真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「痴女の盗み撮り 奥まで覗く」(1999『盗撮痴女 覗いて濡らす』の2012年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:橋口卓明/脚本:哀師弟朝大/企画:福俵満/撮影:中尾正人/録音:シネキャビン/編集:酒井正次/助監督:菅沼隆/監督助手:佐藤泰夫・竹洞哲也/撮影助手:田宮健彦/音楽:遊林/スチール:佐藤初太郎/現像:東映化学/協力:堀禎一・ブロンコ・株式会社セイショウ・株式会社AOR・株式会社ユーセフ/出演:佐倉萌・夢乃・富山敦史・杉本まこと・七瀬ミオ・村井智丸・浅野忠・松沢直志・茅茂)。出演者中、茅茂は本篇クレジットのみ。脚本の哀師弟朝大てのは、これまた誰の変名だよ(´・ω・`)
 エロサイトの映像に乗せタイトル・インからオープニング・クレジット、明けて深い草叢、七瀬ミオと津川マサオ(村井)が青姦に燃える姿に、後述するクライムハンターの吉崎久美(佐倉)が秘かにカメラを向ける。事後津川が財布から札片を抜くので七瀬ミオは商売女なのかと思ひきや、商売女は商売女なのだが財布は七瀬ミオのもので要は金の流れが逆。呼んだデリ嬢から巻き上げることを生業とするといふのが、無闇にやゝこしい津川の造形。劇中実際にさう呼称されるクライムハンターといひ、開巻から快調にツッコミ処には事欠かないのだが、良くも悪くも、文字通り序の口に過ぎない、どう転んでも良かないか。友人でトラック運転手の今岡ヤスハル(浅野忠か松沢直志)の部屋を訪ねる津川を、四駆の中から久美が追ふ。久美はプッシャーから得た情報を基に、津川と今岡と不動産会社営業の佐藤トシユキ(松沢直志か浅野忠)の三人が、昨今犯行を重ねるレイプした女の動画をネットで売る連続強姦魔ではないかと踏んでゐた。一方、NCAAの半袖パーカでランニングする健(富山)と、帰宅時不用意に人気のない河原を横断するOLの鈴木絵海(夢乃/a.k.a.桜居加奈)。健は時間差で久美・絵海と交錯、三人組がキメるところに通りがかつた絵海は鴨葱と犯され、ビデオを回しつつ女を陵辱する三人を、更に狙ひが当たつた久美が嬉々と撮影する。絵海を助けもせずにその場を離脱した久美は、ボスである制作会社プロデューサー・半沢(杉本)と寝る。犯行現場を押さへ犯人摘発に尽力するといふのが、件のクライムハンターで御座いといふ寸法。どう考へても、警察に通報する方が先でしかない。三人組が立ち去つた後、健は憐れな絵海を発見。助けようとするも錯乱した絵海は健からも逃げ、挙句に健の眼前、歩道橋の上から電車にダイブする。首尾よく仕事が進んだ久美と半沢がのうのうと御満悦の反面、絵海の死のショックをセンシティブに引き摺る健は自室に、絵海の幽霊を見るに至る。
 橋口卓明1999年薔薇族込みで第二作―ピンク限定だと唯一作―は、よくいへば微笑ましい激しく頓珍漢な怪作。絵海の幽霊に慄く健は、現に三人の逮捕に繋がりはしたクライムハンティングの映像を半沢がしたり顔で紹介するテレビ番組を視聴、終に一線を越える、といふか直截には壊れる。ほぼ常駐する絵海幽霊を風呂場で洗ひ清めた健は、半沢と、その向かう側の謎のクライムハンター目指し行動を開始する。1999年当時既に、クライムハンター(笑)だなどと世良公則が主演してさうな―そのまんまぢやねえか―Vシネ感覚のダサさは十二分に致命的であつたのではないかとも苦笑を禁じ得ないが、だから今作最大のツッコミ処はクライムハンターでも、その底の抜けた方便でもないのだ。改めて整理すると、孤独な青年が、女に背中を押され明後日な正義を爆発させる。といふとこれで実は「タクシードライバー」に激しく似た造りの物語なのだが、問題は、

 女が幽霊(;´Д`)

 半沢は半殺し、久美を手篭めにしながら、健は聞き取り辛い口跡で叫ぶ「こんな腐つた世の中、時間がない」、「俺が犯罪を誘発するんだ」。出し抜けにエッジの利いた―つもりの―メッセージなんぞ振り回してみたりもするものの、所詮は木に挙句に接ぎ損ねた竹。主演男優・演出部両輪の稚拙につきよしんば一昨日にせよエモーションを固定することも能はず、以降は端的には気違ひが薮蛇にスラッシュに暴れ倒した末に、尺が尽きたか如く尻切れ気味のラストにまで一直線。悪し様に罵るのは簡単といふか当然でしかないのかも知れないが、別ですらなく逆の意味でならば画期的に面白い、仕出かした感が半端ない頗るチャーミングな一作。一応お断り申し上げておくとお薦めしてゐる訳では決して断じて絶対にない由、ゆめゆめ誤解なきよう。

 最後に一つ残る問題は一つでは済まないので疑問は、出演者中茅茂に該当する登場人物が、どうしても見当たらない件。

 尻切れ気味のラスト< 久美を逆クライムハンターした健が、自宅に戻り全裸の絵海幽霊とチューして終り


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