レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

戦争冒険小説にのめった時期

2006-09-15 14:40:50 | 
 『エロイカより愛をこめて』にハマったヤツが影響を受ける方向はたくさんある。ドイツへの関心、ドイツ語学習への意欲。国民性ステレオタイプ。各国の地理風俗。軍事、メカ、国際情勢。スパイもの戦記ものナチもの。
 私の場合、『ベルばら』にのめったことでフランス革命の本を読むことはしたが、フランスびいきという方向は向かなかった。『エロイカ』ではドイツに向いたので、やはり相性なのだろう。メカや軍事には手が出ない。
 ドイツ軍・ナチものも興味の対象となり、そのテの本で最愛作品はなんといっても『鷲は舞い降りた』。ジャック・ヒギンズはワンパターンにして激しく玉石混交なのだが、その「玉」中の「玉」がこれ。結局私は、邦訳の出たヒギンズ作品は全部読んでいるのだった。忘れてるけど。これ、かっこいい絵で日本アニメにしてくれないかな。映画化はされたことがある。それがテレビ放映されたときの吹き替えの声が、俳優の顔よりもかっこよくて、なんという人だか知りたいと思っている。『陰謀 ナチスに挑んだ男』というドラマの2回目で、ちょっと似たような役で出ていた。
(2014.4.5に付記。広川太一郎だとあとで知った、そんな有名どころだったのか)
 『わしまい』は、いまでは「完全版」が出ているが、それより早い時期に私は洋書コーナーで偶然その完全版を発見して手にいれていた。ほかに、ドイツ語版も、留学した友人に買ってきてもらった。ドイツ軍サイドの場面ならばドイツ語のセリフで味わってみたい、そのほうが断然かっこいい!
 チャーチル誘拐作戦のため、落下傘部隊の勇士シュタイナ中佐が選ばれて、その命令を伝えに軍情報部(アプヴェール)のラードル大佐とIRAのデヴリンがやってくる場面。部下達が、悪い知らせかと誤解して彼らに挑戦的な態度で出るときのセリフ中のthe colonelが、邦訳では「俺たちの中佐殿」になっている。ただの定冠詞から愛を
示す所有冠詞だよ、ナイスだ訳者菊池光!
 独訳では(あとで完全版が出たかもしれんが)当時の普及版よりもさらに少しカットがあり、少々の変更も。シュタイナの副官の名前は原典ではリタァ・ノイマンRitter Neumannだけど、独訳では名前がヴァルター
Walther。事情通の人によると、Ritterは姓にはあるけどファーストネームにはなくてヘンだからだろうということだった。(『ヴァルハラ最終指令』の主人公は「カール・リッター」。そういう名前の映画監督が昔のドイツにいた。)
 私は頭の中で、シュタイナとノイマンに、『シャンペン・シャワー』のマルロとアンドレのイメージを置いて喜んでいたりする。


 ドイツ軍ミーハーな気持ちを満たすには、ヒギンズ作品ではほかに『ヴァルハラ最終指令』(「ハリー・パタースン」名義)、『ルチアノの幸運』が良い。
 実を言えば、『ヴァルハラ最終指令』の収容所の所長とその副官の状況、--SSが、よからぬ目的で高名な捕虜たちの引渡しを要求しているが、部下は、尊敬する上官がそんな命令に従ってほしくないと思っているーーと、『ダイヤモンド・ガイ』で、マルロが八百長もちかけられていて心配なアンドレという状態が重なるので、当時私の頭の中では、両者のダブルパロが浮かんでいたものだ。
 もう一つ言えば:『ルチアノの幸運』のケーニヒ中佐とその部下の後日談が、『ミンナ・フォン・バルンヘルム』のテルハイム&ユストだ!と思っている。後者はドイツ文学史上重要な18世紀の劇作家レッシングの戯曲なので、まるでムチャな組み合わせ。両方を知ってる人いるかな・・・

 イスラエルの作家、マイケル・バー=ゾウハーもけっこう読んだ。
『エニグマ奇襲指令』は大戦下のパリが舞台。ある仕事のために英国情報部がフランス人の泥棒ベルヴォワール、通称「男爵」を雇って、ドイツ軍情報部の切れ者フォン・ベック大佐に挑ませる。英国情報部と民間泥棒とドイツの情報将校、「男爵」と大佐・・・なにかを連想するのは必然というものだ、はっはっは。
 なんだか久々に思い出した。もう古本屋か図書館頼りなんだろうな。『わしまい』ほどのメジャーさでないし。

 『わしまい』の題のことでやはりもう3つ書きたい。
1 大昔、古本屋でこの原書The Eagle has landed が、『ワシは土地を持つ』という「地上げ屋の自伝のような」題つきで売られていたことがあるーーとはファンの間で有名な話。
2 続編のThe Eagle has flown の邦訳が決まったとき、「本の雑誌」に載ってた仮題は『鷲は舞い上がった』だった。結局『鷲は飛び立った』だけど。
3 数年前に出た副題「アフガン従軍記」である本は、上巻が『儂は舞い降りた』。下巻が『儂は舞い上がった』。この名(わしまい)はすでに一般教養なのだな。
コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ボッパルトamRhein | トップ | 秋、月、タマゴ »

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ハマるものは皆同じ~ (F)
2006-09-16 06:26:01
題名が挙がっていた本はみんな読んでます~。周囲の友人達もハメました。

後日、友人となったミリタリー系同人メンバーさんたちもハマってましたね。

ただ、よからぬ妄想に陥ってくれる方などもいらっしゃって困りましたが。

『鷲は舞い上がった』は訳がでるまで我慢しきれず、洋書屋に買いに走りました。

二番煎じではありましたが、愛するシェレンベルクくんが活躍していたので、登場するシーンばかりなめるように読み返した思い出が...。でも、彼は実際は独身ではないし、階級も当時はまだ少将ではなかったんですけど~。ヒギンズ氏なので許してしまうのでした。
題名間違えるおバカな私~。 (F)
2006-09-16 06:28:30
やっぱやってしまいました~。

仮題が刻まれてしまっているもので...

飛び立ったんでしたね。
舞い上がった人々 (レーヌス)
2006-09-16 18:45:27
 やはりあの仮題もインパクトありますからね~。

 そういえば数年前のコミケでミーハー風味のナチ本の片隅で『わしまい』等プッシュがありました、『ヴァルハラ~』の本を出す予告をしていたけど結局どうなったのやら。

 一般に続編というものは完成度の高いものはめったにないものなので、『舞い上がった』ならぬ『飛び立った』(略するならば『わしとび』?)も一種のお祭り企画としてカタいこと言わずに読みました。

 リーアム・デヴリンは「あの不良じいさんまだ生きているの?」と言われながらしぶとく出てきますが、彼より若いシュタイナは存命なんでしょうか。
わしとび~ (F)
2006-09-17 13:11:29
『わしとび』の最後で、1975年時点ではリーアム・デブリン氏がシュタイナくんの存命をにおわせてましたね~。

続編を書くようなことを言いながら、ヒギンズ氏は書かずじまい~。

ま、シェレンベルクくんはすでに墓の下なので絶対に出てこないし。

『狐たちの夜』も好きな一作です。



マニアの間では (レーヌス)
2006-09-17 17:04:19
デヴリン年表なんて作られているでしょうね、彼が死んだらお葬式くらい出すかもしれません。シュタイナのその後については、読者の想像力にまかせてくれたほうが無難な気もします。 軍隊に入るまえにパリで美術の勉強してたという過去があるので、死んだ仲間たちの思い出を絵に描いている、なんて光景が浮かんできます。

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事