レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ハイジとアデライーデ

2014-01-07 16:11:55 | 
郁文堂『ハイジの原点ーーアルプスの少女アデライーデーー』 ペーター・ビュトナー
 去年の学会の時に買った本。

 数年前、『ハイジ』がドイツのある小説を下敷きにしたようだとの報告があり、「盗作?」との話題にもなった。
 その発見をした人物の論文と、件の小説の訳とが一緒になった本である。

ヘルマン・アダム・フォン・カンプ 1796(ルールオルト)ー1867(ミュールハイム) 教職の傍ら執筆し、1828年に『アデライーデ』発表。 
 1879年に『ハイジ』発表。

 話の始めにアデライーデは10才、アルプスの山で羊飼いの祖父と共に暮らしており、両親は農業をしている。
 オランダの紳士エーデルラント氏が旅で訪れて、美しい自然と素朴な心象に感銘を受ける。
 その5年後、祖父のもとに、生き別れで外国へ行ったきりの弟がアメリカで財産を成して死に、その相続権があるのでアメリカへ行く話がもたらされる。祖父とアデライーデはスイスを離れたくはないが、両親(ベルクマン夫妻)はその話を喜び、渡米する気になる。祖父は寂しさのうちに没し、一家(アデライーデと両親と弟妹)はアメリカへ渡る。
 ペンシルヴァニア州の領地へ落ち着き、スイスへの望郷の念を特に強く抱きながらも、アデライーデもそれなりになじんでいく。
 それから5年、親切なオランダ移民の商人の家で、懐かしい風景の絵を目にする。それは商人の伯父が旅行先で入手したものだという。そしてその人物はエーデルラント氏であった。エーデルラント氏はアデライーデを伴ってスイスへ行き、そこで土地を買い、彼女を養女とした。のちに若い羊飼いと結婚して、エーデルラント氏は数年後に安らかな最期を迎えた。

 ざっとこういう話である。
 確かに、美しい山の世界と望郷の念、そこへ帰っていくハッピーエンドという大まかな筋(そして細部で似た描写はある)は共通であり、『ハイジ』はこれにヒントを得たのであろうとは思うが、盗作と言われるほどだとは思わない。

 なお、アーデルハイトAdelheid をフランス語化してアデレード、それを再びドイツ語化するとアデライーデであり、これは当時たいへん流行した名前で、多くの作家がヒロインにこの名前をつけているという。
 ところでドイツ語ではE以外の母音で終わる語は少なく、特にIは珍しい。だからHeidiなどはいかにもスイスっぽいのだ。「おおブレネリ」を思い出してほしい。お菓子のレッケルリLeckerliもその類だろう。

 有名なアニメのハイジは私は見たことがない。

 マンガ化するならば、遠藤淑子さん、ひかわきょうこさん、山口美由紀さん、山下友美さん、TONOさんあたりのイメージで浮かぶ。
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