レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

新興国

2008-07-18 05:26:52 | 歴史
 サミットのニュースに対して特に関心を持っていたわけでもないが、インドや中国を「新興国」と称することにはたいへんに抵抗を感じた。経済的な点でこのごろ無視できなくなってきたということなんだろうと思うけど、--歴史的に見てどうなんだよとツッコまずにはいられない。「世界4大文明」に「黄河文明」「インダス文明」は名を連ねているし、ヨーロッパなんて長いことイスラム文化圏にだって遅れをとっていたではないか。キリスト教もたかだか2千年の歴史しかないし。(イスラムは7世紀からだが) 古ければいいってもんでもないけど。 もう少し納得のできる名称はないものだろうか。

 感傷的なことをいえば、伝統ある大国が、新興勢力のまえに没落していくドラマには惹きつけられるタチである。
 武田の騎馬隊が織田の鉄砲隊に敗れた戦(あの鉄砲の活躍は史実ではあるまいという説が出てきていることはきいてるけど)とか。
 スペインの「無敵艦隊」(という名も、あとでイングランド側がつけたというが)が、イングランドに敗北を喫したとか。
 大エジプト王国が新興国ローマに・・・って、これに関しては肩入れがローマ側に激しいけど、エジプト側に光をあてたってもちろん面白い物語になりうると理解できる。

 『燃えよ剣』で、榎本武揚が「私は新選組ときくと新興国プロシアの軍人を思い出す」と言っている。フィクションのセリフであるけど、わからんでもない。分裂の激しかったドイツ、その中でも軍事的経済的に力を伸ばし、18世紀始めに「ブランデンブルク選帝侯国」から「プロイセン王国」になり、ついにはドイツ帝国の中心になったプロイセン。ほかの地域からけっこう反感持たれていた様子は、文学・歴史に接していてたびたび感じるけど、日本人にとってのドイツイメージの中で、勤勉、秩序、忠誠、といった硬い部分はおおむねこのプロイセンからきているといっていいだろう。ベルリンはまた、様々な要素の混在する国際都市としての面を持っているけど。「新興国」の首都だったと思うと感慨が湧く。

 『ヘタリア』で、初対面の「イタリア」と「日本」が「あっかわいい、俺よりちっちゃい!」、「失礼な、私はあなたよりずっとじいさんですよ」という会話をかわす。「イタリア」より「日本」が「ちっちゃい」というのは、人間の体格を念頭においてのセリフだろうか、面積は日本のほうが大きいはず。「ずっとじいさん」はなんだろう。まさか「紀元は2600年」? 手元の歴史年表を見ると、「BC272、ローマ、イタリア半島を統一」と書いてある。そのころ日本は弥生時代だが。BC753にロムルスがローマ建設というのもある。だったらローマのほうがじいさんだ。イタリアの統一・王国成立は1861年、「維新」より少し早い。(ドイツの統一はもっと遅い!)
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2 コメント

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新興工業経済地域 (pfaelzerwein)
2008-07-18 06:33:04
なるほど翻訳文化問題でもありますね。新興という言葉が中国の歴史から来ているような雰囲気はします。

例えば英語のnewly industrialized country(NIC)ならば問題がないのでしょうが、これが新興工業経済地域という訳が適当かどうかは判らないです。

独語のSchwellenländerも何か腫れ物みたいで可笑しな言葉です。
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長いですね (レーヌス)
2008-07-18 14:19:15
 新興工業経済地域、正確ですけどニュースで連呼するのは苦しそうですね、ワケわからん略語にされそう。Schwellenlandは「核兵器を製造する可能性を持つ国」なんて書いてあって、するとイラクや北朝鮮なんぞも入るのか・・・。
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