弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

コロナ研究~日本低調

2022-11-07 21:49:44 | 歴史・社会
私は、この2年間の日本でのコロナの対応を見ていて、整理された情報が全く出てこないことを疑問に思っていました。データが出てくるとそれは外国のデータです。
コロナの患者のデータについては、つい最近まで「全数届出」ということで、データが国に集約されていることになっています。このデータを用いての研究解析がまずは求められます。それがなぜうまくいかないのか。3つの要因が考えられます。
(1)国がデータ解析を行う力量を持っていない。
(2)国が民間の研究機関にデータを公開していない。
(3)「全数届出」と言いながら、実は解析に必要なデータが集約されていない。

以前、「モデルナジャパン社長・鈴木蘭美さん 2022-04-25」で鈴木蘭美さんの見解を紹介しました。
『日本の新型コロナ対策の問題点として、「リアルワールドエビデンス」(実世界においての証し)が欠けていることだとのことです。英国では毎週、政府がコロナ感染の報告書を出しており、どのようなワクチンを接種した人が、その後どうなったかなどが一目でわかります。
それに対して日本では、接種履歴、医療情報、介護情報という3つの情報がつながっていないので、英国のような調査を定期的に行うのは事実上不可能なのです。
実際に、上記(1)と(3)が起こっているのですね。

さらに、11月6日の朝日新聞に以下の記事が掲載されました。
コロナ研究、日本低調 論文数、G7最下位 資金力に差、政策判断に影
2022年11月6日 朝日新聞
『日本の新型コロナウイルスの研究が低調だ。日本からの関連の研究論文は数でも質でも、G7(主要7カ国)で3年連続で最下位の見通しだ。研究力の低下は、医薬品の開発や科学的知見にもとづいた政策判断を難しくする。政府の有識者会議(座長・永井良三自治医科大学長)が6月にまとめた報告書でも、重要な課題として指摘している。』
『研究者の数や環境など差は多岐にわたるが、特に資金力が顕著だ。感染症研究に米国立保健研究所(NIH)が年間約6千億円をつけるのに対し、日本の医療研究の司令塔役となる日本医療研究開発機構(AMED)は年間約90億円と1/67にとどまる。』

感染症研究、乏しい連携 患者データ利用に壁
2022年11月6日 朝日新聞
『新型コロナウイルスは、日本の感染症研究の課題も浮き彫りにした。コロナが収束したとしても、新たな感染症による次のパンデミックは、いつ起きてもおかしくない。対策は急務だ。(後藤一也、野口憲太、市野塊)』
新薬開発には欠かせない患者のデータに研究者がアクセスすることも、日本では容易ではない。国の感染者情報把握システム「ハーシス」については、個人情報の壁があり、研究に使うことが認められていない。大曲さんは「本当に迅速性を求めるなら、民間やアカデミアにハーシスのデータを匿名化して解放すべきだ」と訴える。

上記冒頭の(2)が実際に起こっていることが判明しました。

この傾向は、日本のお役所の宿痾ですね。
2009年にこのブログで、「相対的貧困率」に関して、「日本での相対的貧困率推移 2009-11-27」という記事を掲載しました。
『「現在の日本は、相対的貧困率がなぜ徐々に増大してきたのか。OECD諸国の中でなぜ日本は低位のレベルにあるのか。」といった謎を解明するためには、データを解析する必要があります。
先日、連合総合生活開発研究所「公正で健全な経済社会への道」の124ページ図表Ⅱ-2-16に示される年齢階層別の相対貧困率推移について、・・・連合総研に直接問い合わせてみました。
そして、上記について連合総研から回答を頂いたおり、併せて以下のコメントをいただきました。
等価所得の計算は、個票データ(世帯単位の所得額を世帯員に配分しなおすため)が必要であり、日本の場合には所得データは国民生活基礎調査が利用されておりますが、個票データの利用には許可が必要でその条件は厳しいようです。
即ち、国民生活基礎調査のデータを持っている厚労省がなかなかデータ使用許可を出さないので、一般のシンクタンクが有益な解析を行うことが困難です。従って、厚労省自身が独自で有益なデータ解析を行って公表しない限り、われわれは実態を正確に知ることができません。厚労省には態度を変えてほしいものです。

「相対的貧困率」を解析する上で必要なデータ(国民生活基礎調査のデータ)を持っているのも厚労省(旧労働省)、そしてコロナの研究解析を行う上で必要なデータ(ハーシス)を持っているのも厚労省(旧厚生省)です。データを独り占めして研究者に利用させないのは、厚労省特有の問題なのか、それとも日本のお役所はどこでも同じような態度なのか、いずれにせよ大問題です。
コメント
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