閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「なまえのないねこ」フランス版

2023-11-07 15:48:31 | お知らせ(海外版)

『なまえのないねこ』(町田尚子・絵 小峰書店 2019年)のフランス語版ができました。
表紙、がらっと変わってびっくりだけど、おとなっぽい素敵なデザインですね。
"Le chat sans nom" はそのままのタイトル。  Le Cosmographe という出版社から。

 

じつは日本版のとびらの絵(左)が、フランス版の表紙になったのです。
そしてとびらは、シンプルに真っ白。

 

表紙のねこさんは? ちゃんと裏表紙にいました!

本文の猫たちの名前はどんなふうになっているかというと…

靴屋のレオ(そのまま)
本屋のカブリオール(=ぴょんぴょん跳ねる、かな? バレエ用語にもあり)
八百屋のミニ(意味そのまま)
そば屋のヌイユ(=ヌードル)
パン屋のハイジとクララ(そのまま)
喫茶店のミミ(そのまま。幼児語で猫の意味も)とクレーム(=クリーム)
お寺のグリグリ(これは何だかわからなかったけど、招福長寿の名前だと書いてある)
犬のタロー(そのまま)とペルーシュ(=ぬいぐるみ・笑)

そして、主人公のメロンですが、なんと「キウイ」に!
というのも、スペイン同様、フランスでもメロンはオレンジ色が主流とのことで、緑の目と結びつきにくい。スペイン版では「リモン」(=ライム)になったのだけど、フランスでは「キウイグリーン」ということで落ちついたのでした。
予期せぬことで、最初に校正で見たときは「は…?」と目をぱちくりしちゃったのですが、最後に「おいで、キウイ」と呼ばれて嬉しそうについて行く姿が、妙にしっくりなじんでいて、そういえばキジトラの茶色や体型そのものがなんとなく果物のキウイのようでもあるし、鳥のキウイ(こっちが名前の元ね)っぽくもあり、なるほど~、と深く納得したのでありました。

さて、次はポルトガル版です。これがまた意外な名前になってますので、おたのしみに。

*****

関係ない話ですが、「アストリッドとラファエル」というフランスのTVドラマが面白い。
内気なパズル好きの文書係と、姉御肌で行動派の刑事、対照的なふたりの女性が協力して犯罪捜査をしていく話。
たまたまNHKでシーズン3から見始め、いまBS11でシーズン1の最初から見ているのだけど、NHKは吹き替えで、今回は字幕。
わたしはフランスの映画もドラマもほとんど見てこなかったので、めちゃくちゃ早口のフランス語会話が飛び交うのが、耳にとても新鮮です。
せりふの量から察するに、字幕では半分くらいしか拾えてないのではと思うけど、聞いてひとこともわからなくても、「音」を感じられるので字幕のほうが好き。
フランス版のメロン(キウイ)ちゃんも、ああいう「音」の中にいるのだな。

絵本というものは、音が出ない。文字で書かれている以外、背後にどんな声が聞こえ、どんな音が鳴っているか、読む人にはわからない。でも、書かれていないからといって「し~ん」と静まり返っているわけではなく、お店の中、道路、雨の公園、背景にはそれぞれいろんな音があるはずだと思う。
きっとおなじ絵の中から、日本の子どもは日本の音を、フランスの子どもはフランスの音を、無意識のうちに感じとっているのではないかしら。
そんなことを考えました。

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