レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

名前+夫人

2011-07-10 05:16:05 |   ことばや名前
 「ミシェル夫人」、「ヒラリー夫人」(いまではこの人のほうが「クリントン」だけど)のように、名前(日本人なら「下の名前」、多くの欧米人ならファーストネーム)に「夫人」とつけることが耳障りだ。でもこういう言い方が正しいのか間違ってるのかはわからない。
 歴史的には、ある程度身分のある人の妻を指すものだったり、中国では君主の妻の位の一つだったり、私の知識もあやふやであるのであまり断言はしないでおこう。
 思い出すのは、かつて初めて『ベルばら』を読んだ小学校時代、典拠であるツヴァイクの本の子供用『悲しみの王妃』を読んだとき、アントワネットが初めてポリニャック伯夫人を知ったときにノワイユ夫人に名前を尋ねて、「ジュール・ド・ポリニャック伯爵夫人でございます」という答があった。それで私は、え、ジュールは夫の名前なのに?とヘンに思った。しかし、○○夫人とは○○の妻を指すのならば、その○○が夫の名であるのは正しい。いま私の頭に思い浮かぶのは、19世紀英国のディケンズや、もっとあとのカナダのL.M.モンゴメリの作品ではもっぱら、夫の氏名+夫人で出てくる。 しかし、当時の私のようにヘンに感じるのは珍しくないのだろう、『ベルばら』での該当場面では、「ジュール・ド・ポリニャック伯爵 の 夫人」となっている。
 先日読んだモームの『昔も今も』では、16世紀初頭のイタリアの話で「カテリーナ夫人」という書き方がある。原文でどう言っているのかはわからない。
 19世紀初頭のジェーン・オースティンの本の解説では、家に未婚の娘が数人いる場合、長女を「ミス+姓」、次女以下は「ミス+名前」が原則だと書いてあった。「サー」は、「サー+名前」または「サー+名前・姓」であり決して「サー+姓」ではない、しかしその妻は「レディー+姓」であり「レディー+名前」ではない、とか。いろいろややこしい決まりがあるようだ。
 こういう語と、日本語での夫人といっしょくたにすることも問題があるけど。
 たとえ、名前+夫人が誤りでないにしても、私がそれを好かないということには変わりない。マスコミで○○夫人と言うのは、「○○さん」ではなれなれしいと感じるという単純な理由かもしれない。

 ああそれにしても、某イチハシに殺害された英国人女性を「リンゼイさん」と報道において呼ぶことは不快だ。気楽な番組で外国人が登場するときに名前呼びする傾向はあり、そういうのはあるいは、本人が「○○と呼んで下さい」なんて言うこともありうるけど、殺人の被害者でそれはない。ホーカーさんと言えよ馴れ馴れしい!と私はいつも思う。「ルーシー・ブラックマン」さんのときもそうだったな。
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