えーと、おみこしの絵本をつくっているわけではありません。
(タイトルの意味は最後に説明します)
昨年から、Mとつくっている絵本がありました。
「こういう内容で」と某社から依頼を受けたものです。
昨夏に、文章の第1稿ができました。
年明けて2月には、Mの絵も全部仕上がりました。
あとは印刷を待つばかり、だったのですが…
そこで思わぬ食い違いがいろいろと生じまして、
先方の要求に応じることが困難な状況となり、
まず、わたしが降板を宣言。
(「そして あるまじろは おうちにかえり
まるくなって ねたふりをしました」)
そのあと、しばらくねばって交渉を試みてくれたMも
あきらめて原画をひきあげ、白紙状態に…。
こういうことは珍しいです。
(「いや、よくあるよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、
少なくとも、わたしには珍しい)
問題があれば、企画段階とか、原稿段階とか、
遅くともダミー(下描き)の段階でストップするはず。
ダミーが通ったのに、本絵で合意が得られないというのは、
ちょっと想定外だったわけです。
本が出て2年で版元が倒産…とか、
倉庫の火災で在庫が焼失してそのまま絶版…とか、
過去にはいろんな出来事がありましたが、
出版前にこちらから「やめた」と言うのは初めてのこと。
で、しばらくは「もういいや~」と放り投げていたのですが、
始めた仕事が終わらないというのは、なんとも中途半端で。
着物の袖つけをするのに、片袖だけつけて放置していると、
もう片袖が化けて出る、なんて言ったもんですが(いつの時代だ?笑)
なんかそんな感じ。
さくさく削除しちゃった文章データはいいとしても、
Mががんばって描いた15枚をこえる原画がもったいない。
これが作品庫に置いてあるかぎり、トラブルの記憶も一生消えない。
そう思って、よっこらしょっ、と再起動をかけまして、
主張する件は主張する。妥協できる件は妥協する。
慎重に協議と確認を繰り返しながら、構成を組み立てなおし、
ネームは6稿まで書き直し、絵も5~6枚をあらたに描く、ということで、
ふたたび出版に向けて動きだしました。
たぶん、冬には、お目にかけられるのではないかと思います。
もうすこしだから、がんばろう。
さて、タイトルの「まつりのみこし」。
神社によって、おみこしにもいろんなタイプがありますが、
これは、威勢のいい宮みこしを思い浮かべてください。
わっしょいわっしょいと町内を練り歩いたおみこしが、
最終的に元の神社に戻ってくる、いわゆる「宮入り」ですね。
これは、ふつう、すんなりとは入らないことになっている。
途中で止められたり、押し戻されたり、もめたり、荒れたりするわけです。
参道を行きつ戻りつ、行きつ戻りつしながら、じりじり前進していって、
担ぎ手も見物も、一番盛り上がった頂点で、ゴールイン。
つまり、なんだかんだあっても、結局はおさまるべきところにおさまる…
ということを、昔の人は「まつりのみこし」と言ったのだとか。
だから、停滞したり、もめたり、苦労すればするほど、
良い本ができるんだ。
…とは、ぜんぜん思ってませんから。
仕事はすんなり気持ちよくできるほうが好き。わたくしは。