスに乱入、たまきと小夜子は女のプライド混じりに交錯する。続いて登場する赤星昇一郎が、たまきのボスで「ハッピー♥ローン」社長の榎木武彦。猪熊製作所を監視する小夜子だけでなく、榎木もここに来ての不可解な猪熊の金回りのよさに疑念を懐く。車中での小夜子とマサトの一戦挿んで猪熊製作所に整理屋の鬼頭太一郎(吉田)が出入りしてゐることが判明し、榎木と道頓堀ファイナンス社長の前田欽二(町田)は共闘、軽いすつたもんだの末にチームは小夜子の仕切りで動くことになる。鬼頭のヤサを押さへ、鬼頭とパトロンの娘かつベッドの上では女王様(黒田)のプレイを、例によつて仔細は省略した完璧な首尾でモニタリングしたまではよかつたものの、鬼頭の動きは予想外に早く猪熊製作所は破産させられ、債権を回収し損ねた榎木と前田は大損する。ともあれ鬼頭の手口は掴んだと、小夜子は逆襲を誓ふ。
栄えある翌年の正月映画でもある、当時エクセス期待の生え抜きの新星・工藤雅典の1999年全二作中第二作、兼ピンク映画第二作。因みに鬼頭V.S.黒田詩織戦の背後で流れてゐる―設定上―テレビ音声は、デビュー作の「
人妻発情期 不倫まみれ
」(主演:小室友里)より、川瀬陽太の声が妙に通る。近現代ピンク姐御肌最強の佐々木ユメカがドッシリ扇の要に据わり、エクセスライクが奇跡を呼んだ青山実樹と、三番手にをも既に四番を打つた実績のある黒田詩織。超絶美麗の三本柱を支へる男優部もイケメンの森士林をビリング筆頭に、登場順に飯島大介×赤星昇一郎×吉田祐健×町田政則と色気も渋味も凄味も申し分ない、エース格のオッサンを四枚揃へたチート感覚のフォー・カード。出来過ぎた布陣を腐らせることもなく、たまきとマサトのラブ・ストーリーを併走させる悪党同士で騙し合ふ活劇がしなやかに進行する、素面で面白い娯楽映画の快作。寧ろ鬼頭対道頓堀ファイナンス&ハッピー♥ローン共同戦線の対立図式を纏めることにより重きを置く前半部分に関しては、各濡れ場の短さが不足にすら感じられるほどだ。だから誰だ、エクセスは絡みばかりのエロ映画だなどと、見る前から決めつけてゐやがるのは、法人にせよ個人にせよ名前で映画を観るな。対して後半は濡れ場の比重が増す分、今度は話の展開が幾分性急になつてしまふのは土台六十分の尺では最早仕方がないのか。鬼頭撃墜の一連は兎も角としても、前田と榎木とたまきに山分けした、残りの金を全てマサトに渡した小夜子が投げる決め台詞「取立てやるんならたまきと組みなさい、向かうもアンタが必要な筈よ」。言ふでもなく話すでもなく、語るでも告げるでもない、佐々木ユメカが台詞を正しく投げる距離感ないし体温は絶品。そこだけ切り取れば震へさせられるカットではあるのだが、世知辛い稼業に厭きマサトをたまきに譲り身を引く小夜子の外堀は、決して十全に埋められてゐるとはいひ難い。ともあれそこまで望むのは些か贅沢か、リアルタイムで感服して以来ずつと再見を切望してゐつつ機会に恵まれず、今回DMMに手を出し漸く果たせたものだが、改めて見てみても色褪せない充実に唸らされる。確かにこの頃は、工藤雅典は輝いてゐた。
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